三輪ひとみ様を応援したい!
「好きな女優は、中谷美紀と三輪ひとみです」
と言うと、だいたいこう聞き返される。
「三輪ひとみって誰?」
んー、まあ仕方ない。あんましメジャーな女優さんじゃあないからねえ。
ぼくが、三輪ひとみを初めて見たのは、江戸川乱歩原作の映画「D坂の殺人事件」でだった。監督は実相時昭雄、主演は真田広之。
三輪ひとみはこの映画の中で、明智探偵の助手の小林少年の役を演じていた。
これが……、色っぽかった。
宝塚の男装のような華やかな雰囲気とは違う、どこか暗い背徳的な美が、彼女の学生服姿に備わっていた。
彼女の妖しい笑みに魅了され、ぼくは一発で彼女のファンになった。
「この女優は、将来化けるぞ」
と確信した。
そして数年。その確信は現実のものとなった。ぼくの予想外な方向で。
きっかけはあの映画だ。
「発狂する唇」。
監督、佐々木浩久。
ぼくが今まで見てきた映画の中で、一番最低な映画だ。あらすじすら語りたくない。一応ホラーだそうだが。見終わったあと、ビデオテープを叩き割りたくてしょうがなかった。(レンタルなんで我慢した)
で、この映画の主演女優が三輪ひとみさんだった。
彼女は、この最低な映画の最低な役柄を見事に演じきった。最低な濡れ場をこなし、最低なミュージカルシーンを歌いきり(曲はなぜか演歌)、最低な格闘アクションシーンを戦い抜いた。
で、映画への怒りとは別に、ぼくは三輪ひとみという女優にますます惚れこんだ。こんな最低な映画でも、しっかりとやりきった彼女に、凄まじいプロ魂を感じた。
以前紹介した「嫌われ松子の一生」とは別の意味で、
「生半可な女優じゃできねえよ、この役」
と思い、三輪ひとみという女優を尊敬した。
そしてこの作品をきっかけに、彼女は見事に化けたのだ。
「B級ホラー女優」としてっ!
「エコエコアザラク」で、入浴中に頭から汚物をかぶった。
「怪談釘狂い」で、顔面に釘を打たれた。
グラビアの仕事がきたっ!「CanCan」とかの女性誌モデルではなく、マニア向け映画雑誌「映画秘宝」だった……。
ホラー以外だと、松尾スズキ監督「恋の門」では、「変なカップル(女)」という役をやっていた。
ゲームの仕事がきたっ!シンプルシリーズの「ザ・呪いのゲーム」だった。
しかし数年前、そんな彼女も、ついにメジャー作品の出演をはたしたのであるっ!
京極夏彦原作「姑獲鳥の夏」!ベストセラー小説の実写化映画作品!
チョイ役だろうけどかまわないっ!一瞬でもいいっ!彼女のまともな演技を見せてくれっ!
心から願いながら、ぼくは「姑獲鳥の夏」を見ました。
ストーリーが展開し、やがて後半、三輪ひとみさんが登場しました。
死体役でした。
死体役でした。
死体役でした。
一瞬たりとも演技することなく、彼女は白眼を剥いて、畳の上に倒れていました。
それでも、ぼくは三輪ひとみさんが大好きです!
頑張ってください!