18話「科学幼女、魔法学園の秘密図書館で禁断の魔導書を発見!?科学の限界を超える謎に挑む!」
18話「科学幼女、魔法学園の秘密図書館で禁断の魔導書を発見!?科学の限界を超える謎に挑む!」
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「――ねえ、ここ、入ってよかったのかな?」
ハルナがぽつりと呟いたその場所は、王立魔導学園の地下五階、誰もいない秘密の図書館だった。
「このフロア、立ち入り禁止じゃなかったっけ?」
サリーが小声で言いながら、埃を被った本棚に指を滑らせる。
「だからこそ、調べる価値があるってもんでしょ」
コノハは懐中電灯(自作)を掲げ、光の先に並ぶ重厚な魔導書たちを見渡す。魔力感知防御を迂回し、リリカからこっそり入手した許可証を使って侵入したのだ。完全にアウトな行動だったが、彼女たちにとっては科学的探究の一環である。
「お、見て! これ……“破滅ノ書”って書いてある」
ユイが見つけたのは、黒い革で装丁された、まるで生き物のように脈動する魔導書だった。
「なにこれ、わたしたちの世界で言うなら、超高密度暗号化された核融合マニュアルみたいなもん?」
「つまり、読んじゃダメなやつってこと?」
ハルナがきょとんとする。
「……読もう」
全会一致だった。
【5分後】
「解析できた!」
コノハが叫ぶ。
「この魔導式、量子位相干渉のパターンと同じ構造してる。魔力で展開されたエネルギーが――」
「つまり、召喚系の高度複合魔法ってこと?」ユイが追いかける。
「いや、たぶんこれ……」
ゴゴゴゴゴゴ……!!!
突然、部屋が揺れた。地鳴りとともに、空間が“裂け”た。
「おい、これ……召喚儀式になってるだろ!!!?」
「誰か戻せェェェェ!!」
時すでに遅し。
閃光が走り、空間の裂け目から何かがずんと足を踏み出す。
「フハハハハ……貴様らが我を呼び出したか……」
そこに現れたのは――漆黒のマントを翻す、角付きの白髪イケオジだった。
「って、えっ!? ルーク!? うそ、ルークじゃん!!」
そう叫んだのは、幼女達を探しに来たリリカだった。
「……ああ? リリカ? って、ええ!? ええええええ!!???」
魔王(らしき男)は目を見開き、まさかの再会リアクションを返してきた。
「まじか、リリカ! 60年ぶり!? めっちゃ老けたと思ったら若返ってるじゃん! え、どういうこと!?」
「そっちこそ生きてたの!? あのとき消滅したと思ってたのに!」
「いやまあ、死んだけどさ、魂だけは転がってて……で、今に至る」
科学幼女たちは完全に置いてけぼりだった。
「……え? 魔王様って、先生の元カレとか?」
「ちげーよ!! ただの戦友だよ!!」(魔王)
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リリカが事情を説明した。
「この魔王、ルーク=アナレクトは昔……私がまだ王国の魔導隊長だった頃の敵。でも、戦いの中で共通の目的ができて……最後は共闘した」
「そして俺が死んだと思ってたら、まさか生きてて、今また転生して出てきたってわけさ!」
魔王が笑いながら言った。
「だが、俺はもう戦うつもりはない。……魔界も滅んだし、こっちの世界でのんびり生きたい」
リリカが困ったように笑う。
「じゃあ、ここで保育士でもやる? 人手足りないし」
「……え?」
「え?」
「採用でーす☆」
サリーが拍手した。
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こうして、かつて世界を滅ぼしかけた魔王ルークは、魔導学園付属の保育士として再就職を果たしたのだった。