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完璧令嬢は今日も必死です  作者: 周音


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第17話 不可解な事件

 ダミアン教師が赴任してから一週間。


 学院内で、奇妙な事件が相次いで起きていた。


「また!?」


 エマが慌てた様子で駆け寄ってくる。


「エリアナ様!三人目です!」


「三人目……?」


「魔力を失った生徒が、また一人!」


 背筋が凍る。


 三日前から、学院内で生徒たちが次々と魔力を失う事件が発生していた。


 最初は一年生の女子生徒。次は二年生の男子生徒。そして今度は――


「誰なの?」


「セシルです!」


「セシル!?」


 医務室に駆け込むと、セシルがベッドで横になっていた。


 顔色が悪く、息も荒い。


「セシル!大丈夫!?」


「エリアナ様……」


 弱々しい声で、セシルが私を見る。


「魔力が……感じられないの……」


「落ち着いて。きっと、すぐに治るわ」


 医務室の先生が、深刻な顔で説明する。


「原因は不明です。ただ、魔力だけが根こそぎ奪われている」


「奪われている?」


「ええ。病気や怪我ではありません。誰かが、意図的に魔力を吸い取ったとしか思えません」


 レオンとマリア、ロザリーも駆けつけてきた。


「セシル!」


 マリアが泣きそうな顔でセシルに駆け寄る。


「どうして……どうしてセシルが……!」


「マリア、落ち着いて」


 ロザリーがマリアを支える。


 でも、ロザリー自身も震えていた。


「犯人は……犯人は誰なの!?」


 その時、ドアが開いた。


「これは、大変なことになりましたね」


 ダミアン教師が、心配そうな顔で入ってきた。


「また被害者が出たと聞いて。セシル・モンフォール、彼女もですか」


「ダミアン先生……」


 私は、彼を見る。


 この人は――関係あるのだろうか?


「先生、これは一体……」


「おそらく、魔力吸収の魔法でしょう」


 ダミアンが冷静に分析する。


「古代魔法の一種で、他者の魔力を奪い取る禁術です」


「禁術……?」


「ええ。王国では使用が禁じられています。なぜなら、魔力を奪われた者は、二度と魔法が使えなくなる可能性があるからです」


 セシルの顔が、さらに青ざめた。


「二度と……使えなく……?」


「いえ、まだ可能性の話です」


 ダミアンが優しく微笑む。


「適切な治療を受ければ、回復する可能性もあります」


「本当ですか!?」


 マリアが食いつく。


「ええ。ただし、犯人を見つけて、奪われた魔力を取り戻す必要があります」


「犯人……」


 レオンが険しい表情になる。


「学院内に、そんな禁術を使える者がいるのか?」


「さあ、どうでしょう」


 ダミアンが肩をすくめる。


「ただ、この事件、計画的です。被害者の選び方に、何か意図が感じられます」


「意図?」


「ええ。最初の被害者は魔力が弱い一年生。次は平均的な二年生。そして今回は、優秀な魔力を持つセシル」


 ダミアンが指を折る。


「まるで、段階的に強い魔力を狙っているかのようです」


 私とレオンが、同時に顔を見合わせた。


『まさか……』


「次の標的は、さらに強い魔力の持ち主かもしれませんね」


 ダミアンの視線が、一瞬だけ私に向けられた。


 背筋が凍る。


「とにかく、学院側も調査を開始します。皆さんも、夜間の一人歩きは避けてください」


 ダミアンはそう言い残して、医務室を出ていった。


 静寂が訪れた後、マリアが震える声で言った。


「次は……次は誰が狙われるの?」


「わからない。でも……」


 ロザリーが私を見る。


「エリアナ様が、一番危険なんじゃ……」


 全員の視線が、私に集中する。


「全属性魔法の使い手。学院で最も強い魔力を持つエリアナ様が、次の標的になる可能性が……」


「させない」


 レオンがきっぱりと言った。


「エリアナは、俺が守る」


「俺も協力する」


 リオンが現れた。いつの間にか、話を聞いていたらしい。


「姉様を危険な目には遭わせない」


「私も!」


 エマが拳を握る。


「エリアナ様を守ります!」


「みんな……」


 胸が熱くなる。


 でも、同時に――不安もあった。


『犯人は、本当に誰なんだろう?』


 そして、ダミアン教師の言葉が引っかかる。


『まるで、全てを知っているような口ぶりだった』


 その夜、私たちは緊急会議を開いた。


 場所は、学院の旧図書館。普段は使われていない、静かな場所だ。


 集まったのは、私、レオン、エマ、リオン、マリア、ロザリー、そしてアレク。


「まず、状況を整理しよう」


 アレクが言う。


「三人の生徒が魔力を奪われた。犯人は、古代魔法の禁術を使える者」


「そして、段階的に強い魔力の持ち主を狙っている」


 レオンが続ける。


「次の標的は、おそらくエリアナだ」


「でも、犯人の手がかりがないわ」


 ロザリーが悔しそうに言う。


「被害者たちは、誰に襲われたのか覚えていないの?」


「ええ。三人とも、『突然意識が遠のいた』としか言えないそうです」


 エマが報告する。


「まるで、気づかないうちに魔力を吸い取られたみたいに」


「気づかないうちに……?」


 マリアが首を傾げる。


「それって、可能なんですか?」


「通常の魔法では無理だ」


 レオンが答える。


「魔力を吸い取るには、直接的な接触か、強力な魔法陣が必要なはずだ」


「でも、被害者たちには接触の痕跡もなければ、魔法陣も見つかっていない」


 アレクが腕を組む。


「これは……かなり高度な術だな」


 その時、私はあることに気づいた。


「ねえ、三人の被害者に共通点はないの?」


「共通点?」


「ええ。例えば、同じ場所にいたとか、同じ物を食べたとか」


 エマが慌ててメモを取り出す。


「えっと……最初の被害者は、図書館で倒れた。二人目は、中庭。三人目のセシルは、教室で……」


「場所はバラバラね」


「でも、待って」


 リオンが何かに気づいたように言う。


「三人とも、倒れる直前に『ダミアン先生の授業』を受けていたんじゃないか?」


 全員が、はっとした。


「確かに……!」


 エマが確認する。


「最初の被害者も、二人目も、倒れる数時間前にダミアン先生の魔法理論の授業を受けていた!」


「そして、セシルも今日、ダミアン先生の授業を受けていた……」


 マリアが青ざめる。


「まさか……ダミアン先生が犯人!?」


「まだ断定はできない」


 アレクが冷静に言う。


「でも、可能性は高い。彼の授業中に、何か仕掛けられているのかもしれない」


「仕掛け……?」


「ああ。例えば、遅効性の魔法。授業中に仕込んで、数時間後に発動するような」


 レオンが頷く。


「それなら、被害者が犯人に気づかないことも説明がつく」


「でも、証拠がないわ」


 ロザリーが言う。


「ダミアン先生を疑うだけでは、何もできない」


「なら、証拠を掴もう」


 私が立ち上がった。


「私が、おとりになる」


「何!?」


 全員が驚く。


「エリー、危険すぎる!」


 アレクが反対する。


「でも、他に方法がないわ。犯人が私を狙っているなら、その時に捕まえるしかない」


「でも……!」


「大丈夫。みんながいるもの」


 私は、仲間たちを見回す。


「みんなで協力すれば、きっと犯人を捕まえられる」


「……わかった」


 レオンが渋々頷く。


「でも、俺も必ず側にいる。絶対に、お前を一人にはしない」


「私も!」


 エマが手を挙げる。


「俺も姉様を守る!」


 リオンも続く。


「私たちも、協力します」


 マリアとロザリーが頷く。


「ありがとう、みんな」


 こうして、犯人を捕まえる作戦が始まった。


 翌日、私はわざとダミアンの授業に出席した。


 教室には、いつも通りの生徒たち。


 そして、レオンとエマも一緒だ。


 マリア、ロザリー、リオンは、教室の外で待機している。


 アレクは、学院の警備と連携を取っている。


「では、今日の授業を始めます」


 ダミアンが、いつも通りの穏やかな笑顔で講義を始めた。


 私は、彼の一挙一動を注意深く観察する。


『何か、仕掛けてくるはず……』


 授業は、普通に進んだ。


 魔法理論の解説、実技の指導。


 特に怪しい様子はない。


 でも――


 授業の終わり際、ダミアンが言った。


「では、最後に復習として、魔力感知の練習をしましょう」


「魔力感知?」


「ええ。隣の人の魔力を感じ取ってください。目を閉じて、集中して」


 生徒たちが、言われた通りに目を閉じる。


 私も、目を閉じた。


 隣に座っているレオンの魔力を感じ取る。


 青く、冷たく、でも力強い魔力。


『レオンの魔力だ』


 その時――


 微かに、何かを感じた。


 自分の魔力が、少しだけ――流れ出ている?


『これは……!?』


 目を開けると、ダミアンがこちらを見ていた。


 その目が――一瞬だけ、鋭く光った。


「はい、では終わりです。お疲れ様でした」


 授業が終わり、生徒たちが教室を出ていく。


 私は、レオンに小声で言った。


「今、何か変だった」


「ああ、俺も感じた。魔力が、少しだけ吸い取られた気がする」


「やっぱり……」


 私たちは、ダミアンを見る。


 彼は、何事もなかったかのように教材を片付けていた。


「エリアナ、レオン。少し残ってくれますか?」


 ダミアンが振り向いた。


「……何でしょうか?」


「いえ、少し話したいことがあって」


 他の生徒が全員出ていった後、ダミアンが口を開いた。


「最近、学院で事件が続いていますね」


「……はい」


「私も、犯人を探しています。魔法研究者として、許せない犯罪ですから」


 ダミアンが眼鏡を外す。


「ところで、エリアナ。君は、何か気づいていることはありませんか?」


「気づいていること?」


「ええ。全属性魔法の使い手である君なら、何か感じ取れるのではないかと」


 ダミアンが一歩近づいてくる。


「例えば……誰かが、魔力を集めているとか」


 背筋が凍る。


 この人は――


「それは、どういう意味ですか?」


「文字通りの意味ですよ」


 ダミアンが微笑む。


「魔力吸収の禁術は、大量の魔力を必要とする大規模な魔法の準備として使われることがあります」


「大規模な魔法……?」


「ええ。例えば、世界の法則を書き換えるような」


「!?」


 レオンが私の前に立った。


「ダミアン先生、あなたは一体……」


「レオン・エーデル。君は、エリアナを守ろうとしている。素晴らしいことです」


 ダミアンが眼鏡をかけ直す。


「でも、本当の敵が誰なのか、わかっていますか?」


「……どういう意味だ」


「今は、まだ言えません」


 ダミアンが背を向ける。


「ただ、一つだけ忠告しておきます。エリアナ、君は――もうすぐ、大きな選択を迫られるでしょう」


「選択?」


「ええ。その時、正しい判断をしてください」


 そう言い残して、ダミアンは教室を出ていった。


 私とレオンは、呆然とその場に立ち尽くした。


「……何だったんだ、今の」


「わからない……」


 でも、一つだけ確かなことがある。


 ダミアン・グレイは、ただの教師ではない。


 そして、彼は何かを知っている。


 事件の真相を。


 そして、私の秘密を。

次回予告:

ダミアンへの疑惑は深まるが、決定的な証拠は掴めない。そんな中、四人目の被害者が出る。今度は――マリアだった。怒りに震えるエリアナたちは、ついに直接対決を決意する――

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