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7話「大人しくしてたら魔王にされた!?科学vs王国魔導院の魔術検定」

7話「おとなしくしてたら魔王にされた!? 科学vs王国魔導院の魔術検定」


「おい……見たか? あの子どもたち、魔術なしで雷を起こしたらしいぞ……」


「嘘だろ、魔術詠唱もしてないって話じゃないか……!?」


「しかも雷だけじゃない、地面から火花を出していたって……! あれはもう“魔王”だ!!」


 


──騒ぎは、思った以上に大事になっていた。


 


「……あのさ。なんで私、王国の魔術検定に呼ばれてるわけ?」


 コノハが眉間に皺を寄せて呟く。


 目の前には、王国魔導院と呼ばれる真っ白な城のような建物。その正面には「特級魔術師候補、幼児枠特別審査会場」と書かれた立て看板が設置されていた。


「私たち、魔法使いじゃないんだけど……」とユイも胃を押さえる。


 いつもの野菜ジュースをすする暇もなく、心労が胃を刺激する。


 


 ──ことの発端は、村での“科学ショー”だった。


 コノハたちが原始的な発電実験をしていたところ、それを見た通報者が「異端の魔法」と勘違いし、王国に報告。


 その結果、魔導院から“高位魔導士候補者が発見された”として、強制的に審査対象にされたのだ。


 


「なんで科学で魔術扱いされるのよ……」


 サリーが嘆息する。


「それな……こっちはレモンで発電してただけだっつーの……」とコノハ。


「でもさ、魔術の検定って……どんなことするの?」


 ハルナが不安げに小さな手を握りしめている。


「そりゃあ、杖振って、呪文詠唱して、精霊にお願いして……とかじゃない?」ユイが推測するが、誰もその作法を知らない。


「無理ゲーじゃん」とサリー。


「詠唱の代わりに、なんか回路でも作って出力するか?」


「やめてそれまた“魔法陣”って呼ばれるやつ」


 


 と、そこに──


 


「おーい、コノハちゃ〜ん! みんなー!」


 派手な声と共にやってきたのは、保育士姿のリリカだった。


 魔導院に入るというのに、なぜかエプロン姿で、手にはなぜかお弁当とタオルを持っている。


「……先生、それで来たんですか?」


「うん! あなたたちは保護者同伴でないと試験受けられないって言われたから、今日は保育士モードよ!」


「ぐううううううぅっ……」


 コノハが頭を抱えた。


 


 その後、受付にて。


「では、お名前と年齢をお願いします」


「コノハ、5歳です……」


「ユイ、5歳……」


「サリー、4歳」


「ハルナ、3さいっ!」


「保育士です♡」


 受付嬢が一瞬きょとんとしたが、「ああ……今回の特例幼児か」と理解したようだった。


 


 そして──試験会場。


 


「ここが……魔術検定の実技会場か」


 見渡す限り、受験者は成人ばかり。というか、大半が「旅人」とか「傭兵」とか「魔術師見習い」とか、いかにもRPG風な肩書きを持っている。


 その中で、明らかに浮いている“幼女4人+保育士”という絵面。


 どこからどう見ても異常だ。


 


「最初の課題は、火の玉を生み出せ、だって」


「無理無理無理、火の玉!? それって魔術じゃん」


「物理的にいくしかないか……」


 


 コノハがカバンから取り出したのは──マグネシウム。


「よし、次はこれに塩素酸カリウムを……おい、ユイ、点火装置持ってる?」


「持ってる。歯車式の発火装置なら」


 ──そして3秒後。


 


「ボッ!!」


 鮮やかな閃光と共に、まばゆい火の玉が現れた。


 審査員席がざわつく。


「な、なんだ今の……!? 呪文を唱えていないぞ!?」「あの幼女……無詠唱の天才魔導士か……!?」


「いや……違う! 今のは完全に爆薬反応による──」


「おい、それを言うな!」


 


 次々と課題が出されていくが、どれもコノハたちは“科学”で対応していく。


 水を操る魔術?→空気圧とポンプで再現。

 風を起こせ?→ローレンツ力とファンで対処。

 結界を張れ?→絶縁構造+圧電素材を用いた即席電場制御。


 結果──


 


「──特級合格」


 


 審査員全員が、無詠唱・無触媒で全魔術再現を成し遂げた彼女らに、最高評価を与えた。


 


「……で? これからどうするの?」ユイがポツリ。


「なにが?」


「王国側が、コノハたちを“魔導院特別候補生”に任命したがってるらしいわよ」リリカが告げる。


「うぇぇぇぇぇ!? そんなの聞いてないってば!!」


 


 こうして、科学の力で魔法世界を震撼させる幼女科学者たちの存在は、徐々に王国中に知れ渡ることとなる。


 


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