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時間遡行は彼女のたしなみ  作者: 秋休み
れいんどろっぷ
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頭の中をぐるぐると文字が廻っていた。aからz、アとン、αにω。

ぐるぐると、奇妙奇天烈に流れるそれは、まるでシェパードに追われる羊のようだ。

ならばそれを囲う俺の頭は家畜の園なのだろうか。


「ふふふ」


とりとめのない思考につい笑う。

深夜のテンションは可笑しなことになると言うが、先ほどまでの苦痛がいつの間にか消えて、少し高揚している今の気分は、どちらかというとランナーズハイ状態。

バイタルが正常ではないのだ。エンドルフィンがグラスから溢れているような錯覚。強化系の俺だった。


ふと脱力すると、思いのほか肩が重い。そういえば十時間ほど俺は椅子に座った今の状態から動いていない。睡眠は、確か、一昨日取ったと思う。


窓の外に視線を向ける。果たしてそれは何となく景色を見ようと思ったからの行動だったのだが、焦点が合わず景色がぼやけて見えた。


「やばいな、休憩しよう」


どうやら意識の外で疲労が限界に達してるらしい。一息付こうとボールペンを机に置いて席を立った。


自室の扉(何故か内開き。使いにくい)を開き、廊下に出る。

深夜二時、仏の心もかくやと静かな空間。フローリングの廊下が歩調に合わせて軋む。


健康第一を謳う我が家(不良の妹を除く)は皆もう寝ているので(外泊中の妹は除く)、起こしてはいけないと忍び足でキッチンに這入る。


食器棚からコップを、シンク上の吊り戸棚から蜂蜜を取り出す。

冷蔵庫を開けると、ぼんやりとした光が顔を照らした。薄いオレンジ色は暖炉を連想させた。ヒヤリとした空気が、寝ぼけた頭を覚醒させる。


牛乳を取り出し、コップに注ぐ。それを電子レンジに入れて、加熱ボタンを押した。


牛乳が温まるまでの時間を、リビングで待つ。


「………………」


手持ち無沙汰になった途端、思考が文字の群れを引き連れて来た。


これでは休憩にならないでは無いか。どうやら、俺は、考えないということが苦手なのかもしれない。


父が盆栽を嗜む庭に続くベランダのカーテンを開けると、外はいっそう暗かった。無機質な機械の音が、酷く不釣り合いに聴こえる。


「……はぁ」


ため息が、最近多い。


黒猫と三日月が似合いそうな深夜、俺は人生初めてのラブレターを書いていた。


想い人とは、現在喧嘩中。


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