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完璧令嬢は今日も必死です  作者: 周音


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第20話 月下の誓い

 魔力吸収事件から二週間が経った。


 学院には、再び平和が戻っていた。


 ヴィクターは謹慎処分を受けたが、完全に追放されることはなかった。


 多くの生徒が、彼の更生を信じてくれたからだ。


「エリアナ様のおかげです」


 ヴィクターが、図書館で私に頭を下げた。


「私は、許されるはずがないと思っていました。でも……」


「みんな、わかってくれたのよ。あなたの苦しみを」


「エリアナ様……」


 ヴィクターの目に、涙が浮かぶ。


「私、必ず償います。そして、あなたが目指す世界を、一緒に作ります」


「ありがとう、ヴィクター」


 彼と握手を交わす。


 一人、また一人と、仲間が増えていく。


「エリアナ様!」


 エマが駆け寄ってくる。


「レオン様が、お呼びですよ!」


「レオンが?」


「はい!中庭で待っているそうです!」


 何だろう?


 首を傾げながら、中庭へ向かった。


 中庭には、レオンが一人で立っていた。


「レオン、どうしたの?」


「エリアナ」


 レオンが振り向く。


 その表情が、いつもより少し緊張しているように見える。


「今夜、時間があるか?」


「今夜?」


「ああ。連れて行きたい場所がある」


 レオンが私の手を取った。


「二人だけで」


 顔が熱くなる。


「う、うん。いいけど……」


「じゃあ、夜の八時に、学院の正門で」


 そう言って、レオンは去っていった。


 残された私は、ドキドキする胸を押さえた。


『二人きりで……デート?』


 いや、デートとは言ってなかったけど。


 でも、何だかそんな雰囲気だった。


「エリアナ様、どうされましたか?顔が真っ赤ですよ?」


 エマが心配そうに覗き込む。


「な、なんでもない!」


 慌てて否定する。


 でも、エマはニヤニヤしている。


「もしかして、レオン様と何か?」


「べ、別に!」


「ふふふ、エリアナ様可愛い!」


 エマにからかわれながら、私は部屋に戻った。


 夜の八時。


 私は、正門でレオンを待っていた。


 普段の学院の制服ではなく、シンプルなドレスを着ている。


 マルタが「デートなら、可愛い服を!」と強引に着せてくれたのだ。


「あの……デートとは言ってませんけど……」


「いいんです!女は常に準備が大切なのです!」


 結局、淡い青色のドレスに、白いショールを羽織っている。


『恥ずかしい……』


 でも、少しだけ、レオンの反応が楽しみでもあった。


「エリアナ」


 声がして、振り向く。


 レオンが、普段より少しフォーマルな服装で立っていた。


 そして、私を見て――一瞬、動きが止まった。


「……どうしたの?」


「い、いや」


 レオンが少し顔を赤らめる。


「その、似合ってる」


「え?」


「そのドレス。綺麗だ」


 顔が、一気に熱くなった。


「あ、ありがとう……」


 レオンが手を差し出す。


「行こう」


「うん」


 手を取ると、温かかった。


 二人で、学院を出る。


 夜の街を、並んで歩く。


「どこに行くの?」


「もうすぐわかる」


 レオンが微笑む。


 月明かりの下、石畳の道を進む。


 やがて、街の外れにある丘に着いた。


「ここは……」


「この街を一望できる場所だ」


 丘の頂上から見下ろすと、街の明かりが星のように輝いている。


 そして、上を見上げれば、満天の星空。


「綺麗……」


 思わず、息を呑む。


「だろう?」


 レオンが隣に座る。


「ここは、俺の秘密の場所だ。一人になりたい時、よく来ていた」


「そうなの?」


「ああ。でも、今日は――お前と一緒に来たかった」


 レオンが私を見る。


 月明かりに照らされた彼の顔が、いつもより優しく見えた。


「エリアナ、お前と出会ってから、俺は変わった」


「レオン……」


「以前の俺は、誰にも心を開かなかった。冷たくて、孤独だった」


 レオンが空を見上げる。


「でも、お前が現れてから、全てが変わった」


「私……何もしてないわ」


「いや、してくれた」


 レオンが私の手を取る。


「お前は、俺に笑うことを教えてくれた。信じることを教えてくれた」


「レオン……」


「それに、リオンとも和解できた。家族とも、ちゃんと向き合えるようになった」


 レオンの目が、優しい。


「全部、お前のおかげだ」


 胸が、熱くなる。


「私こそ、レオンに助けられてばかりよ」


「いや、俺も――」


 そう言いかけて、レオンが言葉を止める。


 そして、深呼吸をして、私を見つめた。


「エリアナ、俺は――」


 心臓が、激しく鳴る。


「お前が、好きだ」


 時間が、止まった気がした。


「ずっと言いたかった。でも、言えなくて」


 レオンが私の両手を握る。


「でも、今日は言おうと決めていた」


「レオン……」


「俺と、本当の婚約者になってくれないか」


「本当の……?」


「政略結婚としてではなく。お互いを愛する者として」


 レオンが真剣な目で見つめる。


「俺は、お前を愛している。これからも、ずっと」


 涙が、溢れそうになった。


 でも、嬉し涙だ。


「私も……」


 声が震える。


「私も、レオンのことが好き」


「エリアナ……」


「ずっと、好きだった。でも、言えなくて」


 私も、レオンの手を握り返す。


「だって、原作では……」


 言いかけて、慌てて口を塞ぐ。


「原作?」


「あ、いえ!なんでもない!」


 危ない。転生のことを、つい口走りそうになった。


 でも、レオンは特に気にしていないようだった。


「エリアナ、答えてくれ」


 レオンが私の頬に手を添える。


「俺と、一緒になってくれるか?」


「……うん」


 頷くと、レオンが――


 優しく、私を抱きしめた。


「ありがとう」


 小さく呟く声が、耳元で聞こえる。


「絶対に、幸せにする」


「うん……」


 私も、レオンを抱きしめ返す。


 温かい。


 安心する。


 この人となら、どんな困難も乗り越えられる気がする。


「レオン」


「ん?」


「私、誓うわ」


 顔を上げて、レオンを見る。


「あなたを、絶対に守る。そして、一緒に未来を作る」


「……ああ」


 レオンが微笑む。


「俺も誓う。お前を守り、一緒に未来を作る」


 二人で、月を見上げる。


 満月が、優しく私たちを照らしていた。


「綺麗だな」


「うん……」


 レオンの手を握りながら、私は思った。


『断罪イベント、もう怖くない』


 レオンがいる。


 仲間がいる。


 どんな運命も、変えてみせる。


「エリアナ」


「何?」


「これからも、よろしく」


「うん。こちらこそ」


 二人で微笑み合う。


 月明かりの下、誓いを交わした夜。


 この日のことを、私は一生忘れないだろう。


 翌朝、部屋に戻ると、マルタとエマが待ち構えていた。


「お嬢様!どうでしたか!?」


「エリアナ様!何があったんですか!?」


 二人の追及に、私は顔を真っ赤にした。


「べ、別に!普通に散歩しただけで!」


「嘘です!絶対何かあったでしょう!」


「エリアナ様、顔が幸せそうです!」


「そ、そんなことない!」


 でも、否定すればするほど、二人はニヤニヤする。


「まあいいですわ。でも、レオン様と上手くいって良かったですわね」


 マルタが優しく微笑む。


「お嬢様、本当に幸せそうなお顔をされています」


「マルタ……」


「これからも、お幸せに」


「ありがとう」


 その日の午後、レオンと学院で会った。


「エリアナ」


「レオン」


 お互いに、少し照れくさそうに微笑む。


「昨日は、ありがとう」


「こちらこそ」


 レオンが私の手を取る。


「これから、色々大変なこともあると思う」


「うん」


「でも、一緒なら乗り越えられる」


「ええ」


 二人で頷き合う。


 その様子を、少し離れたところから見ていたエマが、嬉しそうに笑っていた。


「良かったね、エリアナ様……」


 マリアとロザリーも、一緒だった。


「エリアナ様、本当に幸せそう」


「ええ。私たちも、応援しないと」


「もちろんです!」


 リオンも現れた。


「兄さんと姉様、お似合いだな」


「そうだね」


 ヴィクターも、遠くから見守っていた。


「エリアナ様……幸せになってください」


 小さく呟いて、微笑む。


 そして、その全てを――


 ダミアン教師が、研究室の窓から見ていた。


「エリアナ・ローゼン……君は、本当に強いな」


 彼の表情は、複雑だった。


「運命を、変えつつある」


 書類を取り出す。


 そこには、『断罪イベント予定日まで残り八ヶ月』と書かれていた。


「でも、本当の試練は、これからだ」


 ダミアンが、窓を閉める。


「頑張れ、エリアナ。君なら、きっと……」


 その言葉は、誰にも聞こえなかった。

次回予告:

レオンとの関係が深まったエリアナ。しかし、それを快く思わない者もいた。公爵家の権力闘争が再燃し、新たな刺客が送り込まれる。そして、エリアナに迫る陰謀の影――

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