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完璧令嬢は今日も必死です  作者: 周音


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第14話 十四歳の誕生日

 夜会での騒動から数ヶ月が経ち、私は十四歳の誕生日を迎えた。


 ローゼン侯爵家では、盛大なパーティーが開かれることになった。


「エリアナ様、お誕生日おめでとうございます!」


 エマが満面の笑みで駆け寄ってくる。


「ありがとう、エマ」


「これ、プレゼントです!」


 手作りの刺繍入りハンカチを受け取る。


「素敵ね。大切にするわ」


「姉様!おめでとう!」


 リオンもプレゼントを持ってきてくれた。


「ありがとう、リオン」


 パーティーが始まると、多くの貴族が祝福に訪れた。


 マリア、セシル、ロザリーも来ていた。


 彼女たちとは、あの夜会以降、少し距離がある。


 完全に敵対しているわけではないが、かといって友達と呼べる関係でもない。


 微妙な距離感だ。


「エリアナ様、お誕生日おめでとうございます」


 マリアが形式的な笑顔で挨拶する。


「ありがとう、マリア」


「おめでとうございます」


 セシルとロザリーも、同様に礼儀正しく挨拶する。


 でも、その目には複雑な感情が見える。


『……まだ、心を開いてくれてないのね』


 仕方ない。長年の確執は、簡単には消えない。


 パーティーが進み、レオンが私を庭園に呼び出した。


「エリアナ、誕生日おめでとう」


「ありがとう、レオン」


「これ、プレゼントだ」


 レオンが、小さな箱を差し出す。


 開けると――美しいペンダントが入っていた。


「綺麗……」


「俺の母の形見だ。お前に、譲りたい」


「え?でも、こんな大切なもの……」


「お前だから、渡したいんだ」


 レオンが真剣な目で言う。


「エリアナ、俺は――」


 その時、突然の叫び声が聞こえた。


「きゃあ!」


「何!?」


 パーティー会場に戻ると、騒然としていた。


「どうしたの!?」


「エマが……エマが倒れました!」


 ある貴族夫人が慌てて叫ぶ。


「エマ!」


 駆け寄ると、エマが床に倒れていた。


「エマ!しっかりして!」


「う……エリアナ、様……」


 エマが苦しそうに呻く。


「誰か!医者を!」


 すぐに医者が呼ばれた。


 診察の結果――


「毒を盛られたようです」


 医者が深刻な顔で言う。


「毒!?」


「はい。幸い、致死量ではありませんでしたが……」


「誰が……」


 その時、一人の使用人が震えながら言った。


「わ、私が見ました……エマ様のグラスに、何か入れている人を……」


「誰!?」


「それが……マリア様に、似ていて……」


「え!?」


 全員の視線が、マリアに向けられる。


「違います!私じゃありません!」


 マリアが必死に否定する。


「でも、確かにマリア様の姿を……」


「私はやっていません!」


 マリアが涙声で叫ぶ。


 周囲がざわめく。


「やはり、マリアは……」


「エリアナ様を恨んでいたから……」


 囁き声が聞こえる。


 私は――迷った。


 マリアを信じるべきか?


 彼女とは、まだ完全に信頼関係が築けていない。


 でも――


 あの夜会で、彼女は私を陥れなかった。


 それを思い出す。


「マリアを信じるわ」


 きっぱりと言った。


「でも、証拠が……」


「証拠なんて、捏造できる。きちんと調査するまで、犯人扱いはしないわ」


 周囲がざわめく。


「エリアナ様……!」


 マリアが驚いて私を見る。


「本当に、私を……?」


「ええ。だって、あなたは夜会の時、私を裏切らなかったでしょう?」


「エリアナ様……」


 マリアの目から、涙が溢れた。


 その後、レオンとアレクの協力で詳しく調査した結果――


「マリア様に変装した何者かの仕業でした」


 騎士が報告する。


「やはり……」


「変装に使われた衣装とかつらが、裏庭で見つかりました」


「犯人は?」


「まだ捕まっていません。おそらく、パーティーに紛れ込んだ者の仕業かと」


『黒幕の仕業だ』


 確信した。


 私の誕生日に、仲間を傷つけ、仲間割れを起こそうとした。


 事件が解決した後、マリアが私のもとに来た。


「エリアナ様……信じてくださって、ありがとうございました」


「当然よ。あなたは無実だもの」


「でも、私……エリアナ様に、ひどいことをしてきました」


 マリアが俯く。


「嫉妬して、陥れようとして……なのに、エリアナ様は私を信じてくれた」


「マリア……」


「実は」


 マリアが震える声で言う。


「数日前、ある人物から接触を受けたんです」


「接触?」


「はい。その人は言いました。『エリアナを陥れれば、あなたの家を助ける』と」


 背筋が凍る。


「私の家は、父が事業に失敗して、多額の借金を抱えているんです」


 マリアの目に、涙が浮かぶ。


「その人は、今日のパーティーでエリアナ様の友人に毒を盛れば、借金を肩代わりしてやると言いました」


「……それで?」


「断りました!」


 マリアが叫ぶ。


「確かに私は、以前はエリアナ様を憎んでいました。でも、もうそんなことはしたくない。エリアナ様は……優しい方だから」


 マリアが泣き崩れる。


「だから、これは私を犯人に仕立てるための罠だったんです……」


「……よく、正直に話してくれたわね」


 私は、マリアの肩に手を置いた。


「ありがとう、マリア」


「エリアナ様……」


 その後、アレクがマリアのもとに来た。


「マリア、君の家の借金の件だが」


「はい……」


「俺が、融資先を見つけた。ローゼン家の保証で、低金利での借り換えができる」


「え……!?」


 マリアが驚いて目を見開く。


「本当ですか!?」


「ああ。妹の……いや、妹が信じた人を助けるのは、当然だろう?」


 アレクが微笑む。


「アレク様……!」


 マリアが涙を流す。


「ありがとうございます……本当に、ありがとうございます……!」


 その夜、部屋で一人考えていた。


『断罪イベントまで、あと一年』


 十四歳になった。


 あと一年で、運命の成人舞踏会だ。


 黒幕は、本格的に動き始めている。


 マリアだけでなく、セシルやロザリーにも手を伸ばすかもしれない。


 でも――


「私には、仲間がいる」


 エマ、レオン、アレク、リオン。


 そして、マリアも――今日、少しだけ心を開いてくれた。


「絶対に、断罪を回避してみせる」


 そして、黒幕を暴いてみせる。


 窓の外、月が美しく輝いていた。


 残り一年。


 最後の戦いが、始まる。

次回予告:

マリアが心を開き始めたことで、セシルとロザリーにも変化が。しかし、黒幕は彼女たちにも魔の手を伸ばす。次々と襲いかかる陰謀。エリアナは、三人を完全な仲間にできるのか――

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