肆の段 血の解決
ビルの中は何事もないかのように静かであった
ナポレオンは鼻唄を歌っている始末だ
こんなに緊張感無く敵地に乗り込む人を俺は見たことがない
これが「ローマの近衛兵」諜報員かと俺は思った
「あの方、余裕そうですね」
伊達がぼやく
「ま、死なない人だ。実力は折り紙つきの化け物だ」
俺がそう答える
「へっへっへ、俺の偉能は無敵だよ」
ナポレオンが笑いながら言う
「その自信どこからくるんすか」
俺が半ばあきれて言う
「そんなもん経験からさ!」
ナポレオンが陽気に答える
俺が反論しようとしたとき突然銃声が響き、目の前にテロリストが現れた
「敵は5名だ!」
伊達が叫ぶなり鞭を放った
2人のテロリストが竜と化した鞭の餌食となった
俺は手から炎を放った
1人が断末魔の叫びを上げて倒れた
ナポレオンが懐のホルダーから拳銃を二丁出し、敵に向けて正確に二発放った
2人は一撃で倒された
「すごいっすね」
伊達は感動していた
「はっはっはー!こんくらい余裕よ余裕」
ナポレオンが得意気に言う
「とにかく先急ぎますよ」
俺が呆れながら言う
現場指揮所に一人の捜査官が現れた
「あ、あなたは…」
指揮官が声を失った
そこにいた人物こそ国内で五本の指に入る最強捜査官の一人である夏目漱石だ
「一体どうなっている」
夏目が指揮官に問う
「はっ!先ほど伊達捜査官と織田捜査官、それに「ローマの近衛兵」の捜査官の三名で突入しました」
「もう入ってしまったか…」
夏目が言う
「何か問題でも」
指揮官が問う
「色々あってな。直ちに武装警官と自衛隊による混成部隊の準備を」
夏目は指揮所全体に呼び掛けた
「はっ!」
指揮所にいた警官全員が敬礼をした
「全く…織田も伊達もとんでもないのと行きおるわ」
夏目が一人で呟き、県庁庁舎の上層部分を眺めた
ついに立て籠り現場である25階に到着した
俺は拳銃を、伊達は鞭を取りだし、構えた
「おっと、ここからは俺だけだよ」
ナポレオンが言う
「なんでだ!」
「お前らでは豊臣に敵わないからだ」
ナポレオンが言う
「まあ、任せとけって」
ナポレオンが得意気に言ってから中へと入っていった
「大丈夫なんすかね…」
伊達が不安げに俺を見る
「まあ、大丈夫だろう…」
俺が答えるが、それでもなお伊達は不安げな顔である
気持ちは分かる
なぜならナポレオンの実力は未知数な所もあるからだ
ナポレオンはズカズカと中へと入っていく
「おい!貴様何者だ!」
テロリストが叫ぶ
「いやぁ~、豊臣先生に用があるんすよ」
そういうなりナポレオンは銃を撃ち、テロリストの眉間をぶち抜いた
「向こうから銃声聞こえたぞ!急げ!」
テロリスト達が駆けてくる
ナポレオンは弾倉を取り替えて、来たテロリストからどんどん撃ち倒していく
「相変わらず役立たずだねお前ら」
「ほぉ~、お前さんが名を聞く豊臣か」
ナポレオンが笑顔で言う
「貴様は何者でしょうかね」
豊臣が言う
「まあ、名乗らなくていいっしょ。お前には死んでもらう」
ナポレオンがえ笑顔で言い切る
「お前の銃では無理だ!」
豊臣はそういうなり手に隠し持っていった銃をナポレオンに撃った
「はぁ、効かんね」
ナポレオンに銃弾が直撃したが全く効いていない
「な、なぜだ…偉能無効化にしたはずなのに」
豊臣が驚愕している
「君はなんも知らんのだねぇ。私めに偉能は効かないよ」
そういうなりナポレオンは銃を二丁とも豊臣に頭に向けた
「殺すのか…」
豊臣が言う
「ふーん…ま、そうなるかね」
ナポレオンがにもべもなく言った
「じゃ、さよなら」
ナポレオンは銃の引き金を引いた
豊臣の頭を銃弾が貫通し、死んだ
「やれやれ」
ナポレオンはそれだけ言うと来た道を戻っていった