第15話 三人の選択
マリアへの事件から一週間後。
学院では、その話題で持ちきりだった。
「エリアナ様がマリアを信じたんだって」
「すごいよね、普通なら疑うのに」
生徒たちの会話が聞こえる。
マリア自身は、以前より明るくなった気がする。
「エリアナ様、おはようございます」
廊下で会うと、マリアが笑顔で挨拶してくれる。
「おはよう、マリア」
「あの……もしよければ、今日お昼ご一緒しませんか?」
「ええ、もちろん」
マリアの顔が、パッと明るくなった。
でも――
少し離れたところで、セシルとロザリーが複雑そうな表情で見ていた。
昼食の時間。
私、エマ、レオン、リオン、そしてマリアが一緒に食事をした。
「エリアナ様、これ美味しいですよ!」
エマが楽しそうに話す。
「本当ね」
和やかな雰囲気。
でも、食堂の隅でセシルとロザリーが二人きりで食事をしているのが見えた。
『……二人も、誘うべきかな』
そう思っていると――
「エリアナ様」
セシルとロザリーが、私たちのテーブルに近づいてきた。
「あの……少し、お話しできますか?」
「ええ、もちろん」
二人は、緊張した面持ちだった。
人気のない教室に移動して、四人だけになった。
私、マリア、セシル、ロザリー。
「……何の話?」
私が聞くと、セシルが震える声で言った。
「実は、私も……黒幕から接触を受けたんです」
「私もです」
ロザリーも続ける。
「やはり……」
予想はしていたが、やはりショックだ。
「私は、家族の秘密をばらすと脅されました」
セシルが俯く。
「私の父は……昔、ある事件に関与していて。それが明るみに出れば、爵位を剥奪される可能性があるんです」
「私は、家の財産を没収すると脅されました」
ロザリーが続ける。
「うちの家は、違法な取引で財を成したという噂があって……証拠を持っていると言われたんです」
二人とも、怯えていた。
「それで、黒幕は何を要求してきたの?」
「……エリアナ様を、孤立させろと」
セシルが小さく言う。
「友達のふりをして近づいて、少しずつエリアナ様の評判を落とせと言われました」
「私も同じです」
ロザリーが頷く。
「でも……」
二人が私を見る。
「マリアが、エリアナ様に正直に話したのを見て……私たちも、そうすべきだと思ったんです」
「エリアナ様は、マリアを信じてくれました。だから、私たちも……信じてもらえるでしょうか?」
二人の目に、涙が浮かんでいた。
私は――
「ありがとう」
そう言って、二人の手を取った。
「正直に話してくれて、ありがとう。もちろん、信じるわ」
「エリアナ様……!」
二人が泣き出した。
「私たち、今まで本当にひどいことを……」
「もういいの。過去のことは、もう忘れましょう」
私は、三人を見る。
「これから、本当の友達になりましょう」
「はい!」
三人が声を揃えて答えた。
マリアも、涙を流しながら笑っていた。
その日の放課後、レオンとアレクに報告した。
「セシルとロザリーも、黒幕に狙われていたのか」
レオンが険しい表情になる。
「黒幕は、お前の周りを孤立させようとしている」
「でも、失敗したわ。三人とも、正直に話してくれた」
「お前が信頼されているからだな」
アレクが微笑む。
「でも、油断はできない。セシルとロザリーの家の問題も、何とかしないと」
「俺も協力する」
レオンが言う。
「公爵家の力を使えば、少しは助けになるかもしれない」
「ありがとう、二人とも」
数日後、良い知らせが届いた。
セシルの父親の件は、実は冤罪だったことが証明された。
レオンが調査を依頼した結果、真犯人が別にいることが判明したのだ。
ロザリーの家の件も、アレクが合法的な資金洗浄の方法を見つけてくれた。
「本当ですか!?」
二人が目を輝かせる。
「ええ。もう、脅される心配はないわ」
「エリアナ様……レオン様、アレク様……」
二人が涙を流す。
「ありがとうございます……!」
こうして、三人の危機は去った。
その夜、マリア、セシル、ロザリーの三人が、私の部屋を訪ねてきた。
「エリアナ様、私たち……改めて、お礼が言いたくて」
マリアが代表して言う。
「今まで、本当にひどいことをしてきました。エリアナ様を憎んで、陥れようとして……」
「でも、エリアナ様は私たちを見捨てなかった。信じてくれて、助けてくれた」
セシルが続ける。
「だから、私たち……これから、本当の友達として、エリアナ様を支えたいんです」
ロザリーが力強く言う。
「お願いします。私たちを、仲間に入れてください」
三人が深く頭を下げた。
私は――
「もちろんよ」
そう言って、三人を抱きしめた。
「これから、一緒に戦いましょう」
「はい!」
三人が笑顔で答えた。
こうして、マリア、セシル、ロザリーは――
本当の意味で、私の仲間になった。
次回予告:
仲間が増えたエリアナ。しかし、黒幕は諦めていなかった。学院に、新たな人物が現れる。その人物は、エリアナに異常なまでの興味を示し――そして、ある提案をする――




