契約
初回いきなり血塗れです、苦手な人は回れ右で。
聖女の血涙。
ある極東の国の天空から無数に降り注いだ紅い流星は、瞬く間に世界中を巡った。
ある者はそれを天の祝福と喜び、ある者は破滅の予兆として嘆いた。
世界は変わった。
直後はなにごともなかったかのように過ごしていた日々は、徐々に蝕まれ、崩れて行く。
途端に、リセットボタンを押したかのように滅びるわけではなく、じわじわと、真綿で首を締めるようにゆっくりと、しかし確実に。
世界は、終わりを迎えていた。
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少女の甘く湿った息遣いが、静かな部屋に響く。
彼女はうっとりと紅い瞳を細め、湿った髪が頬に張り付くのも気にせず、それを貪る。
彼女は幼いながらに美しく、愛らしかった。
成長すればいずれどんな男も魅了出来るようになるだろう。
いや、今でもそれに能う十分な魅力を持っているかもしれない。
尤も、彼女が貪っているそれにとっては、その限りではなかったのだが。
「…っ……」
血に濡れた彼は、憎々しげに彼女を見やる。
視線に気付いた彼女は、口を離し、彼の目を見て微笑む。
真逆の感情で視線を絡ませる二人。
彼女の白い柔肌は、彼の血で濡れていた。
ただの人間であれば、とっくに失血死しているであろう量の血液であるが、彼は…そして、彼女も、人ではなかった。
彼女は唇に付いた血を舌で舐めとり、また彼の首筋に口を寄せる。
ちゅ、ぴちゃ、と濡れた音を立てて彼の赤い紅い血液を啜る。
それは命を喰らう、あまりに甘く官能的なコト。
それは彼女なりの愛情表現であり。
それは彼の命懸けの覚悟だった。




