13話「これが“化学兵器”!? サリー、誤って王都に煙幕ガスを放出す」
13話「これが“化学兵器”!? サリー、誤って王都に煙幕ガスを放出す」
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魔王城跡、科学拠点αの研究室は今日も活気にあふれていた。
サリーは真剣な表情で試験管を覗き込み、小型の蒸留器の前で慎重に薬品を混ぜていた。
「サリー、何作ってるの?」
コノハが興味津々で近づく。
「えっとね、煙幕ガスの試作よ!魔法の煙玉みたいに、敵の視界を遮るためのもの。これがあれば、戦闘でも有利になるはず!」
サリーはそう説明しながら、化学式とにらめっこしている。
「なるほど、科学の力で戦術的に魔法を補完するわけか」
ユイも頷きながら、研究ノートにメモを取る。
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研究室の外では、ハルナが火球魔法の訓練で使った燃焼実験の後片付けをしていた。
そのとき、不意に煙が流れ込んできて、目をしばたたかせる。
「うわっ、なにこの煙!?」
慌てて咳き込みながら、拠点の窓を開けて換気を始める。
「サリー、もしかして……?」
「やばい!ちょっと混合ミスしたかも!」
サリーの声が遠くから聞こえる。
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一方、王都の街中。
突然、もくもくと白い煙が立ちこめ、人々が咳き込みながら逃げ惑っている。
「な、なんだこの煙は!?視界が悪くて歩けん!」
「こ、これって……化学兵器!?まさか魔族の仕業か!?」
兵士たちも動揺を隠せない。
だが、その正体は――科学拠点αから誤って漏れ出たサリーの実験用煙幕ガスだった。
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拠点に戻ったリリカは深刻な顔で言った。
「サリー、これはただの煙じゃないわ。化学反応で酸素を薄めるタイプの煙幕よ。強すぎると呼吸困難になる危険があるの」
「ご、ごめんなさい!こんなに広がるなんて思わなかった……」
「これからはもっと慎重にやりましょう」
リリカはやさしく諭すが、コノハは苦笑いしながら
「まぁ、科学の実験にはリスクもつきものだよな。でも王都に撒くのはやめてくれよ……」
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その夜、科学拠点αの大広間で。
「次は安全装置付きの煙幕を作るか……」
サリーは決意を新たにした。
「みんな、これからもっといろんなことに挑戦していこう!」
ユイが笑顔で続ける。
「科学も魔法も、全部味方にしよう!」
ハルナも力強く頷いた。
「よーし、これからが本当の勝負だ!」
コノハの声が響く。
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魔法と科学が交差する世界で、彼女たちの冒険はまだまだ続く――。