『ハーブ物語』
ハーブの物語は古代エジプトに始まり
死の儀式と共に
その役目を培ってきたという。
香料や医療に使われたハーブが
発掘されるミイラと共にあるという
それは、ただ単に儀式や防腐剤というよりも
大切な者を亡くした親や子が
死者が黄泉の国から無事に還って来れるよう
香りの高いハーブを道しるべ代わりに
納棺したのかもしれないと思いたい
作者であった。
黄昏が湿気を大地の向こうへ押しやるころ
微かだが確かな足どりで
庭はその憂いの中に沈んでゆく。
ガーデンテーブルの上に置かれた
摘みたてのハーブが匂う…
タイム、ミント、パセリ、セージ、
ローリエ、バジル………。
春から秋にかけて
摘みたてのハーブを使った料理が食卓にのぼる
ローリエやタイムは、チキンカレーや豚肉の煮込みに
バジルは、パスタやトマトサラダにと、
料理好きなわたしにとって
このハーブの季節は格別なひとときになる。
友人を招いてのお茶会や食事会では
ハーブは食卓の演出家であり名監督で、
食事のあとのハーブティーや食後酒にも
摘みたてのミントが香りを添える。
太陽が傾き、秋風が肌をかすめ
ショールが欲しくなる夕暮れまで、
語らいは終わることなくつづき
友の帰ったテーブルに残された
ハーブブーケの緑は闇と重なり、
その香りは夜の帳の中で自我を開放する。
今日のお茶のお菓子はピーチパイ
ミントティーと共に、