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壱の段 犯罪の臭いと隠居人

俺は日本に帰国した

「ローマの近衛兵」には報告しておいたが、反応は薄かった

欧州の秘密偉能組織はほんとに大きなことにならないと腰を上げない

一方の日本は存在が公表されているために小さな事件であっても出動しなければならない

秘密組織にしとけば……と思う瞬間である

「織田、ただいま欧州出張より戻りました!」

俺は偉能犯罪対策課の部屋に入るなり、大声で行った

「織田さん、お帰りなさい」

声をかけてくれたのは小西だ

彼は偉能力者ではないが優秀な警察官ということでここに配属されている

俺の補佐役も勤める男である

「欧州はどうでしたか」

「治安は安定してるとは言い難いな。俺もパリでマフィアに襲われたからな」

「ええ、知ってます」

「え!?」

「我々の欧州特派員が確認してますし、フランス政府からも連絡が入ってますから」

俺は一気に憂鬱になった

これは課長から大目玉を食らう

「課長は何か言ってたか」

「特には。でも、あなたには何か言うかも知れませんね」

小西がイタズラっぽく笑う

「マジかよ……」

俺は手近にあった椅子に座った

「手を出さなきゃよかったのに」

小西が言う

「しゃあないだろ。こっちの命が取られるとこだったんだぞ」

「あなたほどの警察関係の偉能力者が居るというのがフランス政府に知られてないとでも」

「それってまさか‥」

「監視をつけてたみたいですよ、フランス政府」

「くっそ…でも俺の動向を探るぐらいなら一般捜査員だろ」

「いえ、何か偉能力犯罪がらみだろうとバレていたらしく偉能力捜査員がついてたとか」

「手出さなきゃよかった」

「なんでも、ジャンヌ・ダルクさんがついてたとか」

俺は驚きで椅子から滑り落ちた

ジャンヌ・ダルク

フランス政府の誇る最強の偉能力者の一人

偉能力「幻視」を使う女性だ

この偉能力は異常な強さを誇るとして遠い日本でも有名である

また戦闘能力も高く、世界でも屈指の偉能力戦士である

俺は驚きから回復して椅子に座り直そうとしていると

「織田捜査官、課長がお呼びです」

課長補佐官がそう告げた

「お小言タイムか」

俺はため息混じりに立ち上がり補佐官についていった

「ご武運を」

小西がそう言った

俺は補佐官と共に歩き、課長室まえについた

「入ってください。課長がお待ちです」

補佐官が感情のない声で言う

俺はドアをノックした

「入れ」

「失礼いたします」

俺は課長室に入った

一番奥の執務机には課長の聖徳太子が座っている

「座りたまえ」

課長は言い、自分も俺の目の前になる席に座った

緊張の時間である

課長の経歴は不明だが4~5年前にあった関東大抗争の際に多くの偉能力犯罪者を逮捕、制圧したという

課長が重い口を開いた

「君の欧州での暴れっぷりは聞いたよ」

「弁解させていただきますとまさか私に監視の者がついているとも思っておらず我が命の危機と思いやむなく偉能を使ってあの場を切り抜けなければならなかったのです」

「まあ、私が許可したことだしな」

太子は抑揚のない声で答える

「君を監視するよう依頼したのは私だ。欧州支部から偉能力犯罪組織の動きがここ最近活発だと報告があったし、君の名は世界に知られてるから万が一の時を思ってな」

「…お気遣い感謝します」

俺はそういうしかなかった

「さて、本題に入ろう」

ん?このことで呼んだんじゃないのか

俺は疑問に思った

「君をここに呼んだのは少し頼まれてほしいことがあるからだ」

俺は興奮の心を抑えることは出来なかった

課長直々の命令は大抵の場合やりごたえがある

「君には犯罪組織「闇の新撰組」を崩壊させて欲しい」

闇の新撰組

総長沖田総司が仕切る日本でも有数の偉能力犯罪組織である

そして彼らの行動は常に過激で市民を巻き込んだ他組織との抗争を起こしていた

無論、偉能力犯罪対策課ともなんども戦火を交えている

「どのように」

「手段は問わない。好きなだけ部下を使うがいい」

俺は対策課内実質No.2であり、ほとんどの捜査官を仕切っている

「君の補佐役には東郷くんも加えよう」

「ありがとうございます」

「期限を設けるつもりはない。だが、出来るだけ早くに頼む」

太子はそう言い、執務机に戻っていった

「君には期待してるよ、織田くん」

「全力で答えさせていただきます」

俺はそう答えて、執務室から出ていった

フロアに戻ると小西が日本茶を入れていた

やはや飲み物はこれに限る

「どれくらい叱られましたか?」

小西が尋ねる

「いや、全く。代わりに勅命を受けたよ」

「えっ!何を命じられたのですか」

俺は闇の新撰組を倒すと命じられた件のことを小西に話した

「それって大仕事じゃないすか」

興奮半分不安半分で小西は答えた

「まあ、ボチボチやってくしかないだろうな」

「出来る限りのサポートは致します」

小西はやる気十分だ

「俺は東郷と会ってくるからお前は過去の闇の新撰組の犯罪についてと構成員についてのデータを集めてくれ。あと、戦力分析も頼む」

「了解しました」

小西は自分の机へと戻っていった

俺は日本茶を飲み干し、東郷がいる第二班へと向かった

「東郷はいるか」

俺は班長に聞いた

「東郷は今捜査中です」

班長は答えた

「今どこにいる」

「おそらく…横浜埠頭じゃないですかね」

俺は班長に礼を言って、駐車場へと向かった

そして愛車にのって横浜を目指した

横浜は多数の偉能力犯罪組織が縄張り争いをする抗争多発地だ

待っていればいいのだがなんだか嫌な予感がする

それが俺を横浜へと行かせている原動力だ

横浜には自衛隊、警察庁、神奈川県警の特殊部隊がいる

俺はスマホを取りだし、小西にかけた

「小西、横浜SATに出動準備を整えておくよう連絡してくれ」

「え、なんでですか」

「何か大きなことが起こる予感がする。連絡出来たら神奈川県警にも伝えてくれ」

「了解です!」

小西との連絡を終えた

自衛隊は政府からの直接の要請でないと動かない

俺は闇の新撰組がコシュマールと取引するのではという懸念を持っていた

出張中裏は取れなかったがそのような情報を掴んでいたからだ

あと3~40分で横浜につく

俺は車のスピードを上げた

すると太子課長から連絡が入った

「今「ローマの近衛兵」から入った情報だ。コシュマールが闇の新撰組と取引を横浜でするらしい」

「やはりそうでしたか。出張中にそんな情報は得ていましたが裏が取れなくて」

「敵の幹部がいるようだ」

「すでに横浜SATと神奈川県警には連絡してあります」

「こちらから政府へは連絡しておく」

太子との連絡を切った

俺の予感が的中した

東郷の偉能力なら多少はもつだろうが長期戦には厳しい

間に合ってくれ

横浜埠頭までの道を急いだ


横浜埠頭についた

あちらこちらで黒煙が上がっている

すると東郷が現れた

「こっちだ東郷!」

俺が叫ぶ

「おう、すまねぇ」

東郷が来る

東郷平八郎

偉能力「天気晴朗ナレドモ波高キ」の使い手

敵に太陽の光と水を用いた攻撃をする偉能力だ

「どうなってる?」

「欧州の偉能力者1人と部下が10人くらい。闇の新撰組は偉能力者1人と部下12人」

「多いな」

「早く増援要請を」

「もう出してある」

「流石だな」

「偉能力者は倒すぞ」

「わかった」

俺と東郷は車の影から出た

俺たちに無数の銃弾が浴びせられる

俺は手から炎を放った

「うわぁ!!!」

敵に命中したようだ

「貴様が…織田信長か…パリでは部下がお世話になった」

その途端敵が切りかかってきた

すんでのところで回避した

東郷と背中合わせになる

「ふっふっふっ…仲間の恨みは晴らしますよ」

そういうのはコシュマール幹部のマクシミリアン・ロベスピエール

偉能力「革命の闘士」の使い手

触れている武器の形状を自由に変型させることが出来る偉能力だ

「武器の革命」とでも言うべき偉能力である

「貴様を殺す」

マクシミリアンは剣を2刀構え、俺に襲いかかる

剣の形が自由に変化するためにどこから攻撃が来るかを予測できない

俺は地面から炎を出現させた

マクシミリアンはそれを回避し、俺に斬りかかる

俺はすんでのところで魔界に逃げ込んだ

これも俺の偉能力である

そして離れたところから出て不意打ちを仕掛けたが敵に気づかれ失敗した

「そんな程度か」

「まだまださ」

一方の東郷は闇の新撰組副長の近藤勇と対峙している

近藤は偉能力「今宵の虎徹」の使い手

いかなるものであっても自分が持っているもので斬ることが出来る偉能力だ

例えば鉄を紙で斬る

こんなことが可能となる偉能力だ

東郷は手から太陽光を集めた光線を放つ

しかし、近藤の持つ刀によって斬られる

そして、近藤がこちらへ襲いかかってくる

東郷は避ける

突然銃声が響く

敵の戦闘員数名が倒れる

警察庁と神奈川県警のSAT、自衛隊横浜地区特殊警備隊が応援に駆けつけたのだ

「ちっ、者共引き上げだ」

近藤が叫ぶ

「待て!」

東郷が近藤に光線を放つ

しかし、近藤は煙玉を地面に叩きつけ消えた

「くっ、逃がしたか」

東郷は逃げようとするコシュマールの戦闘員を一人光線で射抜いた

俺とマクシミリアンの戦いは互いが一歩も譲ろうとしない戦いだ

「これで終わりだ」

マクシミリアンが剣を二本とも蛇行させながら伸ばしてくる

俺はそれを読んでいた

「それはどうかな」

俺の手から放たれた炎の槍が敵の心臓を射抜く

敵は武器の革命中だったために俺の攻撃を防げなかった

「ぬあっ!わ、わたしが負けるだと」

マクシミリアンはその場に倒れた

「よし、あとは残党を逮捕するだけだな」

俺は気合いを入れ直した

三十分後にはコシュマールの戦闘員は全員が射殺または逮捕された

闇の新撰組は戦闘員を五人射殺したのみで残りは逃げられた

「まあ、十分だ」

俺はそうしめた

「今日はありがとうございました」

東郷が礼を言う

「いやいや、どうせ報告が来たんだから誰か偉能力者が援護に来たって」

「織田さんのお陰でなんとかいきれました」

「まだ生きてもらわなければいかんぞ。お前には俺と一緒に闇の新撰組を壊滅しなければいかんという使命が与えられたからな」

「はっ!?」

「課長命令だ」

「え、な、なんで私なんですか」

「俺は正しい人事かと」

「ですが…」

「えーい、そういうところはいいんだよ!とにかくよろしく頼んだぞ」

「はい!」

二人は握手をした

「いやぁ~、友情だね」

後ろから声がする

「お前は坂本」

俺が声を失う

坂本竜馬

旧偉能力監視班班長である

今は偉能力犯罪者を無許可で取り締まっている

過去の功績が功績だけに偉能犯罪対策課は彼の行動を黙認している

偉能力「船中八策」の使い手

だが竜馬は剣術が最強クラスの強さであるため偉能力を使っているのを見た者はいないと言われている

「坂本どうした」

「どうしたもなにも奴等の取引潰しに来たら危うく射殺されるとこだった」

「そりゃこんなところに来るからな」

呆れ顔で俺は竜馬を見た

「ま、そんなところだ。じゃ、行くわ」

竜馬はそのまま去っていった

「変わった人ですね」

「全くだ。だがあの人がかつての警察の対偉能力犯罪者の先頭に立ってたからな。実力も折り紙つきの化けものさ」

俺は煙草をつけ、吸いながら言った

「彼も闇の新撰組を狙っているのでは」

「だとしても俺らは俺らの仕事をするだけだ」

俺はそういって車に行き、エンジンを掛けた

「本部に戻るぞ」

「はいっ!!」

俺と東郷は本部へと戻った

俺は帰る間ずっと考えていた

なんであそこまで闇の新撰組は強くなったのか

そしてなんでこの時期に討伐作戦を決行するのか

俺は悩みながら東京への道を戻っていった

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