33話「その名も“まおほいけん”計画始動!王都復興、ちょっと休憩」
33話「その名も“まおほいけん”計画始動!王都復興、ちょっと休憩」
事件の翌日。
王都・臨時政庁──通称・仮政府タワーにて。
「誘拐事件の余波は予想以上です。報道規制はしているものの、各地から不安の声が……。よって──」
高官たちに囲まれた円卓会議室の最奥。
金色の刺繍入りローブを纏った一人の老貴族が、荘厳な口調で言い放つ。
「王都復興作業は、すべて一時中断とします。期間は最長で一週間」
リリカは、思わず椅子ごとひっくり返りそうになった。
「えぇ!? せっかくインフラ班が調査開始したばっかりだったのに!」
「民の安全と不安解消が第一だ。騎士団の再編や遺児対応も急務。復興はその後だ」
「……くっ」
悔しげに歯噛みするリリカ。隣ではサクラが「あ、じゃあその間にちょっと休み……」と呟くが、瞬時に科学幼女たちの目がギラリと光った。
「ふふ……そうか、一週間あるのね?」
「ええ、そうかそうか、逆にチャンスってことじゃない?」
「どうせやることないなら、魔王城を我ら科学部の――」
「保育園兼研究所兼寮にしてやろうぜ!!!」
その瞬間、全員がピタリと一致した。
⸻
魔王、絶句す
数時間後──魔王城・謁見の間。
「お前ら……本気か?」
魔王ルークは、あまりのテンションの高さに押され気味だった。
「この一週間で! 魔王城をまるごと近代化する!」
「保育園としての法的基準? 知らん! そもそもこの国、保育制度ないでしょ!」
「この際、居住機能も追加だ! グレイとサクラ先生も住もう!」
「ちょ、え、私まだ正式採用じゃ──」
「黙って住んで! もう住んで!」
「魔王城を……保育園に……?」
魔王は天を仰いだ。
「しかも、改装後の名称は──」
「まおほいけん(魔王保育研究拠点)」
「どうしてそんなダサい略称に!? 魔王って字、残す必要ある!?」
⸻
改装計画、スタート!
早速、科学幼女たちは持ち前の技術と転生知識を動員し、魔王城の改装を開始した。
•第一期工事:保育園フロア整備
•謁見の間はお昼寝ルームへ転用。絨毯を敷き詰め、天井にプラネタリウム機能を設置。
•元・牢獄は絵本ライブラリと音楽遊び室に転用(元が牢獄とは思えぬ癒し空間へ)。
•第二期工事:研究室ゾーン構築
•地下階は各科学者専用のラボへと変貌。爆発対策魔法陣も施されており、爆発してもOK。
•グレイの研究室は「筋肉進化論再検証室」と名付けられ、早速コノハと論争勃発。
•第三期工事:居住スペース整備
•東塔には幼女専用ドミトリー、名前は「ちび☆キャッスル」。
•サクラ先生用にはバリア付きの静音居室「しずかなる部屋」が与えられた(寝不足対策)。
•魔王には誰も触れない「魔王専用トイレ」が残された。
「うおおおおお! トイレだけ原状維持ぃぃぃ!!」
魔王、号泣。
⸻
保育園、運営方針を決めよう!
一通り改装が終わった後、リリカが宣言する。
「これより“まおほいけん”の運営会議を始める!」
「園の方針は? 教育方針は? 食事は? お昼寝時間は?」
「いや、それより保護者いないのに誰を保育すんの!?」
という根本的なツッコミは無視され、議論が白熱。
「科学と魔法のハイブリッド教育だよ! 魔法で野菜を育てて、科学で料理する!」
「トイレの水は自動洗浄魔法+節水リサイクルシステムにしてるから清潔!」
「ちゃんとお昼寝時間に“無重力魔法”使ってリラックスできるようにしたし!」
「それ保育っていうより宇宙ステーション……!」
⸻
そして──
その夜。まだ仮運営とはいえ、魔王城の空気はがらりと変わっていた。
「おれの……おれの城が……保育園に……なった……」
「魔王保育所って名前、結構評判いいらしいよ?」
「うるさいわ!」