ワームの巣!こんなかわいいオスがいるか?!バーサークシフト、レベル1よっ!!
アルマの溶解液、もとい服を溶かすポーションにより、服が解け、肌が露わになったリーゼは、まだわずかにからまった糸を引きちぎりながらライアンとアルマに叫んだ。
「このままじゃ埒が明かない! 巣を叩くわよ!」
もがくリーゼを尻目に、ライアンさんはまじまじとリーゼの身体を見つめる。特段いやらしい目つきで。リーゼの必殺のげんこつ!
「こんのお馬鹿っ!」
左手で胸を押さえ渾身のげんこつでライアンさんの頭をどつく。真っ赤になったお姉ちゃんの顔は僕にとって大好物だ。はい。至高(昇天)涎を垂らしながらお姉ちゃんの後をついていく僕とライアンさん。襲い掛かるワームをなぎ倒しながら、ダンジョンの奥へ奥へと進んでいく。すると、天井をも覆いつくしそうな糸が道中に張り付き、異様な雰囲気を醸し出していた~
「親玉が近い! 覚悟しておきなさい!」
しばらく進むと大広間に出た。
「ここが……ワームの巣?」
僕がそう首を傾げていると、部屋の奥から何やら異質な気配を感じとる。奥の暗闇から姿を現したのは、とても肌が白く、鼻が通った顔立ち、頭の頂点には王冠をかぶった女性が出て来た。周りと背後には多数のワームたち。なんとなくわかる。この人は女王だ。ワームの群れが僕たちに襲い掛かろうとするーその瞬間だった。
「よさぬか! おまえたち!!」
想像していた声とはかけ離れたとても低い声でワームたちに命令したのは、女王だった。ザザザ!ワームたちが一斉に後ろに下がり隊列を作る。
「この女王ワーム、人語を解するの……?」
女王が喋ったことに驚くリーゼたち。
「これ以上、子供たちを倒さないで欲しいのです……」
悲しい顔でそう言う女王だが、リーゼはきつい口調で返す。
「ならなぜ私たちを襲う! ワームは基本おとなしいはずだ!」
鎌をカツン!と地面に付きフルフルしている。間違いない。これは怒っている。だがそんなお姉ちゃんもすごいかわいいのだ。
「そ、それは……」
悲しげな表情がさらに深くなる。
「どうやら何か訳アリのようね? いいわ! 話してみてちょうだい!」
すると、女王が意を決して口を開いた。
「実は私のつがいのオスが、この階層のボスに捕らえられているのです……あなたたちを襲ったのも、オスがいないせいで働きワームたちがピリピリしていたのでしょう」
衝撃の事実である。やはりクエスト発生のアイコンがリーゼの頭上に出て来た。
「クエストが発生しました」
それを聞いてきょとんとしていたリーゼは後にニヤケ顔に変わり、
「じゃあ、そのオスを連れてきたらこの階層では襲われないワケね?」
それを聞いた女王は涙ぐんでお願いした。
「お願いします! ボスからオスを取り返してきてください!」
場面は変わりボス部屋前~
「準備はいい? あんたたち……」
ゴゴゴゴとボス部屋の扉を開けるリーゼとライアン。ゴクリと唾を飲み汗が頬を伝う。
「……誰も、いない?」
誰もいないように見えたボス部屋だが、確かに人影がチラリと見えたことを弟のアルマは見逃さなかった。
「あそこに誰かいるよ! お姉ちゃん! ライアンさん!」
なんとそこにはめっちゃかあいい男の娘が一人ポツンとこちらを涙目でうるみながら中央にプルプルと屈んでいる。それにはリーゼもたまらなく頬を赤らめてでへへとにやけた。口角が上がりにやける姉を見ながら、アルマは一人ムスッとしヤキモチを焼いていた。
「こんなかわいい男の子がいるわけ……」
そう言いながらその子に近づいた瞬間、天井からその子めがけて鉄檻が降って来た。ドゥーハハハと笑い声が聞こえると奥の暗闇から赤黒いミノタウロスが出て来たのだ。
「ワームのオスは渡さん!」
こいつも人語を解する。そのことに驚く……ん?ワームのオス?あのかわいくてうるうるしてて涙目の男の娘が?リーゼがその子を解放しなさいとミノタウロスに叫ぶが、
「俺はこの子とイチャラブしたいのだ! おまえらには絶対わたさない!」
そうミノタウロスは強い口調で返してきた。
「いいシュミしてるじゃないの……!」
とつぶやくと共に、鎌を出し戦闘準備するリーゼ。ライアンも剣を抜き盾を構える。僕はアシストの準備だ。リーゼは弟のアルマに聞こえないようにボソッと「バーサークシフト、レベル1」と呟くと、体が一瞬緑色に光り輝いた。
「少しは楽しませてくれそうだな?」
ミノタウロスは大きな鉄斧を構えた。かあいい男の娘を賭けた闘いが、今始まろうとしていたー!
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