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がんばれアルヴァスさん  作者: ぽて


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うちでこの子(邪神)飼いたい!


「最初に比べれば薄くなってきたかのぅ……?」


 フェール老が額にわずかに汗を滲ませて呟いた。かれこれ十数分同じ作業を続けていたから、老体にはこたえたらしい。


「……まあ、こんな急ごしらえの仕掛けだけで対応したにしては上出来じゃないか?」


 材料が無くなってきたので手持ち無沙汰になり始めたアルヴァスも半信半疑ながらも同意する。視界の端では、未だに勇者親娘が邪神と激しい戦いを繰り広げている。


「オレが言うのも何だが……ほんと良くやるよなー、あの二人。体力オバケかよ」


 つーか勇者であるプラティはともかく、親父に光属性の加護とかあったっけ? と、首をひねるアルヴァス。……まあ、多少動きが鈍くなっている様ではあるが、一人で邪神を相手していた時ほどの疲労は感じさせない。ならば何かしらの加護を受けているのかもしれない。


「あちらの方もだいぶ良い具合に力を削げているようだな」


 最初に比べると防戦している時間の方が多くなってきている邪神を見つつミーティア。纏う闇もかなり小さくなっている。


「この調子で完全消滅できれば、この辺りも平和になるだろうよ」

「ん? 勇者さまは手下にすると意気込んでいたが?」

「……あのな、一度はヒト族に仇なした高位存在だぞ? でもって矜持だけは高い連中だぞ? そんなのが格下のヒト族の手下になるなんてありえねーよ」

「まあ、邪神だものな……」


 アルヴァスの言葉に納得するミーティア。だが、彼らの勇者はその斜め上を突っ走っていた。


「ねぇねぇ邪神さん強いね! 私の仲間にならないっ?」

「断る! なぜ我がヒトごときの軍門に降らねばならない!」

「えー、イマドキ種族にこだわるとか頭悪ーい」

「頭悪いのは貴様なのである!」


 斬り結びあいながら勧誘をはじめるプラティ。そして当然即断で断る邪神。ちなみにカロルは全く口を挟まず、連携を続けながらも事の成り行きを見守っている。


「そんな事ないもん!」


 抗議の意味も込めてか少々強い一撃が放たれる。


「――グッ、自覚の無い者はこれだから! 腕力ばかり強くてアレなのである!!」


 斬撃を何とか受け流した邪神のぼやきに、ピクリとアルヴァスの眉が吊り上がった。


「……なぁ、ミーティア。ウチのプラティが脳筋とか言ってる邪神は即滅させるべきだと思わないか?」

「お、おい、アルヴァス。お前、本家アルヴァスも真っ青な形相になっているぞ!?」

「あやつもそこまでは言っておらんような……。妹想い、娘想いというには重すぎるのぅ」


 勇者さまも大変じゃわいと苦笑いを浮かべるフェール老。その視線の先には表情は変わらないものの、一撃の鋭さが明らかに増したカロルの姿が。


「やっぱオレもあれに参戦してくるわ。せっかく剣も扱えるようになった事だし!」


 ブンブンと魔術で出した剣を振り回すアルヴァス。時折バチバチと電流が走っているため、剣には雷属性のエンチャントがされているのだろう。これは確実に殺る気である。そうして彼が走っていった後。


「世界事情を考えれば滅するのが一番だと思うのですが、なにか邪神が可哀想になってきました……」

「……邪神になってしまった時点で結末は決まっておったんじゃろうよ」


 またもや置いてきぼりをくらったミーティアとフェール老は、そんな会話をしていたのだった。



 そんなこんなで三人に増えた敵にタコ殴りされた邪神はそれに敵うはずも無く、程なくして無効化された。のだが——


「ねえねえ、邪神さん。仲間になろーよー?」

「ま、まだ我は負けていないのであるっ!」


 その大きさを子どもサイズまで縮ませていた邪神だが、彼の存在は相当な負けず嫌いであった。威厳などはもはや欠片も感じられないが。そして、なんとも諦めの悪い勇者の勧誘。


「……なあプラティ」

「なーに? おにいちゃん」

「ウチじゃあ邪神は飼えないぞ」


 妹の前だからか、一際優しい表情で諭すアルヴァス。だが内容はひどいものだ。


「えー!? だってこんなに強いのに勿体ないよ!」

「封印から解き放たれた邪神さんはな、虚無の海に返してやるのがヒト族にできる最大の優しさなんだ」

「うー、でもぉ……」


 兄妹の会話の陰では「我は愛玩動物ではなーい!」と邪神が抗議の声をあげているが、当然無視されている。


「じゃあトドメを刺すぞー」

「ごめんね、邪神さん。わたしの説得力が足りないばかりに……っ!」


 そうしてアルヴァスが剣を振り上げた正にその瞬間、邪神はとある賭けに出た。


「そう簡単にやられてたまるか——なのであるっ! 貴様の身体を頂く!!」

「——何ィッ!?」


 邪神の視線の先にはアルヴァス。


「呪うのならば闇属性に親和性の高い自分の体質を呪うのであるッ!」


 言うが早いか霧状になった邪神が彼の身体に殺到した。崩れ落ちるアルヴァス。


「おにいちゃん!?」

「アルヴァス!!」


 心配そうに駆け寄ろうとするプラティやミーティアを、精一杯の矜持でもって制してその瞬間に備える彼だったのだが——


「——んん? あれっ? 何ともない?」


 邪神に乗っ取られたはずの体は相も変らず彼の思い通りに動いた。そして不思議なことに邪神らしき反応や感覚もまったく感じないときた。


「フハハハハッ、この我の役に立ったことを泣いて喜ぶが——アレッ?」


 どういう事だと一同が困惑する中。コロンとアルヴァスからまろび出てきたのは、黒くて人の頭程のサイズのフクロウだった。首を傾げるフクロウの姿に一瞬、この場にいた皆の目が丸くなる。


「きゃーっ、かーわーいーいー!」

「ぎゃああっ、離すのだ! 離すのであるっ!!」


 即座に走り寄ったプラティにぎゅううっと力強く抱きしめられて悲鳴をあげる手乗りフクロウ。


「ウチの妹に抱きつかれて嬉しくないとでも……?」


 シスコンの鋭い視線も何のその。邪神改めフクロウは必死に訴える。


「こんな弱体化した状態で勇者なんていう最高位の光の加護者に強く抱きつかれたら、消滅してしまうのであるー!?」

「ちょうどいい。このまま消滅しちまえ!」


 決して私怨じゃないからな、ヒト族のためだからな! と誰を見るわけでもなく言い訳がましいアルヴァス。


「そんなっ! こんなに可愛くなった邪神さんを消滅させるなんて、おにいちゃんヒドイ!!」

「むぐぐ……くそっ、かわいいマスコットに成り果てて生き延びる作戦だと!?」


 あざとすぎる! そんな心の声が漏れ出てくる。


「いや、我、別にそういう意図とか無いし……気づいたらこうなってただけで」

「——うちの子の好意を利用するとは許すまじ……!」

「こっ、このなかで一番パッとしないヒト族が怖いのであるぅ!?」


 カロルから静かな怒りを向けられ、怯えるフクロウ。もはや神の威厳など感じられない。


「高位の邪神と聞いていたが、ずいぶんと……」

「長年の封印生活の代償かのぅ……」


 ミーティアやフェール老もやや呆れ気味に事の推移を見守っている。


「さあ、プラティ。そいつを離すんだ」

「やだやだ! この子はウチで飼うんだもんっ!!」

「……プラティ。残念ながらフクロウは家で飼うには向かない」


 しまいにはアルヴァスだけでなくカロルまでもが説得に乗り出してきた。


「邪神さんも飼われたいって思ってるよね!?」

「だから我は愛玩動物では無いとゆーにっ。というかギュっとするのやめて! 消滅しちゃう!!」


 だがフクロウの思いとは裏腹にプラティの力は強くなるばかり。このまま消滅を待つのみと思われたのだが——


「……消えないであるな?」


 ある程度までは縮んでいったフクロウだったが、両手で掬えるサイズになると縮小が止まった。各所から舌打ちが響く。どちらが悪役なのか分かったものではない。


「もしかして——オレか?」


 何かに気がついたアルヴァス。彼は虚空を見つめると、何やらうなり始めた。同時に彼を囲むように沢山の魔法陣が現れる。それらを吟味しているようでもあった。


「うっわ……マジかよ」


 やがて彼は青い顔で呟いた。


「なんかソイツと使い魔契約結ばれちゃってるんだが……」

「ほうほう。自主的に我の使い魔になるとは見上げたヒト族なのである!」

「オレが主で、オマエは使い魔だっつーの!」

「何故に!? 我、これでも高位邪神なんですけど!?」

「知るか!」


 アルヴァスの見解によれば、使い魔契約で彼と魔術的に繋がりを持った故にフクロウが消滅を回避しているのではないかとのこと。


「つまり我、お前が生きてる限り消滅の心配は無いのだな!」

「えー、おにいちゃん羨ましい! わーたーしーもぉぉ!!」

「ふざけんな、こんなもん今すぐ解呪してやるわ!」

「じゃあ私っ、私が契約するっ」


 すかさず立候補するプラティだったが……。


「「無理だろ(なのである)」」


 アルヴァスとフクロウにダメ出しされた。


「どしてぇぇーー!?」

「いやだってなぁ……?」

「光属性極致の勇者なんかと契約した日には今の我、カケラも残さず吹っ飛びそうなのである……」

「じゃあ、邪神さん消えちゃうしかないの……?」


 そんなのイヤイヤ! と、上目遣いにおねだりされたアルヴァスは、精一杯抵抗した。したのだが、プラティの瞳に溜まった涙を見て——あっけなく陥落した。


「よーし、おにいちゃんにまかせろ! 邪神さんの手綱はちゃんと握っておいてやる。だから消滅させたりしないぞう!」


 おいおいという周りの空気など物ともせず、安請け合い。


「わーい、おにいちゃん大好きー!」

「待つのであるっ、我は了承した覚えは無いのである!」

「——お前に選択肢なんざねーんだよ」


 プラティの腕から抜け出したフクロウがバッサバッサと翼をはためかせつつ抗議の声をあげるが、アルヴァスは一目見ると却下した。あまつさえ「嫌なら消滅しろや」と告げるその様は、街のゴロツキのようであった。


 そうして、勇者一行に邪神がパーティーインすることになったのだった。

今回で一応一区切りになります。楽しんでいただけましたら、ブクマや評価等お願いいたします。

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