4-1:方向音痴の「近道」、遭難フラグでしかない説(後編)
ようやく私たちの第一回作戦会議は本格的に幕を開けた。
(ミラ、新しい情報何かある?)
私が脳内で尋ねると、ミラのクールな声が響いた。
≪昨夜、教育機関『高等学校』のネットワークへの侵入に成功。校内及び市内の監視カメラのデータを解析しました。結果、敵対組織『黒鏡』は、市内各地の骨董品店や旧家を周回し、『古鏡』──古い鏡を探索している模様です≫
私は、ミラの報告の概要を二人に伝える。
「古い鏡……? お姉ちゃんみたいに、暴走した子たちを仲間にしようとしてるのかな?」
ユズの疑問に、レイが答える。
「それもあるだろう。だが、奴らの真の目的は、おそらく別だ。奴らは、全ての疑似生命体を強制的に支配できるという、『マスターキー』となる伝説の鏡を探している可能性がある」
≪肯定します。市立博物館で現在特別展示中の『星詠みの鏡』が、そのマスターキーである可能性は92%と算出されました≫
「市立博物館……!」
レイの表情が険しくなる。
「作戦は決まったな。黒鏡より先に、その鏡を確保して取引材料とする」
「確保って、どうやって? 天下の市立博物館が、うら若きピチピチのJKに『はい、どうぞ。こちらの曰く付きのアンティークミラーですね』って、渡してくれるわけないでしょ」
「そもそも、忍び込むの? 警備員さんとか、監視カメラとか、どうするの?」
ユズの素朴な質問に、レイは真顔で答える。
「監視カメラは……セツが何とかする」
「私かい! ハッキング能力なんて持ってないわ!」
≪私が代行します。セツの『情報視』により、監視システムへのアクセスが可能です。成功率は99.7%――≫
(あんた、そういう時だけ有能アピールすな! てか、0.3%の失敗率が妙に怖いわ!)
≪0.3%は誤差の範囲内です。統計学的に――≫
(またロジハラや! あんた、ほんまに学習能力あるんか!?)
「警備員は……ユズが眠らせる」
「えぇ!? 私、人を凍らせることしかできないよ!? 眠らせるとか、そんな平和的な魔法使えないし!」
「確保の方法は……」
レイは、コーヒーカップを優雅に持ち上げてゴクリと一口飲み、まっすぐな目で自信満々に言った。
「力ずくだ」
そのあまりにも脳筋な発言に、私とユズは飲んでいた水を同時に吹き出した。
(だめだ、こいつ作戦立案に向いてない……! 作戦の薄さ、湿布の裏のフィルムくらいペラッペラやん!)
「待て待て。あんた、それ本気で言ってるん? こないだ会った敵視派の連中も、絶対にあの鏡を狙ってくるでしょ!」
「ああ。奴らは鏡の力を危険視している。『星詠みの鏡』が『マスターキー』だという可能性に気がついたら、破壊をしに現れるだろうな」
黒鏡は、鏡を使って全ての疑似生命体を「支配」しようとする。
敵視派は、鏡を「破壊」して、それを阻止しようとする。
そして私たちは、シズク姉さんを助けるための「取引材料」として鏡を確保したい。
(最悪やん……。完全に三つ巴のデスマッチ確定やん……!)
私が頭を抱えていると、ミラの声が脳内に響いた。
≪補足です。市立博物館の警備システムを事前調査したところ、予想外の問題を検知しました≫
(……予想外の問題?)
≪『星詠みの鏡』の展示室には、通常の監視カメラに加えて、『鏡守』が設置した特殊な魔力探知センサーが配備されています。接近した契約者や疑似生命体を自動検知し、本部に通報するシステムです≫
「それ、完全にアウトやん! 私もユズもレイも、全員引っかかるやつやん!」
私が思わず声に出すと、レイとユズが驚いた顔でこちらを見た。
「どうした、セツ?」
「あー、えっと……ミラが言うには、博物館には『鏡守』の特殊センサーがあるらしくて……」
二人に状況を説明すると、レイは「なるほど」と腕を組んで考え込んだ。
「それは厄介だな。センサーを無効化する方法を考えなければ……」
≪現時点での成功率を再計算しました。作戦成功率は――12%です≫
(またしても12%!? 『見せ算』のネタがウケる確率と同じやん! どんだけ不吉な数字なん、12%!)
どうやら、私たちの次のクエストは、脳筋リーダーに率いられた素人三人組による、無謀な博物館潜入ミッションらしい。
しかも成功率は、絶望的な12%。
前途多難どころか、前途絶望という言葉しか、思い浮かばなかった。
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【ステータス更新】
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【名前】: 沖名セツ
【契約者レベル】: Lv.2
【ユニークスキル】: 『情報視』Lv.2★UP
【仲間】: 夜城レイ(協力者・方向音痴)、天海ユズ(幼馴染・半妖)
【組織】: チーム・ミラーズ(仮)※命名センス最悪
【敵対組織】: 黒鏡、鏡守・敵視派
【ミッション】:
No.002『星詠みの鏡を奪還せよ!』 ★NEW
目標:黒鏡と敵視派より先に『星詠みの鏡』を確保する
成功率:12%(絶望的)
障害:監視カメラ、警備員、特殊魔力センサー、三つ巴の抗争
【心境】: チーム名がダサい。作戦が雑。成功率が12%。不安しかない。でも、やるしかない。
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