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第1編 Justice of Bullet  作者: SEED
第3章 革命を行う者
20/28

結衣



「カケルっ、早く行こう!」


「ああ。」


「天翔くん、気をつけてね。はい、これ今日のお弁当。」


結衣のお母さんが弁当を手渡してくれる。でうやらこの人は俺の世話を妬いてくれるあたり、昔にあったことを知っているらしい。


「ありがとうございます。」


「うん。いってらっしゃい。」


玄関のドアを開けて外に出ると遮るものがない日差しが容赦なく体に照ってきた。


「暑いな。」


「そうだねぇ。」





今日でこっちに引っ越してから1週間がたった。引っ越し作業は簡単だった。必要なものは持ってきていたし、唯一面倒だったのが学校の編入作業だ。仕方がないので理由をでっち上げ半分無理矢理こっちに編入した。ちなみに点数は余裕で足りた。



最初こそ周りに珍しがられたが今ではなんとかとけ込めている。アレから沙紀からの連絡はない。


「結衣。」


となりを歩いている少女に声をかけると笑顔で振り返った。


「今日帰ったら、P.J.F.Aに連絡してみようと思う。」


少女はいきなり不安そうな顔になるが。


「で、でも・・・・」


「大丈夫だ。施設内部の信用できる人に連絡するだけだから。」


しばらく悩んだ後、しぶしぶといった感じだが、納得してくれた。


「・・・・・・分かった。」


「ありがと。」


「いいよっ。じゃぁ、学校行こうっ!」


「おう。」


その笑顔を見るたびに過去から、心の奥から風が吹いてくるようだった。



結衣と俺が通っている高校は種子島にある小さな高校だ。総生徒数は300人くらいだ。

人数が少ないということは噂は流れると他学年にも一瞬で広がるということだ。まぁ、俺たちが実例なんだけど。。。



「おはよーす」クラスに入ると何人かの生徒が振り返ってきた。


「よう、天翔。」「今日も彼女と出勤かぁ。」「リア充め!」


話しかけてきたクラスメイトは軽く毒づきながらも肩をたたいてきた。


「そんなんじゃねーよ。」


視界の端で結衣がこっちを女子の集団の中からチラチラと視線を感じる。


「俺と結衣は古い幼馴染なんだ。」


「まぁ、お前がそういうならそれでいいけどよ。上谷のことも考えてやれよ。」


「?おい、どういう意味だよ。」


「わかんないのか・・・・・・」


「だからなんだよ。」多少イラつきもしたがあくまでやさしく返す。しかし、予想に反し友人の反応はほんとに「こいつどうすんだよ。」とあきれた顔をしていた。


「「「・・・・・・・・・」」」


「・・・・・・・・」


「「「だめだこいつ」」」


とても心外だ。


「ハモんなよ。」


(キンコーン、カンコーン)


「おっと時間切れだな。」


そういいながらクラスメイトは笑いながら席へ戻っていった。少し視線を結衣のほうへめぐらせると結衣もこちらを見ていたようで視線が交わる。その瞬間、バッと結衣は顔を赤くしながら視線をそらした。


「(な、なんだよその反応。こっちも照れるじゃねぇか)」



そして学校が終わり、結衣の家に一緒に帰るときにはすでに俺たちの関係は以前と同じに戻っていた。



// 結衣 side start //


私は学校の授業中、ずっと今日の朝のことを考えていた。カケルくんがP.J.F.Aに連絡したらそのまま帰ってしまうんではないかと危惧したからだ。


そして今日の朝、学校へ行くといきなりクラスメイトの女子数人が駆け寄ってきた。


「ねぇねぇ。最近はどうなの?転校生くんと。」


「どうって、いつもどおり仲良しだけど?」


「ちがくてっ!恋愛的な意味でよ。」


「そ、そんなこと言われても私とカケルくんは幼馴染だって・・・・」


「それはもう聞き飽きたよ。・・それにさぁ、結衣ってば碓氷くんの見る目が乙女って感じだからいってるんだよ?」


「そ、そうかな?」


「「うん。」」


「そっか。」



(キーンコーン、カーンコーン)


「時間切れね。」


「ほら、早く席に着きなってばっ。」私はそれを気に話を強引に切り上げた。


そして自分も席につき、今話しに上がっていた彼を見るとちょうどこっちを見ていて。急にはずかしくなって目をそらした。


帰り道は少しでも普通にしようと会話を成り立たせるので一生懸命だった。


// 結衣 side END //


自宅(結衣の家だが)につくとまず愛用のノートPCをかばんに入れ、携帯など必要な物をかばんに入れていく。そして結衣の部屋をチラッと見てからそのまま家を出る。結衣には悪いが連絡は一人でさせてもらおう。何かあったときでは遅いのだ。いくら彼女が凄腕のエージェントと言ってもその中身はしがない女子高生だ。まだ精神的にも未発達だろう。


そして結衣のお母さんに少し出かけてきます。と言い、家を出ようとすると・・・・・玄関に私服に着替えた結衣がいた。上半身はかわいらしい半袖のシャツに下はフリルのついたスカート。



「・・・・・」


「・・・・・」


しばしの沈黙。


「むぅ。」


頬を膨らませている我が幼馴染様に慎重に話しかける。


「ど、どうしたんだ?結衣。」


「カケルくん、私のこと置いていこうとしてたでしょ?」



「そ、そんなことないよ。」


図星をつかれたせいか声が裏返ってしまった。


「じゃぁ、ちゃんと目を合わせて言って。」


「・・・・・その服可愛いな。」


「(ボッ)ご、ごまかさないでっ」


「ご、ごめんなさい。」もはや低身低頭だ。


「じゃぁ一緒に行ってもいい?」


「・・・・・分かったよ。」


「やった!」


家を一緒に出るとまず種子島中央公園へ向かった。





そこで立ち入り禁止テープを乗り越えて中に入った。


「ここで電話するの?」


「ああ、ここなら立ち入り禁止だから誰も入ってこないだろ。」


「私たち入っちゃってるけどね。」


アハハっと結衣は笑った。


「ま、それはそれだろう。」


「そうだね。」


携帯端末をポケットから取り出し、登録してある番号を呼び出す。


(プルルルッ、プルルルッ、ガチャッ)


長い呼び出し音のあと端末から声がした。


「もしもし。」


「・・・・・」


「?もしもし」


「久しぶりだな。・・・悠真。」


「!?お前、天翔か?」


「ああ、そうだ。」


「お前今どこにいるんだ!?」


「それは・・・言えない。」


「俺でもか?」


「ああ。」


「そうか。無事ならいいんだ。」


悠真は声をため息をつきながら現状を話し始めた。


「今こっちは大忙しだ。沙紀が消えて、お前が消えて、情報処理能力もガタ落ちだぞ。」


「そうか。悪いな。それと良い知らせと悪い知らせが一つずつある。どっちから聞きたい?」


「いい方からだな。」


「俺は今結衣といる。」


隣で結衣がビクッと肩をふるわせた。その肩を俺は横から包み込む。


「結衣ってあの結衣か?」


「そうだ。俺と一緒にあっただろう。」


「そうだったのか。ならとりあえず、一人じゃないんだな。良かった。」


「次は悪い方だ。敵のハッカーの正体を発見できた、おそらく確定だろう。」


「まじか?!いい知らせじゃねえか。」


電話越しに叫ぶ悠真、俺はそれを受け流し話す。


「それが、沙紀でもか?」


結衣の掴む手に力がこもる。


「なん・・・だと?」


「・・・・・」


「嘘・・・だろ?」


「事実だ。本人から確証も得られてる。」


「話たのか!!?」


「ああ。」


「なんで止めなかったんだ!!!お前それでもあいつの彼氏かよ!!!」


「・・・」


「なんとかいえよ。」


悠真の声が震えていた。


「俺はそっち側には戻らない。」


「お前も行くのかよ。」


「俺は『あっち側』でも『そっち側』でもない。俺は『俺』だ。大臣に伝えても構わない。」


(ブチッ、ツー、ツー)





しばらくの沈黙の後、隣にいた結衣が俺の胸に抱きつき、背中に手を回してきた。


「私はずっとカケルくんのそばでカケルくんを守るからね?」


俺にその瞳は・・・重すぎた。


「ああ、ありがとう。」


そう言い俺も結衣を抱きしめた。








すでに太陽は西に傾き、公園の木々を赤く染めていた。


「結衣。」


「なに?」


「大好きだよ。俺、沙紀のことまだ忘れられないけど。大好きだ。」


「それでも。今からずっとずっと一緒にいようね。私も大好き。」




そして俺たちは誰もいない公園でキスをした。


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