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完璧令嬢は今日も必死です  作者: 周音


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第39話 旅路の果てに

 引退から一年。


 私たち家族は、王国中を旅していた。


「ママ、見て!あそこに学校がある!」


 ルナが、馬車の窓から身を乗り出す。


「危ないわよ、ルナ」


「ごめんなさい」


 ルナが座り直す。


「でも、本当にたくさん学校があるね」


「ええ。私たちが作った学校よ」


 誇らしい気持ちになる。


 各地を回って、実感する。


 世界は、確実に変わっている。


 最初に訪れたのは、北部のグランフェルト地方。


 あの保守的だった伯爵が治める土地。


「エリアナ様!」


 バルトロメウス伯爵が、笑顔で迎えてくれた。


「お久しぶりです」


「ようこそ!さあ、学校を見てください!」


 伯爵に案内された学校は――


 立派な建物で、子供たちが楽しそうに学んでいた。


「すごい……」


「でしょう?」


 伯爵が誇らしげに言う。


「今では、この地方の識字率は八十パーセントを超えました」


「そして、犯罪はほとんどなくなりました」


 伯爵が私を見る。


「全て、あなたのおかげです」


「いいえ、伯爵が協力してくださったからです」


「いやいや」


 伯爵が笑う。


「あなたが、この頑固者を変えてくれたんです」


 授業を見学すると、子供たちが一生懸命勉強している。


「あの子は、うちの孫なんです」


 伯爵が、一人の少女を指す。


「読み書きができるようになって、今では本が大好きで」


「将来は、教師になりたいそうです」


「素敵ですね」


「ええ。私も、応援しています」


 伯爵が微笑む。


「時代は変わりました。そして、それは良いことだと、今では思います」


 別れ際、伯爵が言った。


「エリアナ様、ありがとうございました」


「私の人生を、変えてくれて」


「こちらこそ、ありがとうございます」


 次に訪れたのは、隣国エルデンハイム。


「エリアナ!」


 アメリアが、城の前で待っていてくれた。


「アメリア!」


 久しぶりの再会に、抱き合う。


「元気そうね」


「あなたもよ」


 アメリアが、ルナを見る。


「この子が、噂のルナちゃんね」


「はい!」


 ルナが元気に答える。


「私、ルナです!」


「可愛いわね」


 アメリアが微笑む。


「私にも、娘がいるのよ」


「え?」


「ええ。三歳になるの」


 アメリアが嬉しそうに言う。


「名前はエリアナ。あなたにちなんで名付けたわ」


「アメリア……!」


 感動で、涙が出そうになる。


「ありがとう」


「こちらこそ」


 アメリアが私の手を握る。


「あなたは、私の人生を変えてくれた」


「だから、その名前を娘に」


 エルデンハイムの学校も、素晴らしかった。


 貴族も平民も、一緒に学んでいる。


「これが、私たちの夢だったわね」


 アメリアが言う。


「ええ」


 二人で、子供たちを見守る。


「でも、まだまだやることはあるわ」


 アメリアが真剣な顔になる。


「次は、医療の平等化、労働環境の改善……」


「あなたみたいね」


 私が笑うと、アメリアも笑った。


「あなたに影響されたのよ」


「お互い様ね」


 二人で微笑み合う。


 改革は、続いていく。


 私たちが始めたことを、次の世代が引き継いでいく。


 旅の途中、小さな村に立ち寄った。


「ここにも、学校があるのね」


 小さな木造の建物。


 でも、子供たちの笑い声が聞こえる。


「見学してもいいですか?」


 村長に聞くと、快く迎えてくれた。


 教室に入ると――


 若い女性教師が、熱心に教えていた。


「では、次は算数です。1+1は?」


「2!」


 子供たちが元気に答える。


 授業が終わった後、教師に話しかけた。


「素敵な授業でしたね」


「ありがとうございます!」


 教師が嬉しそうに言う。


「実は、私も平民学校の卒業生なんです」


「そうなんですか?」


「はい。エリアナ様が作った学校で学びました」


 教師が目を輝かせる。


「あの時、教育を受けられて、人生が変わりました」


「だから、今度は私が、子供たちに教えたいんです」


「素晴らしいわ」


 涙が溢れる。


「あなたみたいな人がいてくれて、嬉しい」


「いえ、エリアナ様こそ」


 教師が深くお辞儀をする。


「私の恩人です。ありがとうございます」


 種を蒔いて、花が咲いた。


 そして、その花が新しい種を作っている。


 それを、この目で見られて幸せだ。


 ある日、小さな町で不思議な出会いがあった。


「エリアナ様?」


 声をかけられて、振り向く。


 そこには――


「トーマスさん!」


 あの時、偽造の真実を証言してくれた書記官。


「お久しぶりです」


 トーマスが微笑む。


「お元気そうで」


「あなたも!今は、何を?」


「実は、教師をしているんです」


 トーマスが照れくさそうに言う。


「あの事件の後、自分の人生を見つめ直しまして」


「そして、教育の道に進むことにしたんです」


「素敵ですね」


「エリアナ様に影響を受けました」


 トーマスが真剣な顔で言う。


「あなたは、正しいことのために戦った」


「私も、そうありたいと思ったんです」


「ありがとうございます」


 握手を交わす。


 人は、変われる。


 それを、改めて実感した。


 半年間の旅を終えて、王都に戻った。


「ただいま」


 屋敷に入ると、懐かしい匂いがする。


「お帰りなさいませ、お嬢様」


 マルタが、涙を流して迎えてくれた。


「マルタ、ただいま」


「お元気そうで、何よりです」


 マルタが嬉しそうに笑う。


 父と母も、喜んでくれた。


「おかえり、エリアナ」


「ただいま、お父様、お母様」


「旅は、どうだった?」


「とても良かったわ。たくさんの人に会えて、たくさんのことを学べた」


「そうか」


 父が微笑む。


「お前は、本当に立派になったな」


「俺の誇りだ」


 アレクも、駆けつけてくれた。


「エリー!おかえり!」


「お兄様!」


「ルナも大きくなったな」


 アレクが、ルナを抱き上げる。


「叔父さん!」


「よし、お土産話を聞かせてくれ」


 家族で、楽しく食事をする。


 温かい時間。


 やっぱり、家が一番だ。


 数日後、エマが訪ねてきた。


「エリアナ様、お帰りなさい!」


「ただいま、エマ」


「実は、報告があるんです」


 エマが嬉しそうに言う。


「新しい法案が可決されました!」


「法案?」


「はい。『職業訓練法』です」


 エマが資料を見せる。


「学校を卒業した後、職業訓練を受けられる制度です」


「これで、もっと多くの人が、専門的な仕事に就けるようになります」


「素晴らしいわ!」


「エリアナ様の改革を、さらに進めた形です」


 エマが誇らしげに言う。


「次の世代として、頑張っています」


「ありがとう、エマ」


「いえ、私こそ」


 エマが微笑む。


「エリアナ様がいなければ、今の私はいません」


 二人で抱き合う。


 バトンは、確実に渡されている。


 そして、さらに発展している。


 それが、何より嬉しい。


 ある夜、レオンと二人で屋上に上がった。


「綺麗ね」


 星空が、美しく輝いている。


「ああ」


 レオンが、私を抱き寄せる。


「エリアナ、幸せか?」


「ええ、とても」


「良かった」


 レオンが微笑む。


「俺も、幸せだ」


「お前と出会えて、本当に良かった」


「私も」


 二人で、星を見上げる。


「ねえ、レオン」


「何だ?」


「私たち、良い人生を送れたわね」


「ああ」


「世界を変えて、家族を持って、仲間に恵まれて」


 私は、レオンを見る。


「これ以上、何を望むことがあるかしら」


「そうだな」


 レオンが私を見つめる。


「でも、一つだけ」


「何?」


「これからも、ずっと一緒にいてくれ」


 レオンが、優しく微笑む。


「老いても、病めても」


「もちろん」


 私も微笑む。


「死が二人を分かつまで」


「いや」


 レオンが私を抱きしめる。


「死んでも、一緒だ」


「レオン……」


 涙が溢れる。


 でも、幸せな涙。


「ありがとう」


「こちらこそ」


 二人で抱き合う。


 長い旅路だった。


 転生して、断罪を避けて、世界を変えた。


 たくさんの困難があった。


 でも、乗り越えられた。


 仲間がいたから。


 愛する人がいたから。


「ママ!パパ!」


 下から、ルナの声が聞こえる。


「何してるの!?」


「今、降りるわ!」


 レオンと手を繋いで、階段を降りる。


 ルナが、笑顔で待っている。


「一緒に、お菓子食べよう!」


「ええ、行きましょう」


 三人で、居間に向かう。


 家族。


 温かい言葉。


 これが、私の手に入れた宝物。


 そして――


 この幸せを、全ての人に届けることができた。


 それが、私の誇り。


 窓の外、月が優しく照らしている。


 新しい世界。


 平等な世界。


 みんなが笑顔で生きられる世界。


 それを作ることができた。


『ありがとう』


 心の中で、呟く。


 前世の私に。


 この世界に。


 そして、全ての人に。


『本当に、ありがとう』

次回予告:

時は流れ、エリアナは老いていく。しかし、彼女の意志は永遠に受け継がれる。そして、最後の日――彼女は、満ち足りた顔で、人生を振り返る。

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