タ○パ
タ○パって知ってるか?
イマ○ナリーフレンドを意図的に作り出すみたいなことなんだけどよ。
あ、これあぶねぇからやっちゃダメだよ。
わざと二重人格作り出すみたいなもんだから
相当精神に負担をかけるらしい。
絶対ダメだぞ。ダ○ョウ倶楽部のネタじゃねぇからな。
魅力的に見えてもやったらダメだ。絶対にダメ。
んで、それが俺の一族と何の関係があるかと言うとだ。
要するに六代目のクソ野郎はな、
ありとあらゆる霊的な技や、心理術を試した結果、
タ○パも作っていたらしいんだよ。
(※もちろん○ルパという呼び方ではなかったらしいです
分かりづらいのでここではタ○パで統一します)
江戸時代にwwアホかwwww
いや、もうブラウザバックしていいわww
俺もこんな話信じられねぇもん。
しょうもない先祖でごめんなさい。ほんとすいません。
で、まあ、つうてさイマジ○リーフレンドなわけよ。
脳が作り出した幻覚でしかないわけ。
自分には現実でも、外部には絶対に見えない。
それがタル○なんだけど……。
みんなは二重人格というものを
映画とか小説とかアニメでわりとよくモチーフとして
みると思うんだけどさ。
○ルパもいわゆる二重人格なわけよ。
んでな。二重人格ってのは
もともと本人がもっていた本人格と
何かの理由でできた副人格でできているわけ。
つまりタ○パは副人格だね。
でさー、副人格が本人格を乗っ取るということが
二重人格という病をもった人にはよく起こるんだけど……
ってことはな、
つまりタ○パに人格を乗っ取られたりする人もたまにいるわけよ。
のっとられると元々の本人格の知らないうちに
身体が動かされて、外に遊びに行ってたり
仕事してたり、新しい友人を勝手に作ったり
酷いのになると何らかの犯罪を犯したりするんだけどさ。
あー前置きが長くなりすぎたな。
で、うちの問題の六代目がなー。
あるとき思いついちゃったのよ。タル○を外に出す方法を。
面白く無くなるけど
その方法から解説していいか?
神霊なんちゃら丸薬みたいな
飲むと即座に幽体離脱できる怪しい薬っつうか
ドラッグが当時極一部に流行っててだな。
六代目のアホはそれ見たときに思いついちゃったらしいんだわな。
自分の人格をわざと○ルパのっとらせて
それをむりやり飲ませたらどうなるのだろうと……。
それからやつは当時立ち上げたばかりだった
新興宗教団体もほっといて、それの研究に没頭し始めたらしい。
具体的にはどれだけ恐ろしいタ○パを作り出すか
ということと、タル○をいかにして騙して
幽体離脱させるかということを「秘儀」とか言って
秘伝書に記しつつ試行錯誤していたらしい。
弟子とかを実験体にしてな……ほんとすいません。クソ野郎ですいません……。
あのさぁ……その異常なパワーをもっと
まともなことに使っててくれたら
俺達子孫がこんなに苦労しないで済んだんですけど……。
で、数年にわたる頭のおかしい苦節の末にクソ野郎は実現しちゃったんだよなぁ……。
○ルパに本人格をのっとらせた途端に
隠れていた大勢の信者たちに自分を縛り付けさせて
鼻をつまんで、口からその神霊なんちゃら丸薬をむりやり飲ませたそうな。
すると、その瞬間部屋に……。
まぁいいか。そっから先はあとで話すわ。
「うえーい」
「時代遅れな上に、頭悪そうなその挨拶やめてくれない?」
事務所という名のボロ屋で書類と格闘しながら
皮肉を吐きすてる、この口のわりぃおねぇちゃんは、瑞恵さん。
我が集落一帯の雑事とかを受け持ってる。
面倒なんかを解決するのが仕事だ。
つまり六代目の残した呪いの処理の担当者ね。
あ、俺頭わりぃから、もし色々と伝わってなかったらごめんな。
昔から国語とか現文が苦手でよ。なんで書いてんだって感じだけどなwww
書かなきゃやってられねぇわけ……。
あ、うちの集落の関係者は大体苗字が
「山花」っていうんだよ。かわいいだろ。
瑞恵さんは山花瑞恵。
クソ六代目は山花次郎左衛門っていう名前ね。
あ、仮名な。全部仮名だ。
当て字して読みも少し捻ってると思っててくれ。
「ニート君が何の用かなー」
「いやwwひでぇ。俺ここで去年から働いてるじゃないすか」
な、ほんっと口が悪いだろ?
「へぇー」
「メールで"来い"って二文字で言われたから、チャリできたんすけど
もうかえっていいすかね?ゼ○ダの続きしなくちゃいけないんで」
「それも困るなぁ。"あれ"が出たんで鉄砲玉が必要でね」
「人を鉛のかたまりみたいに言わないでくださいよぅ……」
集落的には俺は穀潰しのニートだから
何させてもいいって感じらしい。
ニートにも人権はあるんですよ!!ってか今は給料貰ってるから
少なくともフリーターだよ!!みんな何か勘違いしてるよ!!
「今日の得物はこれね」
瑞恵さんはそういうと古びた木製のバットを渡してくる。
俺はだまってそれを受け取る。
「これは誰のですか?」
「十三代目の残したものね」
一応解説しとくと、六代目の残したろくでもねぇ呪いを祓うために
七代目以降は数々の退魔グッズを作り出したらしい。
十三代目っつうと戦後すぐくらいか。
七十年以上前だわ。大体あってるよな?
「効果は?」
「団地二丁目の和江おばさんがくれたんだけど、わかんない。殴るんじゃない?」
「えぇ……」
つまり仕事が一つ増えたわけだ。まずは和江さんとこいって確認しないと。
ああ、言い忘れたが我が集落は
神社がある小高い山を中心に、
先祖代々の水田と屋敷が囲んでいて、
さらにその周りを山が囲むという閉じられた地域だったのだが
戦後すぐに近くの県庁所在地のベッドタウン化が進み、
東側の山は、切り崩されて比較的大きな団地になっている。
和江さんところみたいに山を公団に売って
団地に移り住んだ一族も多い。
我々山花族は別に排他的でも閉鎖的でもなんでもないのだ。
パワフルでしかも皆それぞれにナイスピープルである。
ニートだった俺に小言も言わずによくお小遣いもくれていた。
ただ呪われているだけなのだ……。
「で、"あれ"が出た場所は?」
「底なし沼の周囲」
「えぇ……また……」
つうか毎度、毎度めんどくさい場所によく出てくるよな。
草負け、泥だらけ、やぶ蚊の襲撃なんでもござれだ。
「青柳さんから苦情が来てる」
「うい、まぁしゃあねぇな。いっちょがんばりますか」
青柳さんたち一家は二十年位前に
都会から脱サラして移り住んだ人たちで
ここらで地元の人たちと農業をしながら、作家をしている。
二人の子供はもう独立していて、正月に時々見かける程度だ。
地元の集会でもよく夫婦で見かけるくらい地域に馴染んでいるのだが、
移り住んだ場所が、
曰くつきの底なし沼の近くで
しょっちゅう六代目の残した呪いの被害を受けているらしい。
夫婦二人とも、ポルターガイストやうめき声、黒い人影を見たくらいでは
もう何も思わなくなったらしいが
時々"実害"をもったものたちが出てくる時は
瑞恵さんに処理を頼んでくる。
とりあえず俺は愛車のチャリンコを団地まで走らせた
事務所がある場所は、中心地の小山近くなので
けっこう遠い。




