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どんなシリアスな展開も、心の中でツッコミ入れれば大体なんとかなる説  作者: 東影カドナ
第3章:昨日の敵は今日の味方、展開早すぎる説

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3-3:自分の周り、なぜか能力者だらけになる説


 放課後。

 私はレイに指定された通り、一人で屋上へ向かった。

 

 もちろん、私の恋路(という壮大な勘違い)を応援するためSPに志願したユズには、「二人だけの秘密の話があるから!」と乙女心をくすぐる嘘八百を並べ、「絶対に来ないで」と強く、それはもう強く釘を刺しておいた。


(……まあ、あいつのことや。絶対ついてくるやろな)


 諦めにも似た確信を抱きながら、錆び付いた屋上のドアを開ける。

 ひやりとした、季節外れの風が頬を撫でた。

 レイは既にフェンスのそばに立ち、夕日に染まる街を静かに眺めている。銀色の髪が風に揺れ、その横顔は彫刻かと思うほど整っていた。


(絵になる男やな、ほんま……。悔しいけど、少女漫画の表紙飾れるレベルやわ)


「待たせた?」

「いや、俺も今来たところだ」


(うほ、待ち合わせデートのお決まりのセリフやん!)


 彼の隣に立つと、映画のワンシーンのような空気になるのが腹立たしい。

 彼はすぐに真剣な表情に切り替え、本題に入った。


「最近、市内で原因不明の『低温現象』が多発している。それも、特定の場所に集中してな」

「低温現象?」


≪解析します。過去のデータと照合した結果、気温調整型疑似生命体、コードネーム『ユキオンナ』の暴走パターンと87%一致します≫


(ユキオンナ……。やっぱり、妖怪の正体は業務用マシンのバグやったか)


「その暴走体が、この近くにいる可能性が高い。おそらく、この学校の周辺に」

「学校に!? なんで?」


 レイは苦々しい顔でフェンスに寄りかかる。


「疑似生命体は、強い『想い』に引き寄せられる傾向がある。寂しさ、怒り、悲しみ……そういった負の感情が、ヤツらの暴走を加速させるトリガーになるんだ」

「……」


(学校なんて、そんな感情の吹き溜まりみたいなもんや。魑魅魍魎が跋扈する魔境やで、ホンマに)


 私の脳裏に、体育の授業で見たユズの異常なステータスがよぎる。

 『種族:Human...?』

 まさか、とは思う。だが、嫌な予感は当たるのが物語のお約束だ。

 その時だった。


バターンッ!


 静寂を切り裂いて、屋上のドアが勢いよく開く。そこに立っていたのは、案の定、息を切らして肩で息をする、我らが太陽印の自称SP、ユズだった。


「はぁ、はぁ……やっぱり二人で密会してた! 親友の恋路、この目で見届けるまでは死ねない!」

「だから違う言うとるやろ! 来るなって言うたのに!」


「屋上って聞いてたけど、万が一セツが途中で別の場所に連れ去られたりしたら大変じゃん? だから念のため、こっそりセっちゃんのスマホにGPSアプリ入れといたの! 親友を守るSPとして当然でしょ!」

「その過保護、完全にストーカーの思考や!」


(こいつ、後で絶対シメる……!)


 私が頭を抱えていると、レイが心底呆れたように、本日最大のため息をついた。

 その瞬間――

 

ヒュオオオオオオォォォッ!


 空気が、変わった。

 さっきまでの生ぬるい風ではない。肌を突き刺すような、真冬の冷気が屋上全体を支配した。


「なっ……!?」


 気温が、ありえない速度で下がっていく。

 足元のコンクリートが、パキパキと音を立てて白く凍りつき、吐息が一瞬で白くなった。


≪警告! 強力なエネルギー反応を検知! 脅威レベルB+! これは……暴走疑似生命体『ユキオンナ』です!≫

(B+て! テストの成績やないんやから、もっとわかりやすく言うてくれ!)


≪換算すると、小型爆弾3個分の破壊力に相当します≫

(余計怖いわ!)


 ミラの警告が、脳内でけたたましく鳴り響く。

 見ろ、とでも言うように、全員の視線が屋上の一点に吸い寄せられた。

 給水塔の上。

 そこに、一人の女性が、まるで吹雪を背負うように静かに立っていた。

 風に舞う、長く美しい黒髪。雪のように白いワンピース。

 だが、その表情は氷のように冷たく、人間らしい感情は一切読み取れない。虚ろな瞳だけが、爛々と赤く輝いていた。


「ア……ァ……」


 女性の唇から漏れたのは、言葉ではない、悲鳴のような、呻きのような音。


「あれが……ユキオンナ……!」


 レイが即座に懐の手鏡から銀の剣を抜き放ち、私とユズを庇うように前に出る。

 ユキオンナは、そんな私たちを冷たく見下ろすと、何の予備動作もなく、ふっと右手を上げた。

 すると、彼女の周囲に、巨大な氷の槍が数十本、音もなく生成される。


「まずい! 伏せろ!」


 レイが叫ぶ。

 だが、あまりの光景に、私の足はすくんで動けない。

 氷の槍が、一斉にこちらへ向かって放たれる。


(死んだ……! あっけない! 私の人生、ここで終わりかい!)


 目を固く閉じた、その時だった。


「セっちゃんに……手ぇ出すなーっ!」


 その瞬間、ユズの瞳が――一瞬だけ、氷のように青白く輝いた。


(え……今の……!?)


 私を押しのけるように、ユズが前に立った。

 尻餅をついた私の目の前で、ユズが両手を前に突き出す。

 そして――


ドンッ!


 空気が振動した。


 彼女の感情の爆発に呼応するように、その体から青白い光のオーラが溢れ出し、目の前に巨大な氷の壁、いや、城壁が出現したのだ。


(氷の城壁て! おまえは、エ○ザか!)


ガ ガ ガ ガ ガ ガ ッ !

キンッ! キィン!


 ユキオンナが放った氷の槍が、ユズの作り出した氷壁に次々と突き刺さり、甲高い金属音を立てて砕け散る。


「……え?」


 ユズの潜在魔力【S】。それは、ただの飾りじゃなかった。


「ユズ……あんた、これ……」


 私だけじゃない。レイも、驚愕の表情でユズを見ていた。

 あの、いつも冷静沈着な彼が、明らかに動揺している。


(レイが驚いとる……。ということは、これ、相当ヤバいやつやん!)


≪肯定します。彼女の能力値は、現時点で既に夜城レイの70%に達しています≫


(新人が、初舞台でいきなり爪あと残しとるやん! どんな才能やねん!)


 ユズは、ぜぇぜぇと肩で息をして、苦しそうに顔を歪めながら、給水塔の上のユキオンナに向かって叫んだ。


「やめて、お姉ちゃん!」


 …

 ……

 ………


「……は?」


 お姉ちゃん?

 誰が?

 あの、どう見ても人間やめちゃってる、暴走疑似生命体が?


(待て待て待て! 情報が多すぎて脳の処理が追いつかへん!)


≪整理します。天海ユズの発言から推測される事実は――≫

(いや、待て! あんたの論理的説明、今は逆に混乱するやつや!)


 私の脳内ツッコミ担当大臣が、今日一番の大声で、魂のツッコミを炸裂させた。


(なんでやねん! あんたも能力者やったんかい!)

(しかも敵の正体、姉て! 昼ドラでももうちょいマシな展開考えるわ! 設定盛りすぎやろ!)



 ◇



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【緊急ステータス更新】

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【現在地】: 校舎屋上

【敵】: 暴走疑似生命体『ユキオンナ』★NEW

【脅威レベル】: B+(小型爆弾3個分)

【正体】: 天海シズク(ユズの姉)★衝撃の事実

【味方】: - 夜城レイ(戦闘能力A)

     - 天海ユズ(覚醒中・制御不能)★NEW

【セツの状態】: 混乱(MAX)、驚愕(MAX)

【心境】: 設定盛りすぎ。頭の処理が追いつかない。ていうか、親友が能力者で、その姉が暴走妖怪て。もう何がなんだか……

━━━━━━━━━━━━━━━━

『ユキオンナ』がお姉ちゃん!?

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