宿探し
店を離れ、路地の奥の凹みに身を入れる。人の目が届きにくい位置。
〈静音結界〉を薄く展開。足元の音が膜に吸われる。
「耐性の挙動だけ、いま押さえとく」
〈無詠唱〉で指先に火花を小さく。出力5。自分の手の甲にチリと当てる。
[Log] 〈炎:基礎50→耐性60%で20。熱侵蝕+5/100(30秒自然減衰)〉
「%カット→侵蝕上限ね。次、毒」
足元に毒霧をうっすら。
[Log] 〈毒:基礎10/秒→耐性40%で6/秒。継続ダメ・スロット上限=3〉
「三枠埋まると上書き。了解。冷気」
自分の膝に冷気を一息ぶつける。
[Log] 〈冷:%カット後、移動−15%(10秒)〉
〈スキル改稿〉で遅延を解除。
[Log] 〈デバフ:除去〉
「混合型(%カット+侵蝕+スロット+遅延)。対策は組める」
〈更新負荷:29%→30%〉。まだ安全域。
静音を解いて路地へ戻る――鈍い蹴りの音。
「立て、壁。息の仕方を忘れたか」
獣人が、鎖を引きながら人間の腹を蹴る。喉輪がギリと鳴る。
周囲の奴隷は目を逸らすことを教えられている目だ。
壁から身体を離す。石畳に靴が軽く触れ、獣人の視線がこちらに刹那だけ移る。
「あん?首輪がねえじゃねえか。まさか、奴隷以外のヒューマンを見るとはな」
〈解析視〉で連れられている人間の喉輪を見る。無効化する。
[Log] 〈喉輪:無効(単発)〉
獣人が鎖を乱暴に引いた瞬間、カチンと音がして、輪が喉から外れた。
「……あ?」
男は空気を吸い直す。
「不良品か?外れたところなんて見たことねえ。買い直さねえといけねえのかよ...
おい!何ボケっとしてんだ!付いてこい」
先程まで鎖で繋がれていた奴隷は腹を蹴られ、首輪屋へ向かっていった。
「――さて、そろそろちゃんと宿を見つけないとな。」
四軒目。小さな看板に杯の刻印。
「空きはあるか?」
女将は俺の顔を見てから、喉を見た。
「保証は?」
「保証?」
「喉輪の印か、持ち主の名。それが保証」
「……無い」
「じゃあ地下。」
短い沈黙。
「一応聞いておくが、鍵はどっち側から閉めるんだ?」
「外」
「やめておく」
女将は肩をすくめ、次の客に視線を流した。
五軒目。大きな宿。帳場の男は愛想笑い。
「満室だ」
「金ならあるぞ」
男の笑顔が薄くなる。
「満室だ」
――うーむ、これはもう違和感じゃないな。明らかに差別されている。
六軒目。
「藁床なら一銅。だが、首に印がない客は断りだ」
「ただ泊まりたいだけだ。」
「……軒下ならいい。夜明けまで。一銅」
「それで金を取るのかよ」
「こりゃあ野宿だな。まぁ、いい。街の外のほうが環境が良いまであるぞこんなの。」
〈索敵〉を半径200mに縮め、端に侵入アラートを付ける。
〈亜空間収納〉から布切れと縄(さっき市場の端で拾ったやつ)を出して簡易枕を作る。
〈痛覚+〉を少し上げて、腰の違和感を潰す。
腹はまぁ、まだ食べなくても大丈夫だ。明日ギルドで改めて情報収集が必要だな。
首輪がないと厄介者扱いってのも意味がわからないな。首輪がない方が普通だろ。
少し悩んでいるため毎日投稿をお休みいたします




