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完璧令嬢は今日も必死です  作者: 周音


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第28話 改革への第一歩

 新しい日常が始まって二週間。


 学院では、平和な日々が続いていた。


 でも、私は気づいていた。


 世界は変わったけれど、まだ問題は残っている。


「エリアナ様、これを見てください」


 ヴィクターが、新聞を持ってきた。


「これは……」


『平民出身の魔法使い、貴族の嫌がらせで学院を退学』


 記事には、地方の学院で起きた事件が書かれていた。


「ひどい……」


 エマが記事を読んで、顔を歪める。


「こんなこと、まだ続いているんですか……」


「ああ。残念ながら、全ての貴族が変わったわけではない」


 ヴィクターが苦い顔をする。


「むしろ、舞踏会の事件以降、平民への風当たりが強くなっている場所もある」


「どうして?」


 マリアが聞く。


「エリアナ様が世界を変えたのに」


「変化を恐れているんだ」


 レオンが答える。


「貴族の特権が失われることを、恐れている者たちがいる」


「そんな……」


「でも、これは予想していた」


 私が言う。


「世界が変わっても、人の心はすぐには変わらない」


 みんなが、私を見る。


「だから、私たちが動かないと」


「動く?」


「ええ。具体的に、改革を始めるの」


 私は、みんなを見回す。


「貴族と平民の格差を、なくすために」


 その日の放課後、私たちは秘密会議を開いた。


 場所は、旧図書館。


 集まったのは、私、レオン、エマ、リオン、ヴィクター、イザベラ、マリア、セシル、ロザリー、そしてアレク。


「では、始めましょう」


 私が口を開く。


「今日集まってもらったのは、この王国を変えるため」


「変える……?」


 エマが不安そうに聞く。


「はい。貴族と平民が、平等に生きられる社会を作るために」


 私は、準備してきた資料を広げる。


「まず、現状の問題点を整理しましょう」


「第一に、教育の格差」


 ヴィクターが挙げる。


「貴族は幼い頃から良質な教育を受けられるが、平民は基礎的な読み書きすら学べない者が多い」


「第二に、職業選択の制限」


 イザベラが続ける。


「平民は、限られた職業にしか就けない。才能があっても、生かせない」


「第三に、法律の不平等」


 アレクが重々しく言う。


「同じ罪でも、貴族と平民では刑罰が異なる。これは明らかな差別だ」


 次々と、問題点が挙がる。


「では、どうすれば変えられるか」


 私が問いかける。


「まず、教育から始めるべきだ」


 レオンが提案する。


「平民にも、無償で教育を受けられる機関を作る」


「でも、資金が……」


 セシルが心配そうに言う。


「貴族たちが、協力してくれるでしょうか?」


「説得が必要だな」


 アレクが腕を組む。


「でも、エリアナの実績があれば、話は通しやすいだろう」


「私の実績?」


「ああ。お前は、世界を救った英雄だ」


 アレクが微笑む。


「その影響力を使えば、改革も進めやすい」


「なるほど……」


「それに」


 ヴィクターが言う。


「私は元生徒会長だった。その人脈を使えば、賛同者を集められるかもしれない」


「私も協力します!」


 マリアが手を挙げる。


「うちの家は、商人と取引が多いんです。平民の声を集められます」


「私たちも!」


 セシルとロザリーも頷く。


「では、具体的な計画を立てましょう」


 私は、紙を取り出す。


「まず、第一段階。賛同者を集める」


「第二段階。王宮への提案書を作成」


「第三段階。公開討論会を開き、世論を動かす」


「そして、第四段階。法案の提出」


 レオンが続ける。


「時間はかかるが、確実に進めよう」


「はい!」


 こうして、私たちの改革運動が始まった。


 最初の一週間は、賛同者集めに奔走した。


「エリアナ様、こちらの貴族は改革に賛成してくれました!」


 エマが嬉しそうに報告する。


「良かった!」


「でも、こちらは反対だそうです……」


 マリアが残念そうに言う。


「仕方ないわ。全員を説得するのは無理だもの」


 それでも、少しずつ賛同者は増えていった。


 特に、若い貴族たちは改革に前向きだった。


「エリアナ様の考えに賛同します!」


「私たちの世代で、世界を変えましょう!」


 希望が、見えてきた。


 でも、当然、反対派もいた。


「エリアナ・ローゼン、お前は貴族の品位を貶めている!」


 年配の貴族が、私を睨みつける。


「品位を貶めている?」


「そうだ!平民と平等だと?笑わせるな!」


「なぜ、笑わせるのですか?」


 私は、冷静に聞き返す。


「平民にも、才能ある者はたくさんいます。エマがそうです」


「たまたまだ!例外に過ぎない!」


「例外ではありません」


 私は、資料を見せる。


「この数字を見てください。平民出身でも、教育を受けた者の多くが優秀な成績を収めています」


「それは……」


「才能は、生まれで決まるものではありません。機会があれば、誰でも輝ける」


 私は、真っ直ぐに貴族を見る。


「それを証明したいんです」


 貴族は、言葉に詰まった。


 そして――


「……わかった。お前の計画を、見守ろう」


 渋々だが、反対を取り下げてくれた。


 一ヶ月後、私たちは王宮への提案書を完成させた。


『平民教育推進法案』


 平民にも無償で教育を提供する、画期的な法案だ。


「これを、王に提出します」


 私が宣言すると、みんなが緊張した顔になる。


「大丈夫ですか?」


 エマが心配そうに聞く。


「王様が、認めてくれるでしょうか……」


「わからない。でも、やるしかないわ」


 翌日、私たちは王宮を訪れた。


 謁見の間で、国王が待っていた。


「エリアナ・ローゼン、よく参った」


 国王は、威厳のある声で言う。


「お前の提案書、読ませてもらった」


「……いかがでしたか?」


「興味深い」


 国王が微笑む。


「平民にも教育を。良い考えだ」


「では……!」


「だが、問題もある」


 国王の表情が真剣になる。


「資金、教師、施設。全てが不足している」


「それは……」


「どうやって、それらを確保するつもりだ?」


 鋭い質問。


 でも、私たちは準備していた。


「まず、資金については」


 アレクが前に出る。


「ローゼン侯爵家が、初期費用を負担します」


「ほう」


「そして、賛同する貴族たちからも、寄付を募ります」


「教師については」


 ヴィクターが続ける。


「学院の卒業生や、引退した教師たちに協力を仰ぎます」


「施設については」


 レオンが言う。


「エーデル公爵家が、所有する空き建物を提供します」


 国王が、驚いたように目を見開く。


「お前たち……そこまで準備していたのか」


「はい」


 私が答える。


「これは、私たちの本気です」


 国王が、しばらく黙っていた。


 そして――


「わかった。この法案を、承認しよう」


「!?」


「本当ですか!?」


「ああ。ただし、条件がある」


 国王が私を見る。


「この改革、お前が責任者となれ」


「私が……?」


「そうだ。お前は、世界を変えた少女だ。ならば、この改革も成功させられるだろう」


 国王が微笑む。


「頼んだぞ、エリアナ・ローゼン」


「……はい!」


 こうして、平民教育推進法案は承認された。


 王宮を出ると、みんなが喜びを爆発させた。


「やった!やりましたね!」


 エマが飛び跳ねる。


「エリアナ様、すごいです!」


「みんなのおかげよ」


 私も、嬉しくて涙が出そうだった。


「これで、平民の子供たちも、教育を受けられる……!」


「ああ。新しい時代の始まりだ」


 レオンが私の肩を抱く。


「お前が、始めたんだ」


「違うわ。私たちが、一緒に始めたの」


 みんなで、抱き合う。


 長い戦いの、第一歩。


 でも、確実な一歩だった。


 数週間後、最初の平民学校が開校した。


 場所は、王都の郊外。


 エーデル家が提供した建物を改装した、小さな学校だ。


「エリアナ様!」


 子供たちが、元気に駆け寄ってくる。


「お姉ちゃん、ありがとう!」


「これで、僕たちも勉強できる!」


 子供たちの笑顔を見て、涙が溢れた。


「良かった……本当に、良かった……」


「エリアナ様」


 エマが隣に来る。


「これ、私の夢でした」


「え?」


「平民の子供たちが、貴族と同じように勉強できる世界」


 エマが微笑む。


「エリアナ様が、それを実現してくれました」


「私だけじゃないわ。みんなで、実現したの」


 二人で、子供たちを見守る。


「これから、もっと学校を増やしましょう」


「うん!」


「そして、いつか――貴族も平民も関係ない、本当の平等な世界を」


「はい!」


 開校式が始まる。


 私は、壇上に立った。


「皆さん、本日はお集まりいただき、ありがとうございます」


 集まった人々――子供たち、その親たち、教師たち、そして賛同してくれた貴族たち。


「この学校は、新しい時代の象徴です」


 私は、みんなを見回す。


「ここでは、貴族も平民も関係ありません。学びたいという気持ちがあれば、誰でも歓迎します」


 拍手が起こる。


「これから、たくさんのことを学んでください。そして、自分の夢を見つけてください」


 子供たちが、目を輝かせている。


「あなたたちは、この国の未来です。だから――」


 私は、微笑む。


「思い切り、羽ばたいてください!」


 大きな拍手が、会場を包んだ。


 式の後、一人の老人が近づいてきた。


「エリアナ様」


「はい?」


「私は、平民の教師です。長年、子供たちに読み書きを教えてきました」


 老人が頭を下げる。


「でも、資金がなくて、十分な教育ができませんでした」


「……」


「この学校ができて、本当に嬉しい」


 老人が涙を流す。


「ありがとうございます。本当に、ありがとうございます」


「いえ、こちらこそ」


 私も、涙をこらえる。


「これからも、よろしくお願いします」


「はい!」


 帰りの馬車の中、レオンが言った。


「エリアナ、お前は本当にすごいな」


「そんなことないわ」


「いや、すごい」


 レオンが私の手を握る。


「お前は、世界を救っただけじゃない。未来を作っている」


「レオン……」


「俺は、そんなお前を誇りに思う」


 レオンが微笑む。


「そして、これからも、ずっと支え続ける」


「ありがとう」


 私も、レオンの手を握り返す。


「一緒に、未来を作りましょう」


「ああ」


 二人で、窓の外を見る。


 夕日が、美しく街を照らしていた。


 新しい時代が、始まっている。


 まだまだ、課題は山積みだ。


 でも――


 仲間がいる。


 希望がある。


 だから、きっと大丈夫。


 そう信じて、私は前を向く。

次回予告:

平民学校の開校は成功したが、新たな問題が浮上する。保守派貴族たちの反発、そして学校への妨害工作。エリアナたちは、どう立ち向かうのか――

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