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どんなシリアスな展開も、心の中でツッコミ入れれば大体なんとかなる説  作者: 東影カドナ
第3章:昨日の敵は今日の味方、展開早すぎる説

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4-4:ピンチを抜けた瞬間、次の事件が強制発生する説(前編)


 私の口から、自分でも驚くような言葉が飛び出した。


「――【反射盾】、展開!」


 次の瞬間、陣内のバトルアックスが、空中で――


カァァァンッ!


 金属音が、広場中に響き渡った。


 だが、期待とは裏腹に、私の盾はレイとアックスの間ではなく、なぜか斜め上の空間に出現していた。


(ああ、やっぱりあかんかった……! 制御できてへん!)

≪セツ、落ち着いて。盾は展開されました。ただし、座標が1.7メートルずれていました≫

(ずらしたつもりないわ! 役に立たへんやん!)


「終わりだ、夜城レイ!」


 陣内の重い一撃が、ついにレイの剣を弾き飛ばした。


ガキィィィンッ!


 金属が軋む嫌な音と共に、弾き飛ばされた銀の剣は、地面に突き刺さる。

 体勢を大きく崩し、無防備にがら空きになったレイの体に、陣内の巨大なバトルアックスが無慈悲に振り下ろされようとしていた。

 アックスの刃が、夕日に鈍く光る。


(嫌や……!)

(まただ。また、大事な仲間が目の前でやられるのを、見ているだけなのか。

 あの時、屋上で誓ったじゃないか。「友達が泣いてるのをもう見たくないから」って)

(『情報視』……! もっと、もっと集中するんや! 一瞬を永遠にするんや!)

(見えろ! 見えろ! 見えろ!)


 敵の動きが、筋肉の収縮が、呼吸のリズムが、視線の動きが、顕微鏡単位で分析される。

 世界がスローモーションになる。


≪警告。契約者の脳活動に異常を検知。情報処理速度が限界を超えます≫


 頭が割れるように痛い。でも、見るのをやめなかった。


(盾は……盾はどこに出せばいい!?)


 一瞬。陣内がアックスを振り下ろしながら、視線を私とユズに向けた。

 牽制のつもりだろう。


(いまや! 盾に角度をつけてアックスを別の方向に流す!)


 私は、訓練中の失敗を思い出した。

 ここでレイの頭上にタライを落とすわけにはいかない。


 私、失敗しないから!

 私は、ありったけの集中力と意志力で、アックスとレイの間に盾の出現を念じた。


カーン!

(あかーーーん!)


 鈍い、間抜けな音が響き渡る。

 見えないタライが、陣内のヘルメットにクリーンヒットした。


「ぐっ!?」


 さすがの陣内も、予期せぬ天からの衝撃に一瞬怯み、アックスの軌道がブレた。

 ほんの数センチ。だが、それは、絶望を覆すには十分すぎる隙だった。


(レイとアックスの間やなくて、陣内の頭にタライ落としてもうた! でも、結果オーライや!)


≪偶然の成功ですが、効果的でした。陣内の体勢が0.8秒間崩れます≫

(偶然て言うな! ちゃんと狙ったんや……多分!)


「レイくん! 今! ポケットのやつ!!」


 私の絶叫に、レイがハッと顔を上げる。

 彼は私の意図を一瞬で理解し、最後の力を振り絞ってポケットから丸い手鏡を取り出し、地面に叩きつけた。


パーンッ!


 目も眩むほどの白い閃光が辺り一面を包み込む。


「ぐわっ!」


 陣内たちの呻き声を聞きながら、レイは私の腕を掴んで叫んだ。


「セツ、ユズ! こっちだ!」



 ◇



 次に目を開けた時、私たちは、さっきの広場から数百メートルは離れた、鬱蒼とした森の中に転移していた。

 周囲の木々は静かで、さっきまでの喧騒が嘘のようだ。


「はぁ、はぁ……。なんとか、撒いたか……」


 レイが、肩で大きく息をしながら、地面に膝をつく。

 彼の顔は、疲労と安堵が入り混じっていた。


「今のって……」


 ユズが、呆然とした声で尋ねる。


「鏡守の緊急離脱用の閃光鏡フラッシュミラーだ。一度しか使えない、切り札だがな」


(逃走用と聞いていたけど、転移するとは聞いてなかったわ! 便利すぎやろ! でも、一回限りて……課金アイテムか!)


≪補足。閃光鏡は鏡守隊員に支給される標準装備です。課金要素はありません≫

(例えやねん、例え! ツッコミの揚げ足取るな!)


 私たちは、三人とも、その場にへたり込んだ。

 凄まじい疲労感と、命からがら逃げ延びた安堵で、足に全く力が入らない。

 特に私は、情報視を酷使したせいで、頭の奥がズキズキと脈打っていた。


(あれが、私の力の使い方……。 ただ見るだけじゃなくて、勝つための情報をこじ開ける……)


 身体の奥底から、力が吸い取られたような感覚がする。

 でも、新しい力が目覚めたわけじゃない。 今ある力を、どう使うか。その一端が見えた気がした。


(なんで、陣内の頭にタライが当たったん? レイとアックスの間に出そうとしたのに……)


≪解析。あなたの深層心理が「最大の脅威=陣内」と判断し、無意識に座標を修正した可能性があります≫

(無意識……? つまり、私の能力、勝手に賢くなっとるってこと?)

≪不明です。 ただし、興味深いデータです≫

(なんそれ! はっきりせえ!)


≪セツ。本日の戦闘データを解析しました。あなたの成長率は――≫

(後で! 今は休ませてよ! 脳みそが茹で上がりそうや!)


 その時だった。


ピリリリリ! ピリリリリ!


 私のスマホが、けたたましい緊急アラート音で鳴り響いた。

 画面には、エリアニュースの速報が表示されている。


『【速報】午後5時15分ごろ、市立博物館付近で複数の不審者が目撃されるとの通報が相次ぎました。付近にお住まいの人は警戒してください』


「……嘘でしょ」


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