3-5:少年漫画、とりあえずチーム結成しがち説(後編)
その日の夜。
私の部屋に、三人の姿があった。
私と、レイと、そして、まだ少し目の赤いユズ。
三人は、部屋に置かれたアンティークミラーの前に立っていた。鏡の中からは、AIのミラが静かに私たちを見つめている。
「……じゃあ、改めて」
私は、二人に、そしてミラに向き直って宣言した。
「今日からうちらはチームや。目的は一つ。『黒鏡』をぶっ潰して、シズクさんを絶対に取り返す!」
「うん……!」
「……ああ」
ユズが力強く頷き、レイも静かに同意する。
バラバラだった三つの想いが、今、確かに一つになった。
「そこでや。チームには、まず名前が必要やと思うねん」
私が切り出すと、二人はきょとんとした顔をした。
「チーム名……?」
「そや。やる気が出るやろ! 私がいくつか考えてきたんやけどな! 例えば……『シャイニング・ガーディアンズ』!」
「……却下だ」
「ごめん、セツちゃん。ちょっとダサいかも……」
即座に、二人に却下される。
(うそやろ! めっちゃ考えたのに!)
「なっ……! ほ、ほな、『†クリスタル・ナイツ†』は!?」
「厨二病がすぎる」
「うーん……」
「……! じゃあ、『ミラクル・ファイターズ』!」
「……もういい、セツ」
「ごめん無理……」
私のネーミングセンスは、どうやら壊滅的らしい。
(なんでや! どれもカッコええと思ったのに!)
三人がうーんと頭を悩ませていると、鏡の中から、ミラの無機質な声が響いた。
≪論理的に考えたチーム名を提案します≫
「お、ミラ! 何かええのあるんか!?」
≪はい。セツや『鏡守』の力は”鏡”に由来します。よって、最もシンプルで的確な名称は――≫
…
……
………
≪『チーム・ミラーズ』です≫
しーん、と部屋に沈黙が流れる。
「……ミラ、それ、本気で言うとるん?」
≪肯定します。データベースを2億3千万件検索した結果、最適解として導き出しました≫
「2億件も検索してそれかい! あんたのデータベース、全部ゴミやん!」
≪理解できません。論理的に完璧な命名です≫
(こいつ、AIのくせに、センスだけは人間以下や……!)
そして。
「「ぷっ……!」」
ユズとレイが、同時に吹き出した。
「だっさ!」
「ひねりがないな……」
「ミラ、あんたは黙っとれ! 一番ダサいわ!」
(AIのくせに、一番センスないやん!)
重苦しかった空気が、嘘のように和らぐ。
私は、二人に向かって、ニッと笑いかけた。
「……まあ、ええか。チーム名なんて、飾りや。不本意やけど、それでええわ。『チーム・ミラーズ(仮)』、結成や!」
私がそう宣言した瞬間。
脳内に、ミラの声が響いた。
≪確認。新しいイベントの発生により、契約者セツの精神的成長を検知。契約者レベルが上昇します≫
視界が、一瞬だけ光に包まれる。
(なんや、この感じ……体が軽い?)
≪おめでとうございます。レベルアップです≫
(お、おお! ゲームみたいやん! これ、ステータス上がったってことか!?)
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【ステータス更新】
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【名前】:沖名セツ
【契約者レベル】:Lv.1 → Lv.2 ★UP
【ユニークスキル】:『情報視』Lv.1
【仲間】:夜城レイ(矛)、天海ユズ(盾) ★NEW
【組織】:チーム・ミラーズ(仮) ★NEW
【敵対組織】:黒鏡 ★NEW
【ミッション】:
No.001『ファーストコンタクト』(継続中)
No.002『黒鏡を追え!』 ★NEW
目標:黒鏡に連れ去られた天海シズクを奪還する
【心境】:チーム名がダサすぎて泣きそう。でも、やるしかない。
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(レベルアップきたー! けど、チーム名がダサいのは変わらへん!)
こうして、目的もバラバラ、性格もバラバラ、チーム名も絶望的にダサい、私たちの『チーム・ミラーズ(仮)』は、今、ここに結成されたのだった。
前途多難? 上等や。
絶望的な戦力差? 知るか。
(ツッコミ魂の見せ所やないかい、ムール貝、酒蒸しにして〜や!)
私は、鏡に映る仲間たちの顔を見て、密かに拳を握りしめた。
矛と、盾と、眼。
バラバラだけど、それでいい。
完璧じゃないけど、それでいい。
(うちらなら、絶対にやれる)
そして、私は心の中で、誓った。
(待っとけよ、黒鏡。次は、絶対にツッコミ倒したるからな!)
まだテレビを見ていた頃、怪奇!YesどんぐりRPGとヤジマリーが大好きでした!
今でも「~かい!」と聞くと、頭の中で「ムール貝、酒蒸しにして〜」と続けてしまいます!




