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息子はサギ!?

掲載日:2015/08/13

 

職場の”家に帰りたくない”が口癖の上司と、町内会の掲示板を見て何となく思い付いた話。

頭を空っぽにしてお楽しみ下さい。

 

すっかり陽が沈んだ夜8時。

中年の男性が歩いている。

歳は40〜50歳あたりか。


車通りの多い道では無い。

むしろ、一本奥まった小路である。

バス代を浮かせるために駅から歩いて来たと言う所だろう。


その姿は見るからに人生に疲れたサラリーマンである。


ふと男性は、それまでふらふらと動かしていた視線をある一点に固定させた。

その視線の先には町内会の掲示板がある。


所狭しと、いくつものポスターやお知らせが貼られていた。

男性の視線は、その中の一点で止まったままだ。




『息子はサギ!?』




それは“オレオレ詐欺”や“振り込め詐欺”に対する注意喚起のポスターだった。

黒地に『息子はサギ!?』と白抜きの文字が書かれただけの小さなポスター。

そのポスターの何が男性の琴線に触れたのか。


男性はしばらくポスターを眺めていたが、やがて家路に就いた。

その胸に大いなる野望を秘めて。




男性が帰宅すると家では妻と長女と長男が夕飯を食べていた。

その食事も、もう終わりそうだ。



「ミサエ、帰るって連絡したんだから、待っていてくれてもいいじゃないか」


「お腹が空いて待ちきれなかったのよ。 もう少し早く帰って来てくれればいいのに」


――また一人で食べるのか…



諦めて着替えを済ますと男性は食卓に着いた。

そして食事をしていたが、思い出したように息子に声を掛けた。



「おいケンタ。 お前は鷺なのか?」



テレビを見ていた息子が男性を振り向いて言った。



「何で俺がシュウなんだよ。 俺はシュウよりレイが好きなんだ」


――何だと!? あのシュウの生き様が判らないとは、まだまだ子供だな



そう思ったが口には出さない男性。

すると娘が会話に加わった。



「ケンタが白鷺なら私は白鳥ね」


「だから何で俺がシュウなんだよ! レイは俺だって言っただろう!」



思っていたのとは違う展開だが、男性が考えていた通り、家族に会話を作る事には成功したようだ。



「あらあら、なら私はアヒルってこと? 酷いわね〜」



母親がそこへ加わった。

話題は何故か世紀末から童話へと変わってしまったが、まあ問題は無い。

そして、これは男性が会話に加わるチャンスだった。



「じゃあ俺もアヒルかあ?」



上手く会話に乗った!


だが、そう思ったのは男性だけらしい。

家族三人は白けた目で男性を見ると、母親が代表して言った。




「何バカな事言ってるの? あなたは飼育員のおじさんに決まってるでしょ!」




嗚呼、世の父親たちよ。

その努力が報われんことを切に願う。








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