エピローグ
「天翔、なんてお願いしたの?」
長い列から抜け出した俺達は東京のある神社に来ていた。そう、今日は元旦だ。
「俺はこれからも結衣といられますようにってお願いしたんだよ。」
「か、天翔っ。わ、私もだよ!(カァ!」
結衣は俺の腕に抱きついてきた。
「それでこれからどうする?」
結衣の反対側に立っていた悠真が苦笑いしながら話しかける。
クリスマスのあの事件は政府によって秘密裏に処理された。それにより関係していた俺たちも超法規的な物により問題にはされなかった。その後俺は結衣とリキの店に行き、銃を預かってもらってから俺の自宅へと戻った。
それからはずっと家で冬休みの宿題をやったり、クリスマスにできなかったデートをしたりしているとあっという間に元旦になってしまったのだ。
「この後はそうだなぁ。・・・・・俺はよって行く所があるんだ。二人で先に帰っていてくれないか?」
「・・・・・・天翔、分かった。俺は先に帰っている。」
「私はもちろんついて行くからね。」
「ああ、分かってるよ。行こうか。」
俺達がバスに乗って向かったのは霊園だった。ここには沙紀の墓があるのだ。
「沙紀・・・」
俺はだまって墓の前で手を合わせる。それに習い結衣も手を合わせる。しばらく立ってから俺は目を開いた。
「今年はいろんなことがあったよ、沙紀。」
その瞬間風が吹き上げた。俺は笑いながら隣にいる結衣の手を握った。
「沙紀さんってどんな子だったの?」
「小学生の頃からさ、体が弱くていっつも俺の後ろついてきたんだ。それから家が近くだからずっと一緒だった。悠真と俺と沙紀。これがいつものメンバーだった。可愛かったよ。それに頭も良かった・・・」
「・・・そっか。」
「結衣。」
俺は結衣の体をぎゅっと抱きしめた。
「苦しいよ、天翔。」
「ごめん。」
そう言いながらも結衣は逃れようとしない。」
しばらくしてから霊園を出ると神社の境内に一人の男が座っていた。素通りしようとしたがその人物は知っている人物だった。
「霧島さん、どうしたんですか。こんなところで。」
俺に気づいた霧島さんは手を挙げて座っていた境内から腰を上げた。
「久しぶりだね、碓氷くん。」
「ええ、お久しぶりです。今日はどうかしたんですか?」
「ああ、実は頼みがあるんだ。」
「頼み?」
「ああ、君にあるシステムの設計を頼みたいんだ。」
「システム・・・ですか。」
「ああ。時間は1〜2年だ。東京全体を監視できるシステムを設計してほしい。手段は案があるのでそれを後ほど渡す。・・・やってくれるかね?」
「・・・俺に、またあなた達と関われと?」
「君の気持ちは分かっているつもりだ。」
「『分かっているつもり?』・・・あんた達におれの気持ちが分かってたまるかっ。」
「天翔。」
「・・・・・すみません。」
「いや、私も勝手な事を無責任なことを言ってすまない。」
「システムの設計くらいならいいですよ。案をこのメールアドレスに送っておいてください。」
「ありがとう。君はこの先どうするんだ?」
「種子島の高校を卒業してから東京の大学を受験するつもりです。」
「そうか、なら私たちにある程度の推薦と教育費の一部を支払おう。もちろん結衣さんのもだ。」
「そんなことしていいんですか?」
「君たちは影の立役者だ。これくらい国から援助が出ても良いはずだろう。」
「ありがとうございます。」
「いや、礼を言うのは私の方だ。それと、開発に必要な物があったらこの番号に電話してくれ。・・・では、私はこれで失礼する。」
そう言って霧島さんは去って行った。
「大学かぁ。私たちもう高校3年生になるんだね。」
「ああ。・・・・結衣は高校卒業したらどうするんだ?」
「私は・・・天翔が東京に行くなら私も東京に行くよ?」
「いいのか?・・・他にもやりたい事があるんじゃないのか?」
「うん、でも天翔はこのままなら東京に行くんでしょ?それなら私の勉強も東京でできるもん。」
「そっか。・・・ってなんの勉強がしたいんだ?」
「私は将来、幼稚園の先生になりたいんだ。だから、東京の方が良い学校が多いんだよ。」
「なるほど。それなら住む家も近いといいな。」
「うんっ、そうだね!」
結衣は気を良くしたようでスキップしながら神社の階段を下りて行く。俺もゆっくりとその後をついて行く。
「結衣、うちに帰ろう。」
結衣に手を差し伸べる。彼女は柔らかい微笑みを浮かべながら俺の手を取る。
「今日もいい天気だ。」
「そうだね。」
二人で歩道橋の上で空を見上げる。昼時の空には雲一つないスッキリとした青色が広がっていた。
これで第1編 Bullet of Justiceは終了です。
次は新シリーズ『第2編 監視される世界』をお届けします。




