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第1編 Justice of Bullet  作者: SEED
第2章 悟り
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真実を知る者 後編

P.J.F.Aの病院はそれほど遠くない場所にあった。普通の電車で地下鉄の駅付近まで行き、そこから地下鉄へ乗り換え。そして3つほど駅をまたぐとある駅で降り、そこから徒歩だ。駅からは以外と近く、10分ほどでついた。

中に入り、受付の人に病室を聞く。


「春本 沙紀の病室はどこでしょうか?」


「.....お名前は?」


またこのパターンか。


「碓氷 天翔です。」


そして受付の人は名簿に目を通し、


「失礼しました。春本様の病室は305号室でございます。」


「ありがとうございます。」


会釈してエレベーターへ向かう。


3階で降り、案内板を見ると305号室は一人部屋で一番端のようだ。そのまま道に沿って一番端を目指す。


病室の前に着き、名前を確認する。


「春本 沙紀........ここだな。」


(コンコン)


「は〜い。どうぞ〜。」


沙紀の声だ......まぁ、当たり前か。


(ガラッ)


ドアを開けて、中に入るとそこにはベッドに横になって本を読んでいる沙紀がいた。


「あれ!?天翔?!」


「ああ。大丈夫そうだな。」


「うん。体も何ともなくて検査入院だったしね。あと何もなければ明日の朝には退院できるよ。」


「そうか。....それでな。今日はあのときの話をしようと思ってきたんだ。」


「あのとき........この前の私が誘拐されたヤツ?」


「ああ。そうだ。」


「........」


「今聞きたくないなら聞きたいときでいい。声をかけてくれ。.....どうする?」


「聞くよ。天翔は私の大切な人だもん。一人にしないよ。」


「.....ありがとう。それじゃ、まず俺が今まで沙紀に隠していたことをすべて話すな。」


「うん。」


「俺は.....ハッカーだった。それも凶悪な。いわゆるクラッカーだな。そしてネットワークに繋がったサーバなどを攻撃、または侵入していた。そして俺は一人のヘマをした。それにより日本政府に逮捕...された。」


「..........」


「そして普通は捕まるはずだったが現法務大臣、久山 元陽が俺に交渉を持ちかけてきた。『政府に協力しろ』と。そして俺は協力することにした。そしてミッションをクリアするたびに報奨金をもらっていた。だから沙紀には『アルバイト』と言っていたんだ。」


「......」


「そしてこの前の事件。今アメリカの反日本グループが日本に核を持ちこんでる。そのグループが俺に直接連絡してきたんだ。『すべての官僚名簿を持ってこい』とな。そしてその人質が沙紀、お前だった。そして俺は大臣と特殊部隊と協力し、沙紀奪還ミッションを開始した。その結果、沙紀を救出。名簿も無事だった。しかし、相手の目的は名簿じゃなかったんだ。目的は....俺だ。あのとき、沙紀を餌に俺を仲間にしようとしたんだ。まぁ、ならなかったけどな。そしてあの後は無事ミッションコンプリート。そのまま病院へ.....だ。」


「.........」


「黙っていてごめんな。」


「それいつから?」


「.....中学一年生の時には俺はハッカーだった。協力し始めたのが中学3年生のときだ。」


「それから危険なめにあってたの?」


「まぁ、それなりに。」


「.......」


「普通は嫌いになるだろ。俺に関わってると一生面倒事に巻き込まれるかもしれない。だから....真実だけは伝えておく。これからお前が俺から離れても...俺は何も言わない。」


「そっ.....か。」


「ああ、だから.......バイバイ、沙紀。.......大好きだよ。」


「.....」


俺は病室を出る。そしてそのまま入り口へ行き、家に帰るために駅へ行く。


















自宅への帰り道を歩きながら考える。沙紀と一緒の毎日は楽しかった。あもう沙紀が居なくてはだめなのかもしれない。沙紀と恋人同士になって俺は変わったと思う。困っている人がいたら手を差し伸べるかもしれない。今まではしなかったのに。


「変わったな。俺。」


人と別れる事がこんなにも悲しいと感じるなんて。


自宅についてからは記憶がない。朝になっても気だるさは残り、俺は学校を休んだ。布団にくるまっていると先生から電話がきた。仕方がなく出ると


「どうした、珍しく欠席なんて。」


「いえ、すこし風邪をひいたみたいで。今日は休ませていただきます。」


「そうか。今日は特に連絡事項もないし、ゆっくり安め。」


「はい、ありがとうございます。」


そして担任は「じゃあな。」といって電話を切った。


今日もいつもの日常が始まる。沙紀がいない....日常が。


しばらくするとまた携帯が振動した。携帯を開くと久山大臣からのメールだった。内容は....『すまないがすぐに本部に来てくれ。』とのことだった。俺はベッドから体を起こし、私服へ着替え始めた..........


「そんなにうまくいかないか....」


// 沙紀 side START //


天翔が病室から出て行くとき、私の心はもう決まっていた。それなのに....天翔を呼び止められなかった。天翔の背中はとても寂しそうで、私が支えてあげなきゃ。と思ったのに。できなかった。


明日は天翔としっかり話をして、私の気持ちをぶつけよう。そう思った。




次の朝、私は無事退院し学校へ向かった。しかし、そこに天翔の姿はなかった。チャイムがなっても天翔は登校してくることはなかった。そうしていつも通りの授業が始まった。


昼休み、屋上に出て天翔の電話に電話をかけると。


『この電話は電源が入っていないか、電波が届かないところにあります。また後でかけ直してください』


と無機質な声が聞こえてきた。


「心配だなぁ。あとで天翔の家にいってみようっと。」


そして午後の授業の開始を告げるチャイムが鳴り響いた。




〜〜放課後〜〜


授業が終わり友達からの誘いを断り、さっそく天翔の家に向かった。


家に着き、イヤホンを押すが応答がない。仕方がないまた事件に巻き込まれてるのかもしれない。近くの展望台公園に行って心を落ち着かせることにした。








徒歩で20分ほどの距離にある展望台公園へつき、町が見渡せる展望台へ行くとそこには先客が一名いた。今は夕方の5時だ。丁度夕日が綺麗に見える時間だし居るのが普通だろうと思い、近づいて見ると.......天翔だった。天翔はノートパソコンを膝の上に載せて、ディスプレイを忽然と見ていた。大方また依頼なのだろう。


「天翔........」


後ろから静かに声をかけると天翔の背中がビクッとなった。そして後ろを向いてくる。その顔は驚きと、焦り、嬉しさ、いろいろな感情が混ざった顔だった。


// 沙紀 side END//


俺は久山大臣からミッションの依頼を受け、気分が優れなかったがやらないわけにはいかなかったので思い出がある展望台公園ですることにした。


ハッ、となり周りを見るとすでに空は夕焼けに染まっていた。


「もうこんな時間か。」


そろそろ帰ろうかな....と思っていると後ろに人の気配を感じた。後ろを見ずに、ディスプレイの反射を利用し確認するとそこには沙紀がいた。


「天翔........」


名前を呼ばれ、どうしようか迷ったところで。俺は白状し、静かに後ろを向いた。


「沙紀.......」


「天翔、どうして今日学校休んだの?」


「今日は.....気分が悪くて、午後からいこうと思ってたんだ。そしたら久山大臣から....依頼があって。」


「そっ.....か。」


「ごめん。」


「ううん。心配しただけだから。」


「ありがと。」


「うん。.........」


「それじゃ、俺は帰るよ。」


鞄にノートパソコンを入れてベンチを立つ。


「........ッ」


そして横を通りすぎてすぐに背中に衝撃がきた。それが沙紀だと認識するには数秒を要した。


「さ、沙紀。」


「私じゃだめ!?」


「何を言って......」


「私はずっと天翔を見てきた。でも天翔が変わった事に気づかなくて、気づいてあげられなくて!ずっと天翔だけが苦しい思いして......グスッ。ごめんね、ごめんね。」


「...........ッ!沙紀は悪くないよ。」


「でも!でも!!」


「だからそんなに泣かないで、その気持ちは嬉しいけど.....俺の周りにいると危険だから。一番大切だからそばにおきたくないんだ。」


「私は天翔と一緒ならいいよ!!」


「.............ありがとう。」


「だから.........一緒にいて、いさせて。」


沙紀はまだ俺の背中で泣いている。俺は背中から沙紀を引き離し、正面を向き。抱きしめた。


「こんな......俺の...そばに、いてくれるの?」


気づかないうちに俺の目から涙がこぼれていた。



「俺も.....もう.....一人はいやだ...よ。」


「天翔.....私がそばにいるから。ね?」


「うん、うん。ありがと。」


そのまま沙紀を抱きしめる。そしてお互い顔を見つめ合い、沙紀が自然と目を閉じる。そして俺が沙紀の唇にしずかに自分の唇を当てる。



「........」


「........」


「もう離さないからね?」


「うん。」


「よし、帰ろ?」


「うん。」


「今日は私天翔の家に泊まる!」


「うん。」


「......うん。ばっかり。」


「沙紀.....」


「ん?」


「ありがと。大好きだよ。」


「........ッ!」


「?」


「そ、そんな顔で言わないでよ......照れる。」


沙紀は顔を真っ赤にして俯いた。俺も照れるな.....


そして俺たちは家に帰るために夕日に照らされた坂道をゆっくり下っていった。

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