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完璧令嬢は今日も必死です  作者: 周音


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第8話 権力の渦

 十一歳になった私は、エーデル公爵家への訪問を重ねていた。


 そして――公爵家の内情を、より深く知ることになった。


「エリアナ様、こちらへどうぞ」


 案内されたのは、豪華な応接室。


 そこには、レオンの叔母――ベアトリス夫人が待っていた。


「エリアナ様、お久しぶりですわ」


 優雅に微笑む彼女。


 でも、その目は冷たい。


「お招きいただき、ありがとうございます」


 完璧な所作でお辞儀をする。


『……何の用だろう』


 レオンは、今日は不在だ。わざわざ彼がいない日を選んで呼び出された。


「お茶をどうぞ」


 勧められた紅茶に口をつける。


「エリアナ様、あなたはレオンの婚約者として、とても素晴らしい方ですわ」


「もったいないお言葉です」


「でも……少し、心配なこともありますの」


 ベアトリスが真剣な表情になる。


「レオン、最近変わりましたわね。あの冷たかった子が、笑顔を見せるなんて」


「……それは、良いことでは?」


「ええ、もちろん。でも、それがあなただけでなく、あの平民の娘にも向けられているとしたら?」


『……来た』


 エマのことだ。


「エマは、いい子です」


「そうかもしれませんわ。でも、平民が公爵家に関わることは、問題ですの」


 ベアトリスが一歩踏み込んでくる。


「エリアナ様、あなたは賢い方。わかっているはずですわ」


「何をですか?」


「レオンを守るためには、不適切な関係を断つ必要がある、ということを」


『……エマとの関係を切れ、と言っているのか』


「私には、できません」


 きっぱりと答える。


「あら、なぜ?」


「エマは私の友人です。そして、レオンが誰と仲良くするかは、彼が決めることです」


「……強情ですわね」


 ベアトリスの笑顔が消えた。


「では、こう考えてはいかがですか?もし、あなたがエマとの関係を切れば、私はレオンを次期公爵として全力で支援します」


「……それは」


「でも、拒否するなら――私は、リオンを推すことになりますわ」


 リオン。レオンの弟。


 原作では、彼が次男派に担がれて、兄と対立することになる。


「脅しですか?」


「脅しではありませんわ。選択肢を示しているだけです」


 ベアトリスが冷たく笑う。


「よく考えてくださいな、エリアナ様。あなたの選択が、レオンの未来を決めるのですから」


 公爵家を後にして、馬車の中で考え込んでいた。


『……厄介だ』


 ベアトリスの言葉は、脅しではあるけれど、現実でもある。


 公爵家の権力闘争に、私も巻き込まれている。


「お嬢様、お顔が優れませんわ」


 マルタが心配そうに言う。


「大丈夫よ。ただ、少し疲れただけ」


 嘘だ。すごく悩んでいる。


 でも――


『私は、エマを切り捨てたりしない』


 友達を裏切るなんて、できない。


 ならば、別の方法を考えなければ。


 翌日、私はレオンに全てを話した。


「……そうか。叔母がそんなことを」


 レオンの表情が曇る。


「ごめんなさい。私のせいで……」


「違う」


 レオンが私の手を取った。


「エリアナのせいじゃない。全部、あの家の問題だ」


「でも……」


「俺は、お前とエマ、両方を守る。家の事情で、大切な人を失いたくない」


 レオンの目が、強い決意に満ちている。


「レオン……」


「それに、俺には考えがある」


「考え?」


「ああ。リオンと話してみる」


「リオンと?」


「あいつは、本当は兄弟仲良くしたいんだ。ただ、周りに利用されているだけだ」


 レオンが立ち上がる。


「俺が、ちゃんと向き合えば、きっと変わる」


 その姿が、頼もしく見えた。


 数日後、レオンはリオンと話し合いの場を持った。


「兄さん、何の用?」


 リオンが警戒したように聞く。


「リオン、お前は俺のことをどう思っている?」


「……何、急に」


「答えてくれ」


 レオンの真剣な表情に、リオンが戸惑う。


「……嫌いじゃない、よ」


 小さく呟くリオン。


「でも、周りが兄さんと対立しろって言うし……」


「周りは関係ない。お前は、どうしたい?」


「……仲良く、したい」


 リオンが俯く。


「でも、兄さんは完璧で、俺なんか……」


「完璧じゃない」


 レオンがリオンの頭に手を置いた。


「俺も、たくさん失敗してる。お前のことも、ちゃんと見てこなかった」


「兄さん……」


「これから、兄弟として、ちゃんと向き合おう」


 レオンが優しく微笑む。


 リオンの目に、涙が浮かんだ。


「……うん」


 二人が、握手を交わした。


 それを見ていた私は、胸が熱くなった。


『……レオン、すごい』


 原作では、最後まで対立したままだった二人。


 でも、今は――変わった。


 その夜、ベアトリス夫人に呼び出された。


「……何のようですか?」


「あら、聞いていないのですか?レオンとリオンが和解したそうですわ」


 ベアトリスの表情が、険しい。


「存じております」


「……あなた、まさか」


「私は何もしていません。レオンが、自分で決めたことです」


 きっぱりと答える。


 ベアトリスが、悔しそうに唇を噛んだ。


「……まあ、いいですわ。まだ終わったわけではありませんもの」


「どういう意味ですか?」


「いずれわかりますわ。では、失礼しますわね」


 ベアトリスが去っていく。


『……まだ何か企んでる』


 でも、今は――レオンとリオンが和解したことが嬉しい。


 一歩ずつ、未来を変えている。


「エリアナ」


 振り向くと、レオンが立っていた。


「ありがとう。お前のおかげで、リオンと話せた」


「私は何も……」


「いや、お前がいてくれたから、俺は変われた」


 レオンが私の手を取る。


「これからも、一緒にいてくれ」


「……うん」


 握り返した手が、温かかった。

次回予告:

レオンとリオンの和解に、周囲は驚愕する。しかし、それは同時に、新たな敵を作ることでもあった。マリアたちに加え、公爵家内部からも圧力が。そして、ついに「あの人」が動き出す――

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