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魔闘拳士の詩
魔闘拳士の詩
其の者は魔法士にして拳士なり
西方一と謳われし美姫の傍らにあり
美姫に思慕を寄せし者多く、噂になりて多くが都に詰め寄せる
困りし姫は戯れにも、魔闘拳士倒せし者の妻にと宣する
美姫を妻にと望みし者各地より押し寄せるも、
剛腕の武芸者、名高き魔法士、その全てが魔闘拳士の前に膝を屈す
王の認めし誉れ高き聖騎士はその剣を届かせるに及ばず
王宮に務めし宮廷魔法士の魔法はその拳の前に消え失せる
美姫を見初めし王子、剣を取りて魔闘拳士に挑みしも地を舐める
諦めきれぬ王子は鍛えては幾たびも幾たびも挑む
その真摯なる姿に心打たれし美姫は王子の求婚にこたえる
慶事に沸き立つ都
しかし、そこへひたひたと攻め寄せし隣国の軍勢
その前に立ち塞がりしは魔闘拳士
彼の武威の前では如何なる強兵も敵う者なし
そして王子と美姫の婚儀に、祝花に彩られし都
重なる祝いの言葉をよそに、役目終えし英雄はその地を去る
いずことも知れず
いずことも知れず
宮廷詩人サンクリート 『魔闘拳士の詩』より抜粋
序詩