飛べない鳥と飛ぶ鳥
「なぁ、空ってどんな場所なんだ?」
ある日の事。ふてぶてしくも毎度俺達の餌を食いに来る、トサカもないような腹が白いやつにそんな事を聞いてみた。
こいつはある意味敵だが、たまにはこうやって話してみても良いだろう。
「急にどうしたんだい? いつもなら僕が離れるまでずっと威嚇してくるくせに」
「なに、少し気になったもんでな」
それを聞いたやつは首をカクンと傾げ、そんな事を知ってどうするんだとでも言いたげな表情を浮かべた。
ああ、だからやつは嫌いなんだ。いつも自分が偉いんだとでも思ってるような態度をしやがる。
「まぁ、教えてあげるよ。そうだねぇ、空は自由さ。何をしても良い、無責任な自由さ」
「自由? 自由は分かるが無責任ってなんだ?」
「君たちはそうやって固まってみんなで生活してるだろう? けれど僕は一羽だ、だから自由。でも、何かやらかしても僕の責任でしかないけど、誰かがその責任を勝手に負う事になるかも知れない……不思議だよね? だから無責任なのさ」
「ほう、お前はそんなに、ものを考えてたんだな」
いつも考えなしに餌を食いに来るから能天気なやつと思っていたが……見かけや行動にはよらないらしい。
「人に話を聞いておいて一言目がそれ?失礼しちゃうよ!」
「そう思うならその態度を改めたらどうだ?今もこっちの餌狙ってるだろ?」
俺と話してる間もこちらを見ると言うより餌を見てるのだからどうしょうもない。
しょうがない、今日は良いか。
「はぁ……じゃあここの範囲だけなら良いぞ、話も聞けたしな」
くちばしで円を書きその中に餌を置く。
ええい、そんな期待した目で見るんじゃない!
「ほら、これだけあれば十分だろ? なんだ、文句あるのか?」
「君ってケチなんだね、ここの餌全部くれたって良いじゃない」
「そんなの許されてたまるかってんだ、ここは俺の取り分、そっちは他の奴らの取り分。俺のからしか取れねぇんだからそれが全部だよ」
あ? なんでそんな不思議そうに首を傾げる?
「君って、もしかして優しい?」
「何を今更言ってるんだ? 当たり前だろ、俺はこの空よりも心が広いんだぞ」
「ふふっ、空よりかぁじゃあ遠慮なく。お腹空いてたんだよね」
「そんなに腹が空いてたんならそこらで何か食えば良かったんじゃないか?」
どうしてそんなに腹を空かせてるんだ?
そんな俺の疑問を感じたのかやつは答えた。
「言ったろ? 空は自由なんだ、僕も居るし僕以外も沢山いる。 僕は餌かも知れないし、警戒してくれる仲間だっていない。 そんなゆっくり食べてられないよ」
そう言って、やつは地面を蹴り飛び上がる。
ーーそれじゃあご馳走様! また会えたら美味しい餌、待ってるからね!
こちらの返事なんて待たず、何処かへ飛んでゆくやつを見て……自由ってやつは面倒なやつらなんだなと、俺はそう思ったのだった。




