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弐の段 血で血を洗う

俺と東郷は本部へと戻った

事の顛末を太子課長に報告した

「ご苦労だった」

味気ない一言を受け、課長室を出た

東郷は自分の部署への報告をしなければならないということなので一時間後に打ち合わせをすることにして別れた

俺は久々に自分の席に深々と腰かけた

「織田さん、気になることが」

小西がやってきた

後ろに誰かいる

「久しいな、伊達」

「ほんとですよ」

彼の名は伊達正宗

優秀な情報員だ

彼の知識を合わせれば偉能力犯罪者や組織に関するデータベースがほぼ完璧に作れると言われている

「で、気になることってなんだ」

俺は二人に尋ねた

「闇の新撰組についてです」

小西が答える

「奴等のボスが坂本さんではないかと」

伊達が続ける

「坂本が、そんなわけなかろう。第一、奴の行動は逐一監視されてるだろうし腐っても元警察関係者だぞ」

俺は呆れながら言った

「実は最近監視要員との連絡がつかないために数名の部下を向かわせたところ監視要員が殺されていたんですよ」

俺は驚きを隠せなかった

「そして確認に行った部下も何者かの襲撃を受けたとのことで坂本さんにはここ数ヵ月監視はついていません」

「このこと課長は」

「知ってます。課長が監視の中止を命じましたから」

「もし坂本が監視の存在に気づいたとしたら殺すかな。あやつなら真っ先に偉能犯罪対策課に押し掛けそうだが」

「先程、埠頭に坂本さんがいたとのことですが」

「なんか討伐し損ねただのなんだの言ってたな」

俺はまさかと思いながら答えた

「やつが取引を仕切ってたとか」

小西が恐る恐る言った

俺も同じ考えを持っていたからだ

「こちらの動きを予め予測してたかもしれませんね。でなければあんなに迅速に撤退出来ません」

疑念しか出てこない

「この件はあなたが担当ということなので一応と思いまして」

「ありがとう。考慮しつつ作戦を進めるよ」

「坂本については私が今後細かく調べていくつもりです」

「何か分かったら連絡頼む」

伊達は頷き、去っていった

「厄介な敵になりかねんな」

俺は呟いた

「一応各警察からの報告と戦力分析終わってます」

「ありがとう。次は俺と東郷とで現場検証にいく。その準備を整えといてくれ。」

「了解です」

小西は自分の席へと戻っていった

一時間後俺は東郷とミーティングルームで軽い打ち合わせをした

東郷も坂本が闇の新撰組を率いているという疑惑に衝撃を受けていた

この件は伊達からの報告を待つしかない

俺と東郷は小西と共に埠頭へと向かった

なにか手がかりが残っているかもしれない

埠頭に着くなり目を疑った

武装しているSAT隊員が3名倒れていたのだ

車を止め、三人は外に出た

小西は倒れているSAT隊員の安否を確認した

「死んでいます…」

「まさかコシュマールか闇の新撰組による二次攻撃か」

「いや、やつらがわざわざSAT隊員を襲うはずがない。次の日には対策課の精鋭部隊が本部を急襲するからな」

「では、誰が」

「入れば判るかもな」

俺は門を開けて中に入った

東郷がそれに続く

小西が倒れているSAT隊員の手元にあったMP5を拾い、ついてきた

先程俺と東郷が近藤らと対決した付近に来た

ここにも一般警察官4名とSAT隊員2名が倒れている

「偉能力者か…」

小西が言う

「だろうな。出なければ警官6人を相手できない。まあ、敵の凄腕殺し屋の部隊なら別だが」

東郷が面白そうに答える

突然銃声が聞こえた

「どこだ」

「向こうの方からしました」

小西が叫ぶ

「いくぞ」

俺が先頭をきって走り出す

小西と東郷が続く

現場に着くと警官4人と一人の男が対峙していた

「貴君らに出来るのはそれらを撃つだけか。つまらぬ」

男はそう言うと警官達に襲いかかった

三人は驚きで言葉を失った

男が腕を一降りすると警官4人が一気に斬り倒されたのだ

「な、なんですあの偉能」

「くっ…」

「小西、課に連絡しろ。出来る限りの偉能力者とSATの応援を寄越せと」

俺は小西に命ずる

小西は頷き、その場から離れていった

東郷は既に戦闘体制だ

「その方らお前らの名はなんという」

「俺は織田信長だ」

「私は東郷平八郎だ」

「ほう。二人とも偉能力者か」

「そうだ」

「では、やっと我と対等に立ち向かえる者が出てきたのだな」

男は喋り続ける

「お前の名は」

俺は冷たく問う

「わが名は大伴家持である」

「お前も偉能力者か」

「その通りである。貴君らは存じ上げないが我が偉能には敵うまい」

「闇の新撰組か、貴様」

東郷が言った

とりあえず時間を稼ぎ、応援を待つしかない

相手の偉能はまだ未知数だ

「我をあんな低俗なものと一緒にするでない。我はどのような組織にも属しておらぬ」

「では、なぜ警官達を殺した」

「こやつらは我を殺そうとした。だから反撃したまで」

「ここは立ち入り禁止だぞ」

「追っている者がいたので入ったのみ」

「誰だ追っているやつは」

俺が尋ねた

「我が追うものは虐殺犯坂本竜馬。あやつは我が友を殺した」

俺も東郷も言葉を失った

坂本はほんとに犯罪者なのか

そんな気持ちがかけめぐる

「我々も彼を追っている。協力しよう」

俺が呼び掛ける

「これは我の問題である。貴君らの助力は受けぬ」

「だが、情報は私たちの方が持っている」

「貴君らの仲間は私を襲った。我は貴君らも敵と見なしている」

そう言うと大伴は腕を振った

「伏せろ!」

俺は叫び、伏せた

東郷も続いた

だが、後ろから来ていたSAT隊員二名が斬られた

「我が「万葉の刀」から逃れると思うでないぞ貴君ら」

大伴は叫び、腕をメチャクチャに振る

あちらこちらが斬られていく

なんとか回避をしているが、回避に精一杯で攻撃など出来ない

「ぬるい!貴君らも偉能力者ならば我と肩を並べ戦え!」

大伴は叫ぶ

どうやら大伴の偉能力「万葉の刀」なるものは物を斬る力を持つようだ

「ならお望み通りに」

東郷が光線を放つ

「はん!その程度か!」

その途端大伴の目の前に大量の紅葉が舞い、大伴を光線から守った

「なるほどね、防御にも使えるわけだ」

俺は呟いた

「俺ら二人で勝てるか」

東郷が珍しく弱音を吐く

「貴君ら戦いの最中に私語など不要。生きるか死ぬかのみだ」

大伴が再び斬りつけてくる

俺は手から火炎を放ったがそれも紅葉によって弾かれる

「一体どうなってんだよ…」

俺は心が折れた

「貴君らも倒し、坂本を倒す」

大伴の放った一撃が東郷の背中を切り裂く

「うぐっ…!」

東郷がその場に倒れる

「東郷!」

俺は切り刻まれるの覚悟で東郷の元へ向かう

「貴君らもこれで終わりだ」

「終わるのはあなたの方だ」

突如、第三者の声がした

「何奴!」

大伴が叫ぶ

「それ以上私の大切な部下を傷つけないでもらえるかな、大伴殿」

そこには偉能犯罪対策課課長聖徳太子その人がいた

「名を名乗れその方」

大伴が再び叫ぶ

「名乗る必要はないね」

太子はそれだけいって銃で大伴を狙った

「そのような無粋な物で我は倒せぬ」

大伴は斬撃を放つ

しかし太子は避けようとしない

「課長、危ない!」

俺は課長に警告した

斬撃が課長に直撃した

「貴君らの援軍はもっと弱かった」

大伴はタメ息混じりにいった

「誰が弱いと」

大伴が振り替えると同時に三発の銃声が轟く

大伴が倒れた

俺が振り向くと太子が無傷で立っている

太子は俺ら二人の方へと寄ってきた

「君らが本気を出せば制圧できだろうに」

太子は笑いながら言った

「さすがです、課長」

俺は言った

「あやつは自分の偉能を過信しすぎている。ここで君らを倒しても坂本には勝てんだろう」

太子はそう答えた

「一体この短時間にどうやってここまで」

俺は太子に尋ねた

「君らと会ってから神奈川県警に行っててね、帰ろうとしたときに応援要請の連絡を受けたから来たのだよ」

「えっ!課長一人でですか」

「うん。まあ、あと10分もすれば伊達くんに率いられた対策課の偉能部隊とSAT隊が来ただろうけどね」

太子はずっと微笑んでいる

「まあ、彼らを待とうか。東郷くんを運ぶのも彼らが来なければ出来ん」

俺と太子は話ながら伊達率いる応援部隊の到着を待った

2~3分すると小西が近くの警察署の警官20名近くと共に戻ってきた

小西や警官達は既に制圧されていることと太子の存在に驚いていたが警官達は救急車の手配と大伴の拘束を始めた

「大丈夫ですか!」

小西が俺達三人に問う

「東郷以外は大丈夫だ」

「彼らは無茶をしてたからね」

太子がゆったりとした口調で小西に語る

その後伊達率いる増援部隊が到着したがもはや必要はなかった

伊達は「つまらん出動だ」と笑っていた

派遣されたSAT隊員と警官は周辺の徹底的な捜索に入った

伊達が選りすぐった偉能力捜査官7名の内2名は大伴の護送に、残りは警官達の周辺捜索に加わった

俺は東郷、小西、伊達と共に救急車に乗せられ、病院へと向かった

「ご苦労だった」

太子はそう言葉をかけた

「危ないことしますねあなた方は。課長の応援なかったら死んでますよ」

伊達が怒りながら言う

「仕方ないだろ。あの場合やつと戦わないといかんだろ」

「まあ、そうですが」

「にしても課長の偉能力は凄かったな。だてに偉能犯罪対策課を仕切ってないな」

「課長の偉能力は別格ですよ」

伊達は感傷に浸ったように言う

「あのぉ~、課長ってどんな偉能力を使うんですか?」

配属されて日の浅い小西が質問してきた

「課長は「兼地未然」と呼ばれる偉能力の使い手だよ」

伊達が答える

「どんな力なんですか」

「先を見る力」

伊達がそうとだけ答えた

「だが、あの偉能力どう考えても未来予知だけじゃないぞ。今日は大伴の攻撃を絶対喰らってたからな

俺はそう言う

「課長自身が偉能力についてそんなに話さないから詳しいことは分かんないんだよな」

太子の秘密主義は今に始まったことではない

「恐らく攻撃を受けても避けれる能力もあるだろうな」

俺はそう決めつけた

「なんにしても課長の強さはうちの中では群を抜いている」

「だろうな」

俺はお前も十分過ぎるくらい強いだろうと突っ込みかけてやめた

そう言われるのが伊達は嫌いだからだ

伊達は偉能力「独眼竜」の使い手だ

紐状の物に竜の力を与え、操るという偉能力だ

こないだも海外から来た偉能力犯罪者を一撃で殺していたはずだ

実力的には課内上位だ

俺なんかは彼の方が対策課No.2だと思っている

「だが、これで坂本がなんらかの事情または自らの意思で闇の新撰組と関わっていますね」

伊達が言う

一気に場の空気が重くなった

「伊達、それが事実だとしてやつに敵うやつはうちにいるのか」

俺は真剣に問う

坂本は最強クラスの剣士であり、偉能力も「折り紙つきの化けもの」と太子が表するほどのものだからだ

「恐らく課長ぐらいだろうな…他の捜査官では敵わないかも知れない」

いつのまにか病院についていた

東郷が手術室へ運ばれる

「すいません、私は本部に戻ります。今日の後始末をせねば」

「あー、頼んだ」

小西は去っていった

俺と伊達は病院の待合室のソファに腰かけた

「坂本さんに何があった」

「なんにしても厄介な相手だな」

二人はしばし沈黙した

そこに伊達の携帯が鳴った

「はい、伊達です」

なにやら話している

俺は今日の戦いに思いを耽っていた

こんなんでこの先闇の新撰組と対峙していけるのかと憂鬱になった

「織田さん、一大事です。すぐに本部へ」

「何があった」

「神奈川県庁が偉能力テロリストによって占拠されました。恐らく闇の新撰組です」

俺は立ち上がり、伊達と共に病院を出ていった

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