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どんなシリアスな展開も、心の中でツッコミ入れれば大体なんとかなる説  作者: 東影カドナ
第3章:昨日の敵は今日の味方、展開早すぎる説

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4-4:ピンチを抜けた瞬間、次の事件が強制発生する説(後編)

 

 私のスマホが、けたたましい緊急アラート音で鳴り響いた。

 画面には、エリアニュースの速報が表示されている。


『【速報】午後5時15分ごろ、市立博物館付近で複数の不審者が目撃されるとの通報が相次ぎました。付近にお住まいの人は警戒してください』


「……嘘でしょ」


 最悪のタイミングで、最悪のニュース。

 黒鏡か、それとも敵視派か。

 いずれにせよ、事態は最悪の方向へ進んでいる。


(休憩タイムなし!? これ、ブラック企業の連続勤務より過酷やん! 労働基準法、完全無視やで!)


≪状況は緊急です。 市立博物館まで、現在地から徒歩で約20分。タクシーなら8分――≫

(体力ゼロの状態で次のボス戦とか、ゲームバランス崩壊しとるやろ!)


 私たちは、疲労困憊の体で、顔を見合わせた。

 レイは立ち上がろうとして、膝が震えている。 ユズも青ざめた顔で、肩で息をしている。

 そして私も、頭痛と疲労で視界がぼやけている。

 休んでいる暇は、もう、どこにもなかった。


「……行くしか、ないよね」


 ユズが、震える声で言った。


「お姉ちゃんを助けるための、『星詠みの鏡』……。黒鏡に取られたら、全部終わっちゃう」


 ユズの拳が、ギュッと握られている。

 その手が、わずかに青白く光った気がした。


(今の……気のせい……?)


≪天海ユズの魔力反応が一瞬だけ上昇。感情の高ぶりに連動している可能性≫

(ユズも、変わり始めとるんかな……)


 レイも、苦痛に顔を歪めながら立ち上がる。


「……昔を、思い出した」

「昔?」

「5年前、俺が死にかけた時も、こんな感じだった。絶望的な状況で、でも、誰かが手を差し伸べてくれた」


 レイが、遠い目をする。


「あの時、セツのおじいさんとミラが助けてくれなければ、俺は今ここにいない。だから、今度は俺が――」

「レイくん……」


(この人、ほんまに優しいな……。 イケメンで方向音痴で、優しすぎる……属性盛りすぎやろ)


 私も、ふらつきながら立ち上がった。


「……わかった。 行こう。 でも、その前に」


 私は二人を見た。


「作戦、立てるで。 今度こそ、ちゃんとした作戦を」


 レイが、疲れた顔で微笑んだ。


「ああ。 今回は、お前の指示で何とかなった。 次も、お前を信じる」

「私も! セツちゃんの『今!』が完璧だった!」


(あれ……? なんか、チームっぽくなってきた……?)


≪補足。 チーム連携率が34.7%に上昇しました。 訓練前の17.4%から、約2倍の改善です≫

(おお、数字で見ると、ちょっと嬉しいやん! でも、まだ3割やけどな……)



 ◇



 タクシーの中。三人とも無言で、窓の外を見ている。

 運転手さんが、ルームミラー越しに心配そうに私たちを見た。


「お嬢ちゃんたち、大丈夫かい? 顔色が悪いよ」

「あ、はい……ちょっと、走りすぎちゃって……」


 私が愛想笑いで誤魔化す。


(走りすぎたっていうか、死闘の後やねんけどな。説明できへんわ)


≪到着まで、あと3分です≫

(3分後には、また戦いか……。 準備期間、短すぎやろ……)


 タクシーが市立博物館に近づくにつれ、空気が変わった。

 冷たい。

 肌がピリピリする。


(この感じ……嫌な予感しかせえへん……)


≪警告。 前方300メートルに、複数の高エネルギー反応。 黒鏡の可能性:78%、敵視派の可能性:22%≫

(両方おる可能性は……?)


≪……計算上、ゼロではありません≫

(最悪や……三つ巴の大混戦フラグやん……)


 タクシーが博物館の前で止まった。

 運転手さんに料金を払い(レイが出してくれた)、私たちは重い足取りで車を降りる。

 目の前には、重厚な石造りの市立博物館が聳え立っている。

 普段なら、文化の香りがする落ち着いた建物なのに、今は何か禍々しいオーラすら感じる。


「……このまま博物館に突入するんか?」


 私が聞くと、レイは首を横に振った。


「いや、まずは一度、体勢を立て直す必要がある。 この状態では戦えない」


 確かに、私たちはボロボロだった。

 レイの服は泥だらけで、ユズも青ざめた顔をしている。 私も、頭痛で視界がぼやけている。


「……セツ、悪いが君の家を使わせてもらえないだろうか。 ここから一番近く、敵にもマークされていないはずだ」

(さらっと言ったで、この男! 女子高生の家に泊めてくれって、どんだけナチュラルに言うねん!)


 脳内で全力のツッコミを入れつつも、彼の提案が最も合理的であることは認めざるを得なかった。


「……まあ、私の家が一番安全なのは確かね。それに、うちのおばあちゃん、たぶん隕石が庭に落ちても『あらあら、お庭掃除が大変』で済ませるタイプだから、何があっても動じないし」


「それは心強いな」

(どこがやねん!)


 というわけで、私たちはタクシーを拾い直し、我が家へと向かった。

 博物館での決戦は、明日になる。


 その前に、ちゃんとした作戦を立てなければ。

 


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【戦闘結果】

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【勝敗】: 辛勝(逃亡成功)

【MVP】: 沖名セツの陣内ヘッドショット(偶然?必然?) ★NEW

【スキル成長】: 『情報視』Lv.2→Lv.3 ★UP

【新規習得】: 『超高速解析』(限定発動) ★NEW

【チーム連携率】: 8.2%→34.7% ★大幅UP

【消耗度】: 全員が疲労困憊

【移動手段】: タクシー(レイ支払い)

【次のミッション】: 一度態勢を立て直し、明日の博物館潜入に備える

【心境】: 休む暇もなく次の戦い……と思ったけど、さすがにこの状態で突入は無理や。一晩だけ、作戦を練る時間をもらえた。ていうか、なんでタライが陣内の頭に当たったん? 偶然? 必然? わからへん……でも、チームが少しずつまとまってきた気がする。

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