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完璧令嬢は今日も必死です  作者: 周音


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第30話 外交という試練

 改革が順調に進み始めた頃。


 王宮から、私に召喚状が届いた。


「エリアナ・ローゼン、至急参内せよ」


「また、何かあったのかしら……」


 不安を抱えながら、王宮へと向かった。


 謁見の間で、国王が待っていた。


 そして、その隣には――見慣れない人物が立っていた。


 豪華な服を着た、中年の男性。


「エリアナ・ローゼン、参りました」


 跪くと、国王が優しく言う。


「顔を上げよ、エリアナ」


「はい」


「紹介しよう。こちらは、隣国エルデンハイム王国の外交官、ロベルト卿だ」


「初めまして、エリアナ様」


 ロベルトが優雅にお辞儀をする。


「噂はかねがね伺っております。世界を救った令嬢と」


「もったいないお言葉です」


「さて、エリアナ」


 国王が真剣な顔になる。


「お前に、重要な任務を命じる」


「任務、ですか?」


「ああ。エルデンハイム王国との、外交交渉だ」


「外交交渉!?」


 驚きの声が出てしまう。


「私が、ですか?」


「そうだ。お前は、改革を成功させた。その手腕を、外交でも発揮してほしい」


 国王が続ける。


「実は、エルデンハイム王国も、平民と貴族の格差に悩んでいる」


「そうだったのですか……」


「ええ。そして、あなたの改革を見て、興味を持ったのです」


 ロベルトが説明する。


「我が国の王女、アメリア殿下が、直接あなたにお会いしたいと」


「王女が……?」


「はい。殿下は、改革に熱心な方でして」


 ロベルトが微笑む。


「あなたの話を聞いて、ぜひとも協力関係を築きたいと」


「協力関係……」


「両国が協力すれば、改革はより進む」


 国王が言う。


「そして、それは平和にも繋がる」


「わかりました。お受けします」


 私は、決意を込めて答えた。


「ただし、条件があります」


「条件?」


「はい。レオン・エーデルと、私の仲間たちも同行させてください」


「……良いだろう」


 国王が頷く。


「では、一週間後に出発せよ」


 こうして、私の初めての外交任務が決まった。


 屋敷に戻ると、すぐにみんなを集めた。


「外交交渉!?」


 エマが驚く。


「エリアナ様が!?」


「そうなの。で、みんなにも来てほしいんだけど……」


「もちろん行きます!」


 マリアが即答する。


「エリアナ様一人に、危険なことはさせられません!」


「私たちも!」


 セシルとロザリーも頷く。


「俺も行く」


 リオンが手を挙げる。


「姉様を守らないと」


「私も同行します」


 ヴィクターが言う。


「外交には、情報収集も重要ですから」


「じゃあ、私も!」


 イザベラが微笑む。


「みんな、ありがとう」


 胸が熱くなる。


「では、準備を始めましょう」


 一週間後、私たちは隣国へと向かった。


 馬車は三台。


 私とレオン、エマ。


 マリア、セシル、ロザリー。


 リオン、ヴィクター、イザベラ。


 そして、護衛の騎士たち。


「エリアナ、緊張しているか?」


 レオンが聞く。


「少しだけ」


 正直に答える。


「外交なんて、初めてだもの」


「大丈夫。お前なら、できる」


 レオンが私の手を握る。


「それに、俺たちがいる」


「うん」


 エマも、励ましてくれる。


「エリアナ様なら、絶対上手くいきますよ!」


「ありがとう、エマ」


 三日間の旅を経て、エルデンハイム王国の王都に到着した。


「わあ……すごい……」


 街並みは、私たちの国とは少し違っていた。


 建物がより華やかで、色彩豊か。


「文化が違うんだな」


 レオンが興味深そうに見ている。


「ええ。面白いわね」


 王宮に案内されると、そこには――


 美しい女性が待っていた。


 金色の髪、青い瞳。


 凛とした雰囲気を纏っている。


「ようこそ、エリアナ・ローゼン」


 女性が微笑む。


「私が、アメリア・フォン・エルデンハイムです」


「初めまして、アメリア王女」


 私は、丁寧にお辞儀をする。


「お招きいただき、ありがとうございます」


「いいえ。来ていただいて、嬉しいわ」


 アメリアが私の手を取る。


「あなたの話を聞いて、ぜひお会いしたかったの」


「私も、王女のお話を伺いたく」


「では、お茶をいただきながら、ゆっくりお話ししましょう」


 応接室に案内される。


 そこで、アメリアは改革について詳しく聞いてきた。


「平民学校を開いたんですね」


「はい。まだ一校だけですが、順調に運営されています」


「素晴らしいわ」


 アメリアが目を輝かせる。


「実は、私もこの国で同じことをしたいと考えていたの」


「本当ですか?」


「ええ。でも、父上や重臣たちが反対して……」


 アメリアが少し悲しそうな顔をする。


「この国は、あなたの国より保守的なの」


「そうなんですか……」


「だから、あなたの力を借りたいの」


 アメリアが真剣な目で言う。


「あなたが成功した方法を教えてほしい」


「わかりました」


 私は、詳しく説明し始めた。


 どうやって賛同者を集めたか。


 どうやって反対派を説得したか。


 どうやって資金を集めたか。


 アメリアは、熱心にメモを取っていた。


「なるほど……参考になるわ」


「でも、一番大切なのは」


 私が言う。


「諦めないことです」


「諦めない?」


「ええ。反対されても、妨害されても、諦めずに進み続けること」


 私は、アメリアを見つめる。


「それが、一番大切です」


「……ありがとう」


 アメリアが微笑む。


「あなたと話せて、勇気が湧いてきたわ」


 その夜、歓迎の晩餐会が開かれた。


 豪華な料理が並び、音楽が流れる。


「エリアナ様、すごいですね!」


 エマが興奮している。


「こんな立派な晩餐会、初めてです!」


「私も緊張するわ」


 マリアも、珍しく緊張している。


「隣国の貴族たちが、たくさんいますもの」


「でも、エリアナ様なら大丈夫ですよ」


 セシルが微笑む。


「ええ。エリアナ様は、どんな場でも完璧ですから」


 ロザリーが頷く。


『完璧……か』


 もう、完璧を演じる必要はないのに。


 でも、今日は――外交官として、完璧でいなければならない。


「エリアナ様」


 アメリアが近づいてきた。


「こちらの方を、紹介させてください」


 アメリアの後ろに、立派な髭を蓄えた男性がいる。


「こちらは、我が国の宰相、グスタフ伯爵です」


「初めまして、エリアナ・ローゼン様」


 グスタフが、厳しい目で私を見る。


「噂は聞いております。改革を進めている令嬢と」


「光栄です」


「しかし」


 グスタフの声が、冷たくなる。


「我が国では、そのような改革は不要です」


「……と、おっしゃいますと?」


「我が国は、伝統を重んじる国です。平民と貴族の区別は、神が定めたものです」


 グスタフが腕を組む。


「それを変えようとするのは、神への冒涜です」


「でも、宰相閣下」


 私は、冷静に反論する。


「神は、全ての人間を平等に創造されたのではありませんか?」


「それは――」


「貴族も平民も、同じ人間です。機会が違うだけで」


 私は、グスタフを見つめる。


「その機会を平等にすることは、神の意志に適うことだと思います」


 グスタフが、言葉に詰まる。


「……屁理屈を」


「屁理屈ではありません」


 私は、強く言う。


「これは、正義です」


 周囲が、ざわめく。


 隣国の貴族たちが、私を注視している。


「エリアナ様」


 アメリアが心配そうに見ている。


 でも、私は引かない。


「宰相閣下、もし平民に機会を与えることが間違いだというなら」


 私は、会場の人々を見回す。


「私は、その間違いを証明してみせます」


「証明?どうやって?」


「この場にいる平民の方々に、問題を出します」


 私が宣言すると、会場が静まり返る。


「そして、彼らが貴族と同じように答えられることを、証明します」


「……面白い」


 グスタフが不敵に笑う。


「では、やってみるがいい」


 私は、会場の隅にいる使用人たちに声をかけた。


「すみません、少しだけ時間をいただけますか?」


 使用人たちが、戸惑いながら前に出てくる。


「大丈夫です。怖がらないでください」


 私は、優しく微笑む。


「では、問題です。この国の首都の名前を教えてください」


「え、えっと……エルフェンシュタットです……」


 一人の使用人が、おずおずと答える。


「正解です!」


 拍手が起こる。


「では、次の問題。この国の建国は、何年前ですか?」


「に、二百五十年前……だと思います……」


「正解!」


 さらに、いくつか問題を出す。


 歴史、地理、計算。


 使用人たちは、全て正解した。


「……どういうことだ」


 グスタフが驚いている。


「平民なのに、なぜこんなに知識が……」


「彼らは、独学で勉強したんです」


 私が説明する。


「機会がなくても、学びたいという意志があれば、人は成長できるんです」


 私は、会場を見回す。


「だから、機会を与えてください。平民にも、学ぶ機会を」


「そうすれば、彼らは国の力になります」


 静寂の後――


 拍手が起こった。


 最初は小さかったが、徐々に大きくなる。


 貴族たちの中にも、拍手する者がいる。


「……わかった」


 グスタフが、深くため息をついた。


「お前の主張は、理解した」


「では……」


「ただし、我が国での改革は、我が国のやり方で進める」


 グスタフが私を見る。


「お前の国の真似をするわけではない」


「もちろんです」


 私は、微笑む。


「それぞれの国に、それぞれのやり方があります」


「ふむ……」


 グスタフが、少しだけ表情を和らげた。


「エリアナ・ローゼン、お前は面白い娘だな」


「ありがとうございます」


 晩餐会が終わった後、アメリアが私を抱きしめた。


「エリアナ!ありがとう!」


「え?」


「あなたのおかげで、グスタフ伯爵が改革を認めてくれたわ!」


 アメリアが涙を流している。


「これで、私も改革を進められる!」


「良かった……」


 私も、嬉しくなる。


「一緒に、頑張りましょう」


「ええ!」


 数日後、私たちは帰国の途についた。


 馬車の中で、レオンが言った。


「エリアナ、お前は本当にすごいな」


「そんなことないわ」


「いや、すごい」


 レオンが微笑む。


「隣国まで変えてしまうなんて」


「まだ、変わったわけじゃないわ」


「でも、種は蒔いた」


 レオンが私の手を握る。


「その種は、きっと大きく育つ」


「……そうだといいわね」


 エマも、嬉しそうに言う。


「エリアナ様、本当にお疲れ様でした!」


「ありがとう、エマ」


「次は、どんなことをするんですか?」


「そうね……」


 私は、窓の外を見る。


 青空が、どこまでも広がっている。


「次は、もっと多くの学校を作りたいわ」


「王都だけじゃなく、地方にも」


 みんなが、頷く。


「そうですね!」


「私たちも、協力します!」


 温かい言葉に、胸が満たされる。


 仲間がいる。


 夢がある。


 だから、前に進める。


 帰国すると、国王が私たちを称賛した。


「エリアナ、よくやった」


「ありがとうございます」


「エルデンハイム王国からも、感謝の手紙が届いている」


 国王が手紙を見せる。


「アメリア王女から、直筆でな」


 手紙には、こう書かれていた。


『親愛なるエリアナへ。あなたとの出会いが、私の人生を変えました。これから、私もこの国を変えます。いつか、また会いましょう。友として――アメリア』


「友……か」


 微笑みがこぼれる。


 隣国にも、友ができた。


「エリアナ」


 国王が真剣な顔になる。


「お前の改革は、もはや一国に留まらない」


「はい……」


「これから、さらに多くの国が、お前に注目するだろう」


 国王が私の肩に手を置く。


「大変だろうが、頑張ってくれ」


「はい!」


 こうして、私の外交デビューは成功に終わった。


 そして――


 改革は、国境を越えて広がり始めた。

次回予告:

外交成功で名声を高めたエリアナ。しかし、その裏で新たな陰謀が。保守派の残党が、最後の抵抗を企てる。そして、エリアナの前に、意外な人物が現れ――

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