ぽ
小学5年生の頃。
私は絵を描く事に夢中なお年頃でした。
何よりもお絵描きの時間が楽しくて
気付けば何時間も机に座ってる。
そんな毎日でした
その日もいつも通り学校から帰ってきて、宿題やって、あとの時間は全て絵に費やそうとしていました。
するとご飯を食べ終わったくらいの時間に母が
「少しお父さんとお母さん、知り合いの家に行ってこなきゃいけなくなったんだよ。……今夜ね。」
ドキッとする私
……え?家に……一人?
私は一人っ子、両親がいなくなる=一人は確定。
夜家に1人なんて怖い。
「……いやだ」
速攻で拒否る私
だって怖いもん。私も連れて行ってよ
「お父さんとお母さん、仕事の知り合いだったおじさんのお通夜に行くんだよ。あんたの知らない人だし怖いでしょう。だから来ないほうがいいよ。」
お母さんが静かに言う。
その雰囲気が暗く……いつもと違うので嘘では無いと悟ってしまう
「……お前は来ない方がいい。俺に似てたら無邪気だから知らず知らずのうちに……連れて帰るかもしれない。」
ビクッとする私
……な……何を?
最後の晩餐のように暗い食卓
父と母は黙々と食事を続ける。
だけど私は現実を受け入れられない。
夜一人になるのは慣れている。父や母が残業の時は8時くらいまで夜一人の時もあるから。
それなのに何故か今日だけは嫌な予感がした
もう夏休み間近。
今は6時半だというのに、まだまだ外は明るい
「お父さん達8時過ぎには帰ってくるから。なるべく早く帰るからね。」
父が安心させるように私に言う
穏やかで優しい声。
私は平静を装った。
「わかった。絵を描きながら待ってるから大丈夫。」
「お利口さんだね。何か帰りに万葉の好きな物を買ってきてあげようね。」
そんなのいいからダッシュで帰ってきて!!!
私は心の中で叫んだ。
この頃の私は大人ぶりたい年頃だった為、1人でも全然平気だし!と余裕ぶってしまう癖があった
せめて隣のおばちゃんの所に遊びに行くとか、友達の家に避難しに行くとか、何かあっただろうに。
1人でも大丈夫だと、高を括ってしまった
怖いくせに強がるのは本当に良くない。
そうこうしてるうちに、父と母は支度を済ませ黒い服で出ていく。
数珠を持って。
「じゃあ、お留守番よろしくね。」
「何かあったらすぐ、連絡しなさい。」
渡されていたキッズ携帯。
それを握りしめ笑顔で言う
「大丈夫だよ!早く帰ってきてね!行ってらっしゃい」
私は笑顔で見送った
私の当時の住まいは二階建ての綺麗なハイムだった。
その2階の角が私の家。2LDKだったと思う。
玄関を出て、手すりから父や母が歩いていくのを確認したあと、一人家に戻る。
廊下を抜け、ダイニングにあるテーブルに座ろうとした。
するとキッチンの真ん中の空間からいきなり
「ぽ」
低く聞いた事もない男性の大きな声が響く
びっくりして固まっているともう一度
「ぽ」
私は慌ててテレビを見た。
……付いてない。
誰もいないはずの空間、そして私の家は1番奥の角部屋。
下は人気のない駐車場。
もちろん今も人の声はしてない。
下は空き家。
……じゃあ……さっきの声は……誰?
「知り合いのおじさんの通夜」
お父さんの声が頭の中で反芻された。
ゾッとしてしまう私
慌てて外に飛び出した。まだ微かに見える父と母の歩くフォルムに向かって叫ぶ
「お父さーーーーーーーん!!お母さーーーーーん!おじさん家にいたあああああああああああああああ!!!!!!!!」
……必死で叫んだけど全然届かなかった。
結局部屋に帰らなきゃいけない。
この後私はどうしたか。
玄関のドアを全部開け、窓という窓を全部開け換気しました。
その後何も聞こえなかったから、おじさんは風でふわふわどっか行ったと思うことにした私でした。
換気って、大切。




