27.怖い夢って、なんだろう?
気がつくと私は、あたり一面青色の世界にいた。上を見ると、光がゆらゆら揺れている。どうやらここは水の中のようだ。
見渡す限り、ずっと青色だから、川ではないだろう。色も澄んでいるし、海か湖だろうか。
(綺麗……)
そのあまりに幻想的な光景に、思わずぼーっとしてしまう。
――――どれくらいそうしていただろうか。
気がついたら周りが赤く染まっていた。
夕方に……なったのだろうか。
グルリと見回して、はっとする。
(違う。これ……夕日の色じゃない)
さっきと違い、赤く染まった水は濁っており、ツン…と鉄臭い匂いが漂い始める。
(これって……!!)
水を染めたものが何なのか気づいた途端、水面が遠ざかる。下を見ると、周りの赤に紛れるようにして、何本もの手が見えた。そのうちの何本かが私を掴んで、下に引きずり込もうとしている。逃げようとしてみるが、ガッチリと掴まれて逃げられない。
その時、ふっと影がさし、上を見上げると――――
……♡…………♧…………♢…………♤……
「……十分怖いと思うんだけど」
〔そう?〕
これは怖い夢になるのか。
……怖いかな?
「リーシェにとっての怖い夢って何なのかしら……」
何故だか遠い目をしてブツブツと言っているミモザ。大丈夫?
「ええと、占いの途中だったわね。
まず、水の中にいるところから。とても澄んだ青い水だったのよね?」
〔うん、とっても広い場所だった〕
「その水は平和―――つまり平穏を表しているのだと思うわ。広い場所にいたことも、同じように平穏が続く事を表しているのだと思う」
〔じゃあ、大丈夫なんだね〕
「ええ、最初のうちは問題ないと思うわ」
〔“最初のうち”?じゃあ途中から違うの?〕
「それが……よく、分からないのよ。血が混じった赤い水は平穏が崩れることを表しているのは分かるけど、その後が……。底に見えた腕が一体何を表すのか、さっきから視ようとしているんだけど、分かろうとすればする程、よく分からなくなって……。何か頭に靄がかかる感じになるの」
“靄”……
「まあ、しばらくは何も起こらないから大丈夫。ただ、いつその平穏が崩れるのか分からないから注意して」
〔分かった。気をつけるね〕
「私の言葉忘れないで。
あ、そうだ。ちょっと待って、これあげるわ」
ミモザはそう言って、机の下に置いてあったらしい箱を私に差し出してきた。宝石箱のような、オルゴールのような箱。上の蓋には絵が書かれていた。海の上で夜空に向かって絡み合う黒龍と白龍の絵だ。正面には引き出しが4つ付いていて、1段目だけ2つの引き出しがついている3段のものだ。それぞれ取っ手の形が違っていて、1段目は星型、2段目が三日月、3段目が雫型だ。取っ手もそのまわりの装飾も銀でできていて、箱の色の藍色とマッチしている。角の銀の装飾もオシャレで、とても美しいどこか幻想的な箱だ。
〔ミモザ、これは?〕
「貴女が下界に行くって言ったときの為に用意しておいたの。開けてみて」
ミモザに促され、上の蓋を開けてみる。
〔……わぁ!!〕
そこには、直径2リア(1リア=5cm)くらいの水晶玉が入っていた。水晶玉が置かれているクッションは青紫色で、銀糸の房が付いていた。どうやらクッションごと出し入れ可能らしい。
蓋の部分は同じく青紫の布でカバーされていて、斜めに白い杖が入っていた。
杖は、魔法を使うのに必要な2つの道具のうちの1つである、魔法の媒介となるものだ。この魔法の媒介は、魔法を使うにあたって有るのと無いのとでは、全くといっていい程威力が違う。人によっては、有るときは無いときの4倍近く違う人もいるそう。
ちなみに、もう一つは魔導書で、これは別になくてもいい。ただあったほうが魔法を覚えやすいし、習得した魔法を整理することもできるし、魔法の習得も簡単になる。
で、入っていた杖はだいたい5リアくらいの長さで、金の装飾がされている。
〔ミモザ、この杖高かったんじゃ……〕
「ん?それほどでもないわよ。それにその杖、私が作ったから別にどうってこと無いわ」
あ、そうか。ミモザは占神だった。占いにも杖を作ったりするものもあるから、自分で作っているって前に言ってた気がする。それでも技術高すぎる……。




