新世界
――落ちた、と思ったら、もう立ってた。
湿った草、土の匂い。前方には畑と土の道、高い防壁に低い屋根の街、薄い煙。見張り台もある。
「なるほど転生というよりかは転移だな。ここは丘か。更に街の近く、イージーだな」
人影は遠い。いまのうちに全部確認する。
「ステータス」
出てこないか。
直後頭の中でシステムメッセージのようなものが流れる。
ーー簡易的なステータスチェック画面を作成ーー
視界の端に淡い板がポンと出る。見た目は地味、でも情報は多い。
「便利だな。」
【STATUS】
名前:最原 慎一
種族:ヒューマン
称号:転移者/更新者(仮)
Lv:1 EXP:—(直接編集不可)
HP:100/100 MP:100/100
筋力:10/敏捷:10/持久:10/知力:10/集中:10
耐性:物理±0/毒±0/炎±0/冷±0/精神±0
スキル:〈システムハック〉
更新負荷:0%(安全域) 備考:不可逆変更の累積=“亀裂”化注意
「レベルがあるのか。スキルはシステムハック、自分のステータスを変更できるのか?」
Lvの右に小さな+が出る。注意文も出る。【一括上げは負荷が重くなる→段階更新推奨】
「負荷、ね。こちとらブラック企業で負荷テストしてたんだわ。とりあえず刻んでみるか。」
・Lv+10 → コツン(軽い頭痛)
・Lv+20 → コツン
・Lv+30 → ズン(額に汗)
・Lv+20 → ズン(耳鳴り一瞬)
・Lv+19 → ピリ(白ノイズ一瞬)
Lv100で止める。視界はクリア。いける。
「レベルは100で打ち止めか?」
・Lv+1 → ピリ(白ノイズ一瞬)
「100以上あるのか。なるほどね。」
〈Lv:101/更新負荷:0%→18%〉
〈派生再計算中…完了〉
HP:100 → **120,000 / 120,000**
MP:100 → **160,000 / 160,000**
筋力:10 → **500**
敏捷:10 → **520**
持久:10 → **480**
知力:10 → **560**
集中:10 → **540**
耐性:物理+60%/毒+40%/炎+40%/冷+40%/精神+50%
「基礎が数十倍。はい強い。頭は少しズキるけど許容だな。てかHPとMPもだが、各種耐性値高すぎねえか?この世界はそんなにバケモンが多いのか?
耐性値に関しては単純なカット率じゃない可能性もあるな。ここは要検証だな。」
内部パラメータも軽く整える。痛覚閾値+10%、疲労回復+20%、視覚ノイズ抑制+。
〈内部調整:小/更新負荷:18%→21%〉
そのへんに転がっているでかい石を片手で持ち上げて握る。片手で余裕。呼吸も浅くて済む。
「スキルもあるよな。確認するか。スキル。」
横スクロールの辞典がずらーーっと伸びる。笑うしかない量。
【SKILL LIBRARY】(全カテゴリ閲覧可/取得可)
総数:**2,800+**(随時展開)
近接戦闘(312)/射撃(198)/体術(134)
元素魔術(427)/呪詛・精神(166)/召喚(181)/支援(365)
移動(96)/防御・結界(210)/探索・認知(154)
生産・付与・錬成(141)/生活ユーティリティ(72)
世界・法則(29)《危険》/古代式(封印枝 47)
【Passive Board(定義盤)】ノード1,200+
例:詠唱速度/多重発動/クリ倍率/持続延長/
地形支配/影響域拡張/“式の括弧耐性貫通” など
「某ハクスラMMOかよ。スキルツリーがガチの木みたいで草。全部取ると死ぬだろうな。必要なものだけ取っていくか。」
まずは街入り用“実用セット”
・無詠唱(魔術)
・多重詠唱(最大3重)
・瞬歩(30m/3スタック)
・空中制動
・簡易障壁/静音結界
・広域索敵(最大1km・段階可変)
・生命感知/罠感知
・解析視(定義の木構造を視覚化)
・亜空間収納(中:荷車1台分)
・衛生保持
・スキル改稿(軽)※出力/属性/射程のパラメータ編集
・括弧操作(低危険)※詠唱“構文”に触れる下位版
Passive(控えめ)
・瞬歩硬直−40%
・障壁耐久+50%
・影響域拡張(索敵・静音の半径+20%)
〈取得コスト:合計“中~やや高”/更新負荷:21%→29%〉
まだ安全域。ここで打ち止め。
「走り良好。スキルとパッシブ“全閲覧+取得可”は反則だな。負荷表示がありがたい。
ただ、この分だと負荷の限界値は割とすぐ到達しそうだな。スキルやパラメータを下げることでしか負荷の軽減ができないのか、上限を伸ばす手段があるのか。そのへんも後で確認が必要だな。」
ついでに亜空間収納を開き、石・枯れ枝・土塊を入れて取り出す。応答は速い。
最後にショートカット。
【1】瞬歩/【2】障壁/【3】静音/【4】索敵/【5】改稿
「思考でクリック感あり。無意識に発動できるくらいには練習が必要か。括弧操作は強いが、無詠唱スキルがあるということは、これを相手に使う隙はないかもしれないな。基本的には自分のスキルに使っていくことを想定しておくか。」
「とりあえず色々まとまったか。」
・更新負荷は常時%で監視。50%越えたら一旦打ち止め。
・**不可逆(削除系)**は一旦置いておく。亀裂がなんだかわからないのと、嫌な予感がする。
・スキル辞典は総数2,800+。常用は最小セット。必要になったらその場で取って即テスト。
・地域影響(アトラス系)と古代式は、街か、ダンジョンみたいなのがあればそこでゆっくり開ける。
ここまでで「この世界で何ができるか」はだいたい見えた。
どういう世界かはまだわからんが、スキルやレベルがあるってことはそういうことだよな。
ただ、雑に負ける構成じゃない。
口角が勝手に上がる。
「うん、チート。これでいい」
見た目も少し整える。外見ノイズ抑制:顔の疲れ−30%、目の赤み−30%、清潔度+。
〈索敵〉円を回しながら土の道へ。門前の槍2、見張り台の一人はあくび中。
柵の前で立ち止まる。穂先が上がる前に軽く会釈。
「旅の者です。仕事を探してるのだが、この町には入れるだろうか?」
槍の片方があくびを噛み殺し、もう片方が顎をしゃくった。
――この時点では、まだ知らない。この世界でヒューマンがどう見られているか。




