第18話 真実への追求
「マリア!しっかりして!」
医務室で、私はマリアの手を握りしめた。
四人目の被害者――それは、私の友人になったばかりのマリアだった。
「エリアナ様……ごめんなさい……」
マリアが弱々しく微笑む。
「私、気をつけていたのに……」
「謝らないで!あなたは何も悪くない!」
ロザリーが、涙を流している。
「許せない……犯人、絶対に許せない……!」
ロザリーが震える声で言う。
「もう四人も……!」
医務室の先生が、深刻な顔で説明する。
「マリアさんも、前の三人と同じ症状です。魔力が完全に失われています」
「治療法は……?」
「今のところ、見つかっていません。奪われた魔力を取り戻すしか……」
「つまり、犯人を捕まえるしかないということですね」
レオンが険しい表情で言う。
「そういうことになります」
エマが泣きながら、私に言った。
「エリアナ様……もう、こんなの許せません……!」
「ええ。もう、待っていられないわ」
私は立ち上がった。
「直接、ダミアン先生に問い詰めに行く」
「エリアナ!?」
「証拠はまだないけど、彼が怪しいことは確かよ。なら、直接聞くしかない」
「危険だ。もし本当に犯人なら――」
「大丈夫。みんながいるもの」
私は、仲間たちを見回す。
「一緒に来てくれる?」
「当然だ」
レオンが頷く。
「俺も!」
リオンが拳を握る。
「私も行きます!」
エマが涙を拭く。
「ロザリー、マリアの側にいてあげて」
「わかったわ。エリアナ様、気をつけて……」
ロザリーが心配そうに見送る。
私たちは、ダミアンの研究室へと向かった。
研究室の前に立つ。
深呼吸をして、ノックする。
「ダミアン先生、エリアナです。お話があります」
「どうぞ」
穏やかな声が返ってくる。
ドアを開けると、ダミアンは本を読んでいた。
まるで、何も起こっていないかのように。
「エリアナ、そしてレオンとエマ、リオンも。皆さん揃って、どうされましたか?」
「ダミアン先生」
私は、一歩前に出る。
「単刀直入に聞きます。魔力吸収事件の犯人は、あなたですか?」
静寂。
ダミアンは、ゆっくりと本を閉じた。
「……なるほど。そう思われても仕方ありませんね」
「認めるのか!?」
レオンが叫ぶ。
「いいえ」
ダミアンが立ち上がる。
「私は犯人ではありません」
「嘘だ!被害者は全員、あなたの授業を受けていた!」
「それは事実です。でも、それだけでは証拠にはなりません」
ダミアンが窓の外を見る。
「確かに、私は魔力吸収の魔法を知っています。研究もしています。でも、使ってはいません」
「なら、誰が!?」
エマが叫ぶ。
「わかりません。ただ――」
ダミアンが振り返る。
「犯人の目的は、おそらく『大規模な魔法の発動』です」
「大規模な魔法……前にも言っていましたね」
私が言うと、ダミアンは頷いた。
「ええ。生徒たちから魔力を集めている。それも、段階的に強い魔力を」
「それで、最終的には私の魔力を狙っている」
「その通りです」
ダミアンが真剣な顔になる。
「エリアナ、あなたの全属性魔法の魔力は、極めて特殊です。それを手に入れれば――」
「何ができるんですか?」
「世界の法則を、書き換えることができるかもしれません」
「!?」
全員が驚愕する。
「世界の法則って……どういうことだ?」
レオンが聞く。
「文字通りです。この世界のルール、運命、全てを変える力」
ダミアンが私を見る。
「そして、それを狙っている者がいる。おそらく、あなたの近くに」
背筋が凍る。
「私の……近くに?」
「ええ。だから、気をつけてください」
ダミアンが一歩近づく。
「エリアナ、あなたは――この世界にとって、重要な存在なのです」
「どういう意味ですか?」
「今は、まだ言えません。でも、いずれわかる時が来ます」
ダミアンが微笑む。
「その時まで、生き延びてください」
謎めいた言葉を残して、ダミアンは私たちに背を向けた。
「今日は、これで失礼します。授業の準備がありますので」
「待ってください!まだ――」
「エリアナ」
ダミアンが振り返る。
「私は、あなたの敵ではありません。それだけは、信じてください」
そう言って、研究室を出ていった。
残された私たちは、呆然としていた。
「……結局、何もわからなかった」
リオンが悔しそうに言う。
「いや、わかったこともある」
レオンが言う。
「犯人の目的は、エリアナの魔力だ。そして、大規模な魔法を使おうとしている」
「世界の法則を変える魔法……そんなものが、本当に存在するの?」
エマが不安そうに聞く。
「わからない。でも、ダミアン先生は嘘を言っているようには見えなかった」
私が言うと、三人が頷いた。
「なら、どうする?」
「まず、犯人を見つけないと。ダミアン先生じゃないなら、他に誰が……」
その時、廊下から悲鳴が聞こえた。
「きゃあああ!」
「今度は何!?」
駆けつけると、中庭で生徒たちが騒いでいた。
「どうしたの!?」
「あそこ!あそこを見て!」
指差す方向を見ると――
空中に、巨大な魔法陣が浮かんでいた。
暗黒色に輝く、不吉な魔法陣。
「あれは……!?」
「魔力吸収の魔法陣だ!」
レオンが叫ぶ。
「しかも、学院全体を覆うような巨大さ!」
「まさか……学院中の生徒の魔力を、一度に吸い取るつもり!?」
エマが青ざめる。
その時、魔法陣から声が響いた。
『エリアナ・ローゼン』
私の名前。
『お前の魔力を、私に捧げよ』
『さすれば、この学院の生徒たちは助けてやろう』
『拒めば――全員の魔力を、奪い尽くす』
冷たく、低い声。
でも、誰の声かはわからない。魔法で変えられているようだ。
「エリアナ!」
レオンが私を抱き寄せる。
「応じるな!罠だ!」
「でも……みんなが……」
生徒たちが、次々と倒れ始めた。
魔法陣が、発動し始めている。
「いやああ!」
「魔力が……吸われる……!」
「エリアナ様!」
エマも、膝をつく。
「エマ!」
「大丈夫……まだ、大丈夫……」
でも、明らかに苦しそうだ。
リオンも、レオンも、苦しみ始めている。
「くそっ……!こんな……!」
レオンが歯を食いしばる。
私だけが、影響を受けていない。
おそらく、全属性魔法の力で、魔法陣の影響を無効化しているのだろう。
でも――みんなが苦しんでいる。
「やめて!」
私は叫んだ。
「私が行くから!だから、みんなを解放して!」
『賢明な判断だ』
声が笑う。
『では、旧校舎の屋上に来い。一人でだ』
『誰か連れてきたら――この魔法陣を、完全に発動させる』
魔法陣が、さらに強く輝く。
生徒たちの悲鳴が大きくなる。
「わかった!行くから!だから、今すぐやめて!」
『急げ。時間がない』
声が消え、魔法陣が少しだけ光を弱めた。
生徒たちの苦しみが、少し和らぐ。
「エリアナ!行くな!」
レオンが私の手を掴む。
「行かないと、みんなが……!」
「でも、お前が危険だ!」
「大丈夫。私には、全属性魔法がある」
私は、レオンの手を握り返す。
「信じて。私、必ず帰ってくるから」
「エリアナ……!」
「レオン、みんなを頼む」
そう言って、私は旧校舎へと走り出した。
後ろから、レオンやエマの声が聞こえる。
でも、振り返らない。
振り返ったら、迷ってしまう。
『必ず、犯人を捕まえる』
『そして、みんなを救う』
旧校舎の階段を駆け上がる。
屋上への扉を開ける。
そこには――
「ようこそ、エリアナ・ローゼン」
フードを被った人物が立っていた。
「あなたが、犯人……!」
「そうだ。私が、君たちの魔力を奪った」
人物が、ゆっくりとフードを取る。
その顔を見て――
私は、言葉を失った。
「ま、まさか……!」
そこにいたのは――
予想もしていなかった人物だった。
次回予告:
屋上で明かされる、衝撃の真実。犯人の正体と、その目的。そして、エリアナに突きつけられる、残酷な選択。彼女は、どう決断するのか――




