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完璧令嬢は今日も必死です  作者: 周音


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第25話 友の危機

 舞踏会まで、十日。


 最終的な作戦会議を開いているとき、事件は起きた。


「エマが、いない!?」


 マリアが慌てた様子で駆け込んできた。


「どういうこと!?」


「今朝から、学院に来ていないんです!」


「エマが欠席?」


 エマは、一度も無断欠席をしたことがない。


「下宿先にも、いないそうです!」


 セシルが青ざめた顔で言う。


「まさか……」


 レオンと私は、顔を見合わせた。


『誘拐!?』


「すぐに探そう!」


 私たちは、手分けして街中を探し始めた。


 レオンとリオンは北側、マリアとロザリーは南側、セシルとヴィクターは東側。


 私とアレクは、西側を探す。


「エマ!どこにいるの!?」


 声を上げながら、路地裏まで探す。


 でも、どこにもいない。


「くそっ!どこに……!」


 その時、アレクが何かに気づいた。


「エリー、あれを見ろ」


 路地の壁に、何か文字が書かれている。


 魔法で書かれた、光る文字。


『エリアナ・ローゼンへ。友人の命が惜しければ、一人で旧教会へ来い。日没まで。』


「旧教会……!」


 街の外れにある、廃墟となった教会だ。


「罠だ」


 アレクが私の腕を掴む。


「行かせるわけにはいかない」


「でも、エマが……!」


「だからこそだ!お前が捕まれば、エマも助からない」


「……」


 アレクの言葉は正しい。


 でも――


「お兄様、私は行く」


「エリー!」


「大丈夫。一人じゃない」


 私は、通信用の魔道具を取り出す。


「みんなに連絡して。作戦を変更するわ」


 すぐに、全員に連絡が回った。


 旧教会の近くに集合。


 そして、新しい作戦を立てる。


「私が、おとりとして教会に入る」


「危険すぎる!」


 レオンが反対する。


「でも、他に方法がないわ」


 私は、みんなを見回す。


「レオンとリオンは、教会の裏口から侵入。マリア、セシル、ロザリーは、教会の周りを監視」


「ヴィクターとイザベラは、魔力妨害の魔法陣を張って。敵の逃走を防ぐため」


「アレクは、騎士団に連絡を。証拠を押さえたら、すぐに踏み込めるように」


 全員が、真剣な顔で頷く。


「でも、エリアナ」


 レオンが私の手を握る。


「もし危険だと思ったら、すぐに逃げろ」


「うん」


「約束だ」


「約束する」


 レオンと抱き合う。


「絶対に、無事に戻ってこい」


「うん。あなたのところに、必ず」


 こうして、作戦が始まった。


 日没前、私は一人で旧教会の前に立った。


 古びた石造りの建物。


 窓は割れ、扉は朽ちている。


『エマ、待ってて』


 深呼吸をして、扉を開ける。


 中は、薄暗い。


 祭壇の上に、誰かが縛られている。


「エマ!」


 駆け寄ろうとした瞬間――


「動くな」


 冷たい声が響いた。


 祭壇の影から、人物が現れる。


「よく来たな、エリアナ・ローゼン」


 その声は――


「ベアトリス夫人!」


 レオンの叔母が、冷たい笑みを浮かべて立っていた。


「予想通りね。友人のために、一人で来るなんて」


「エマを、解放してください!」


「それは、お前次第だ」


 ベアトリスが、魔法の杖を取り出す。


「大人しく、魔力を差し出せ」


「魔力を?」


「そうだ。お前の全属性魔法の魔力。それがあれば、儀式が完成する」


「運命改変の儀式……!」


「よく知っているな」


 ベアトリスが祭壇に近づく。


「私の父は、無実の罪で処刑された。全ては、あの腐った重臣たちのせいだ」


「でも、あなたの父親も――」


「黙れ!」


 ベアトリスが叫ぶ。


「父は、騙されただけだ!重臣たちに利用されて!」


 彼女の目に、涙が浮かんでいる。


「だから、私は復讐する。この世界を変えて、父の無実を証明する!」


「世界を変えても、過去は戻らない!」


「うるさい!」


 ベアトリスが魔法を放つ。


 とっさに防御魔法で防ぐ。


「お前のような、何不自由なく育った令嬢に、私の苦しみがわかるか!」


「わかります!」


 私は、叫び返す。


「私だって、苦しんできた!完璧を演じて、必死に生きてきた!」


「嘘を言うな!」


「本当です!」


 涙が溢れる。


「私は、ずっと怖かった!断罪されるのが、孤独になるのが!」


「……」


「でも、仲間ができた。レオン、エマ、みんな!」


 私は、エマを見る。


「だから、今度は私が守る!大切な仲間を!」


 魔力を解放する。


 全属性の魔力が、私を包む。


「ベアトリス夫人、あなたは間違っている!」


「黙れ!」


 ベアトリスが最大の魔法を放ってくる。


 闇の槍が、私に向かって飛ぶ。


「全属性――融合!」


 全ての属性を融合させて、光の盾を作る。


 闇の槍が、盾に当たって消滅する。


「なんだと!?」


「ベアトリス夫人、あなたの父親が本当に望んでいたことは、復讐じゃない!」


 私は、一歩前に出る。


「あなたの幸せだったはず!」


「お前に、何がわかる!」


「わかります!だって、私の父も、私の幸せを一番に考えてくれているから!」


 ベアトリスの動きが、止まる。


「父親は、娘の幸せを願うもの。あなたの父親も、きっと――」


 その時、教会の扉が開いた。


「その通りだ、ベアトリス」


 現れたのは――ダミアン教師だった。


「ダミアン!?」


 ベアトリスが驚く。


「なぜ、お前が!?」


「私は、グレゴール・ダルトンの弟子だった」


 ダミアンが静かに言う。


「彼は、死ぬ前に私に言った。『娘を頼む』と」


「嘘だ!」


「本当だ。グレゴールは、お前の幸せを願っていた」


 ダミアンがベアトリスに近づく。


「復讐ではなく、前を向いて生きてほしい、と」


「父が……そんなことを……?」


 ベアトリスが膝をつく。


「なぜ、今まで言わなかった!」


「お前が、復讐に囚われていたからだ」


 ダミアンが優しく言う。


「でも、今なら間に合う。まだ、やり直せる」


「やり直す……?」


 ベアトリスが俯く。


「でも、私は……こんなことをして……」


「大丈夫」


 私が、ベアトリスに手を差し伸べる。


「まだ、遅くない。一緒に、前を向きましょう」


「エリアナ……」


 ベアトリスが、涙を流した。


「私……私は……!」


 その時――


 教会の奥から、別の声が響いた。


「感動的だな」


 低く、重厚な声。


 影から、複数の人物が現れた。


 宮廷の礼服を着た、老人たち。


「重臣……!」


「そうだ。我々が、真の黒幕だ」


 その中の一人が、不敵に笑う。


「ベアトリス、お前は利用されていただけだ」


「な……!」


「お前の復讐心を利用して、エリアナ・ローゼンをおびき出した」


 重臣たちが、魔法陣を展開する。


「さあ、儀式を始めよう。運命改変の儀式を!」


 魔法陣が、教会全体を覆う。


「まずい!」


 ダミアンが叫ぶ。


「エリアナ、逃げろ!」


 でも、遅かった。


 魔法陣が発動し、私の体が動かなくなる。


「くっ……!」


「無駄だ。この魔法陣は、全属性魔法の使い手を拘束するために作られた」


 重臣が近づいてくる。


「さあ、お前の魔力を我々に捧げろ」


「させない!」


 その時、教会の裏口が破られた。


「エリアナ!」


 レオンとリオンが飛び込んでくる。


「レオン!」


「お前たち……!」


 重臣たちが驚く。


「教会を包囲している!」


 アレクの声が外から聞こえる。


「騎士団も来ている!大人しく投降しろ!」


「ちっ……!」


 重臣たちが動揺する。


 その隙に、レオンが私に駆け寄った。


「大丈夫か!?」


「うん!でも、この魔法陣……!」


「任せろ」


 レオンが魔力を解放する。


「氷の魔法――」


 巨大な氷の槍が、魔法陣を破壊する。


 拘束が解け、体が動くようになった。


「ありがとう、レオン!」


「当然だ」


 レオンが私を抱きしめる。


「お前を守るって、約束しただろ」


「うん……!」


 そして、私たちは重臣たちと対峙した。


「逃げられると思うな!」


 マリア、セシル、ロザリーも教会に入ってくる。


「囲んだわ!」


 ヴィクターとイザベラも、魔力妨害の魔法陣を完成させていた。


「もう、逃げられませんよ」


「くそっ……!」


 重臣たちが最後の抵抗を始めようとした時――


 ベアトリスが立ち上がった。


「やめなさい」


「ベアトリス!?」


「もう、十分です」


 ベアトリスが重臣たちの前に立つ。


「私は、利用されていた。復讐に囚われて、大切なことを忘れていた」


 ベアトリスが振り返る。


「エリアナ、ダミアン、ありがとう。私を、目覚めさせてくれて」


 そして、彼女は重臣たちを魔法で拘束した。


「!?」


「これで、終わりです」


 ベアトリスが静かに言う。


「父の復讐ではなく、正義のために」


 こうして、事件は解決した。


 重臣たちは逮捕され、エマも無事に救出された。


「エリアナ様……!」


 エマが泣きながら抱きついてくる。


「怖かった……でも、信じてました!エリアナ様が助けてくれるって!」


「ごめんね、心配かけて」


「ううん!エリアナ様のおかげで、助かりました!」


 みんなで、抱き合う。


 長い戦いが、終わった。


 でも――


「まだ、終わっていない」


 ダミアンが言う。


「舞踏会は、まだこれからだ」


「え?」


「重臣たちは捕まった。でも、システムの修正力は残っている」


 ダミアンが真剣な顔で言う。


「断罪イベントは、まだ起こる可能性がある」


「なら……」


「ああ。最後まで、気を抜くな」


 そうだ。


 まだ、油断はできない。


 舞踏会まで、あと一週間。


 最後の戦いが、待っている。

次回予告:

重臣たちを倒し、エマを救出したエリアナたち。しかし、ダミアンの警告通り、システムの修正力はまだ働いている。そして、ついに運命の舞踏会の日が――

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