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どんなシリアスな展開も、心の中でツッコミ入れれば大体なんとかなる説  作者: 東影カドナ
第3章:昨日の敵は今日の味方、展開早すぎる説

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3-2:陽キャな幼馴染、だいたい暴走しがち説(前編)


 夜城くん――いや、レイと協力関係を結んで数日。

 私の日常は、表向きは驚くほど何も変わらなかった。

 眠い目をこすりながら授業を受け、当たり障りのないクラスメイトと当たり障りのない話をし、放課後は寄り道もせずにまっすぐ家に帰る。

 完璧なまでの「その他大勢」ムーブだ。


 ただ、一つだけ決定的に変わったことがあるとすれば、私の脳内だけは、開園30分前のテーマパークのように、とんでもなく騒がしくなったことだ。


≪セツ、日本史の授業における『江戸幕府の成立』について、当時の政治的背景と経済的要因、諸外国との関係性を踏まえた上で、8000字でレポートします。参考文献リストも添付可能です≫


(いらんわ! 誰がそんな大作求めたんや! 授業に集中させろ、このお節介AI!)


≪セツ、先ほどから心拍数が低下し、脳の活動レベルが著しく落ちています。これは一般的に『退屈』と呼ばれる状態です。改善のために、校内にいる全生徒のSNSの裏アカウントを特定し、相関図を作成しましょうか?≫


(何それ、面白そ! ちゃうわ! それプライバシーの侵害がすぎるやろ! ていうか、あんたに私の『退屈』を定義されたないわ!)


≪セツ、昼食の栄養バランスが偏っています。タンパク質が不足。購買部での『焼きそばパン』の購入は非推奨です≫


(ほっとけ! 女子高生のランチのメインは炭水化物やねん!)


 ミラは相変わらず、私の生活の全てを観測し、的確すぎるツッコミ(あるいは壮大なボケ?)を絶えず入れてくる。

 そろそろ、このAIの電源を物理的に引っこ抜く方法を本気で検討すべきかもしれない。



 ◇

 


「はい、じゃあ次は女子ー。ドッジボールやるから、コート入ってー」


 週に二回の体育の授業は、運動が苦手の私にとっては公開処刑の時間だ。

 特に、球技。飛んでくるボールが怖すぎて、だいたいコートの隅で存在感を消すことに全力を注いでいる。

 

 今日も、クラスの陽キャグループが「うぇーい!」とか言いながらボールを投げ合うのを気配を消しながら、透明人間のコントのようにやり過ごす算段だった。

 しかし、今日に限っては、そんな私のささやかな願いを打ち砕く人物がいた。


「セっちゃん! 同じチームだね! 絶対勝とうね!」


 太陽みたいな、一点の曇りもない笑顔。

 その声の主は、私のすぐ隣で準備運動をしながら、ぶんぶんと腕を回している。

 茶色いショートカットが快活に揺れる。

 

 彼女の名前は、天海(あまみ)ユズ。

 小学校の頃、家が近所でよく遊んでいた幼なじみだ。高校でまさかの再会を果たしたのだが、クラスの中心でいつもキラキラしているユズは、日陰の隅っこが定位置の私とは、悲しいかな、住む世界が違いすぎた。


(うわ、来た。陽キャの権化……。なんで隣に来るかな……)


「ユズ……久しぶり。あんまり張り切りすぎると怪我するよ」

「平気平気! 体力には自信あるんだ! セっちゃんこそ、ちゃんとボールから逃げなよ? 昔から運動苦手なんだから、私が守ってあげないとね!」


 そう言って、私の背中をパン!と小気味よく叩く。

 痛い。普通に痛い。


ピーッ!


 試合開始のホイッスルが鳴る。

 試合は、案の定、ユズの独壇場だった。

 敵陣からの豪速球を、いとも簡単にキャッチする。かと思えば、男子顔負けのフォームから、唸りを上げるようなボールを投げ込み、次々と相手を外野に追いやっていく。


「ナイス、ユズー!」

「まじカッコいい!」


 味方からは歓声が上がり、敵からは悲鳴が上がる。

 私はというと、そんなユズの影に隠れるようにして、ただただ時間が過ぎるのを待っていた。


(運動神経おばけか、あいつは……。同じ人間とは思えへん)

 

 その時、ユズのボールが、敵の外野プレイヤーに直撃した。


ドスッ!


「痛っ!」


 当たった生徒が、思わず数歩よろめき、尻餅をついた。


(……え? 今、軽く吹っ飛んでなかった? 女子の投げたボールで?)


「ユズー、ちょっと手加減してー!」

「あ、ごめんごめん! つい力入っちゃった!」


 ユズは笑って謝るが、その表情に罪悪感は全く見られない。


(手加減……って、今まで手加減してたん!?  もはや人間の範疇超えてへん!?)


「またユズが無双してるー」

「まあ、いつものことだよね」


 クラスメイトたちは、もはやユズの超人的な動きに驚きもしない。


(……え? みんな、あれが普通やと思っとるん? 私の目がおかしいん?)


 その時だった。

 敵チームの一人が投げたボールが、予想外の角度で曲がり、私の顔面めがけて飛んできた。


「わっ!?」


 完全に油断していた。

 もう避けられない。

 私がぎゅっと目をつぶった、その瞬間。


「危ない!」


シュバッ!

  

 人間が出していいはずのない効果音と共に、ユズが私の前に割り込んできた。

 彼女は、まるでボールが止まって見えるかのように、私の顔面の数センチ手前で、その剛速球をいとも容易く、鷲掴みにしていた。


「……え?」


 体育館が、一瞬だけ静まり返る。

 今の動き、なんだ?

 瞬間移動とでも言うのだろうか。目で追うのがやっとだった。


(……今、何が起きた? 私の目、バグった? ユズの動き、完全にスローモーション再生された映像の中だけ高速移動してるやつやん! FPSゲームのラグか!?)


「セーフ? セっちゃん、大丈夫だった?」


 ユズは、何事もなかったかのように笑っている。


「う、うん……ありがと」

「えへへ、セっちゃんも頑張れば、これくらいできるって!」


(できるか! 物理法則違反しとるやろ! あんた、重力無視して動いとったで!)


「昔、セっちゃんもキャッチボールできてたじゃん!」


(小学生の時の話と、今の超人プレイを一緒にすな! レベルが違いすぎるわ!)


 でも、私には分かった。

 今のは、ただ運動神経がいいというレベルの話じゃない。

 好奇心と、ほんの少しの恐怖心。私は、無意識のうちに、ユズに向かってスキルを発動させていた。


(【情報視】!)



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【対象情報:解析失敗】

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【警告】:情報の一部がブロックされています

【名前】:天海ユズ(あまみ ゆず)

【種族】:Human...?

【ステータス】:Unknown


【解析可能な情報】

 ・身体能力:A+

 ・潜在魔力:S

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 私の視界に、ユズのデータが流れ込んでくる。


(……は?)




幼なじみユズ登場!

でも、ただの幼なじみじゃなかった!?

長くなったので分割しました!

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