激動 前編
沙紀との待ち合わせ場所に行くと、そこには誰もいなかった。仕方が無いので少し待つ事に。
〜〜10分後〜〜
「いくらなんでも遅すぎだろ。」
あれからまったく現れる気配すらなく、道を通る人も昼時なだけあってまばらだ。そんな時、携帯が鳴った。相手は沙紀だった。
(ピリリリッ、ピリリリッ)
「もしもし、沙紀か?」
「やぁ、ハッカー君。」
「誰だてめぇ。」俺は一気に声を低くした。
「大切な恋人を返してほしければ俺たちに協力しろ。そうすれば無事に返してやる。」
「、、、、協力?」
「そうだ。お前の力を使って政府のサーバに侵入し、すべての官僚名簿を取ってこい。」
「いやだと言ったら?」
「分かってるだろ。ハハハッ。15分後に電話する。もちろん警察には言うなよ。」
「まて、お前は誰だ?」
「俺か?俺は桐生 啓吾だ。」
「お前が桐生か。なぜ日本人のお前がテロリストの手伝いをしてるんだ?」
「手伝い?アハハッ。あいつ等は日本を滅ぼそうなんて思ってないよ。」
「なに?じゃぁなんのために。」
「この国を変える。、、、それだけだ。」
(プッ、ツー、ツー)
そのまま久山大臣に電話をかける。
「もしもし、久山だ。」
「俺です。今テロリストと名乗る者から連絡がありました。」
「それで、なんと言ったんだ?」
「恋人を助けたければ政府のサーバに侵入し、官僚の名簿を取ってこいと。30分後にまたかけてくるようです。」
「恋人がさらわれたのかね?」
「ええ。そのようです。現に沙紀の携帯から電話がかかってきましたから。」
「そうか、君は今から議事堂に来てくれ。備考に注意してくれよ。」
「了解しました。」
携帯をしまい、俺は走って議事堂へ向かう。幸いここから議事堂はかなり近い、このペースなら10分ほどで着くだろう。
@
「はぁ、はぁ、はぁ。」
俺は走って議事堂前に着いた。
「君は誰だね?ここは議事堂だぞ。用がないなら立ち去りなさい。」と警備の人が言ってくる。
俺はかまわず中に入る。そこで警備員が俺の肩をつかんでくる。
「待てと言ってるだろう!?」
「うるさい。放せ。」
自分でも驚いた。こんなに冷たい言葉が自分の口から出るなんて。
「な!?」警備員は静かに手を話した。そして俺は目を一度そらし、カードを見せる。
「このカードを見れば分かる。」
「なっ!ブラックカード!?」
「ああ、この中に居る人に呼ばれたんだ。入ってもいいか?」
「あ、ああ。どうぞお入り下さい。」
「ちなみにこのことには守秘義務がかせられているから喋らないでくれ。」
「りょ、了解しました。」
そして中に入る。入り口を通るとそこには栄一郎さんがいた。
「やぁ、久しぶり。」
「ええ、そうですね。あなたの久しぶりは2時間もしないうちに訪れるようですけどね。」
「フフッ、荒れてるねぇ。」
「ちっ。(イラッ)」
「まぁ、いいけどね。」そして栄一郎さんは歩いていく。俺はそのあとをついていく。
少し歩いて階段を上るとそこには法務大臣の部屋があった。ノックをして入るとそこには久山大臣がいた。
「先ほどは報告ありがとう。」
「いえ、かまいません。」
「それで、『沙紀さんがさらわれた』とは?」
「さきほど電話がありました。そして沙紀をさらったと。政府のサーバから官僚名簿を取ってくるようにと言われました。渡す場所、送る場所などは30分後、、いや。あと15分後ですね。に連絡してくるはずです。」
「そうか、なら早く取りにいきたまえ。」
「は?」
「とりにいかないと沙紀さんが殺される可能性があるんだろう?人名優先だ。私の許可のもとだ。気にしなくていい。」
「了解。しかし、それで他の官僚が危険にさらされるのでは?」
「その可能性もあるだろう。しかし、私は君の願いには出来るだけ協力すると言ったはずだ。」
「ありがとうございます。」
そして俺はパソコンを取り出し、電源を入れる。
これをつかって人命を、いや。大事な人を助けることができるなんて考えもしなかった。
起動が完了し、俺は政府のサーバ、、、ではなく。沙紀の携帯電波をスキャンする。その間に官僚の名簿を確保。あいにくサーバの方は簡単に入手できた、俺にかかればこんなセキュリティ関係ない。
スキャン完了。場所は。。科学研究所?!
「大臣。」
「なんだね?もう終わったのかい。さすがだね。」
「いえ、名簿は戴きましたが。沙紀の居場所が分かりました。山間部付近にある化学研究所です。」
「なに?それは確かかね?」
「ええ、沙紀の携帯電波をスキャンしたので犯人ともにここにいるはずです。」
「よし、向かおう。」
「いえ、待ってください。犯人からもう電話がかかってくるはずです。それを確認してから動きましょう。」
「うむ。確かにそれが確実だな。」
そして数分後。。。
(ピリリリッ、ピリリリッ)
「もしもし。」
「名簿は手に入れたかな?ハッカー君。」
「ああ。沙紀は無事なんだろうな?」
「もちろん。で、なにかストレージに入れて持って来てくれるかい?」
「場所は?」
「山間部に位置する化学研究所。ここに恋人もいるからかならず一人できてね〜」
(ブッ、ツー、ツー)
「やはり化学研究所にいるようです。俺は一人で向かいます。」
「大丈夫かね?」
「はい、しかし犯人が逃げる可能性があるので周りを包囲していてもらえますか?」
「分かった手配しよう。これは第1部特殊部隊の隊長の番号だ。」
「現地では君に命令系統が託されている。」
「俺にですか!?」
「そうだ。君を『信頼』しているからこそ、託す。」
「わかりました。」
「では、頼んだ。部隊は約20分後に現地到着の予定だ。」
「了解。」
そしてタクシーを拾い、向かう。
「待ってろよ!沙紀!」
次で『第1章 裏の自分』は終了です!