15話「ユイの物理実験大失敗!巨大な水爆弾が誕生!?!」
15話「ユイの物理実験大失敗!巨大な水爆弾が誕生!?!」
その日、科学拠点α──かつての魔王城では、異常な湿度が発生していた。
「……むしあつい……」
サリーが額に汗をかきながら呟く。
「湿度87%、気温32度。室内なのにこれは異常ですね……」
ユイは額に温度計をあてながら呟く。
「ちょっとぉ……エアコンまだ完成してないの!?」
コノハが汗だくでツインテールを振り回す。
「エアコンはダクト配管と冷媒の循環を先に──って、それより実験の準備が!」
そう。今日の本題は。
ユイによる、重力魔法のベクトル応用に関する水の質量保存実験である。
「つまりこうです。重力を一点集中させ、浮遊した水球に対して圧力をかけたら、空中水爆弾が完成するのでは……と!」
「え? それ、まんま危険じゃ……」
「でも爆発しないように絶妙に制御してますから。大丈夫。今回は……!」
⸻
「うう……ユイちゃん、はやく終わらせてぇ……」
ハルナは泣きそうな顔でコノハの袖を引っ張る。
「ねえねえ、わたしの抱っこは!?だっこタイムは!?(ぷんすこ)」
「はいはい、ハルナはよくがんばったから、あとで抱っこされ放題だよ……」
コノハは苦笑しながら、ハルナの頭をなでる。
「おつかいがんばったのにぃ……まだ“えらい”って言ってくれてないもん……」
サリーがなだめようとお菓子を差し出すが──ハルナ、ぷいっと顔をそむける。
「ちがうの!いまはね!ぎゅってされたいのぉ!!」
(かわいい)
⸻
その頃、実験室ではユイが真剣な顔で操作していた。
「……重力場、安定化成功。空中水球、直径1.2メートル。密度変動、なし。よし、仕上げに──」
ぷしゅう……ん?
一瞬、重力魔法陣の片方が揺らいだ。
「──ってああああ!?!?!?!?!?」
ぐわあああああああああ!!!!!!!
ユイの叫びと共に、天井近くまで浮かんでいた巨大な水球が、一瞬で落下→超圧縮→爆散。
ドオォォォォォン!!!
魔王城が揺れるほどの轟音が鳴り響いた。
⸻
5分後。
科学拠点αのホールには、全員びしょ濡れの幼女たちが並んでいた。
「……だから言ったじゃん……」
コノハがずぶ濡れの髪を絞る。
「ちゃんとレイヤー安定確認しないとだめって……」
サリーが眼鏡を外して拭きながら言う。
「ご、ごめんなさい……でも今回は比較的被害は軽微で……」
ユイはしおれていた。
「ぐす……ぐす……おつかいしたばっかりなのにぃ……」
ハルナは半泣きで、ぬいぐるみを抱きしめていた。
「ハルナ、えらかったよ。だいじょぶ。これからは抱っこされ放題だからね」
リリカが優しく抱き上げると、ハルナはようやく落ち着きを見せた。
⸻
「ユイ、原因の解析は?」
「……重力魔法式と魔力供給の同期不良による、場の歪みですね。要するに、初期化忘れです……」
「それ、爆発して当然では……」
コノハがツッコむ。
「しかしですね、得られた水の挙動データは貴重で──」
「データより現場復旧だってば!!」
⸻
数時間後。
なんとか掃除も終わり、ようやく落ち着いた科学幼女たち。
その夜、ハルナはいつものようにリリカに抱っこされながら、ぐずぐずとまぶたを閉じていった。
「リリカせんせぇ……」
「なに?」
「……あしたも、おつかい……いかなくていい……?」
「うん、あしたはおやすみ」
「……よかったぁ……」
ハルナはにっこりして、ようやく夢の中へ。