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プロローグ

 アレクサンドラ・フォン・シュテルーベルグ。

 国の英雄として数々の武勲を誇る辺境伯の末娘に生まれた私は、唯一の女児として屈強な父上と兄上たちに囲まれ過保護に過保護に育てられてきた。領地の鉱山で産出するカラーストーンが好きでよく視察にくっついていったけれど、それ以外はどちらかといえばおとなしい方だった、と思う。

 でもそれも今日で終わりだ!!!!


「おはようございますアレクサンドラ様、今朝のお加減はいかがで──っ?!」


 控えめなノックとともに入室した私付きメイドのリーゼがこちらを見て絶句した。それもそうだ、今まさに私は自身の長かった髪をざっくりと切り落としたところだったからだ。


「おはよう、リーゼ」


 何でもないような私の挨拶にハッと再起動したリーゼは、廊下に向かって何か言付けると机の方に向かって来た。


「アレクサンドラ様、御身体は……それに御髪が……」

「もう大丈夫よ。

 髪はちょっと……気分を変えたくて」


 いつもはにこにこと明るいリーゼもさすがに困惑した表情だ。そうこうしているうちに父上たちが扉を壊す勢いで飛び込んできた。


「サンディっっ」

「一体何があったんだ?!」

「ああっ本当だ! サンディの綺麗な髪が……!」

「短いのも可愛いね。切った髪は僕がお守りにもらってもいいだろうか?」

「あなたたち、ちょっと落ち着きなさい」


 母上の一言に父上と兄上三人ともが口を閉じぴしりと整列する。ちょうど朝の鍛錬が終わったところだったのか、皆模擬剣を腰にさしたままだ。


「……サンディ、体調は大丈夫なのかしら?」

「はい、問題ありません」

「そう、それは良かった。

 けれど、頭を打ったのだから油断してはいけませんよ」


 素直に首を縦に振る私に母上もホッとしたように頷く。そういえば魔獣から逃げる途中落馬してしまったのだった。そのおかげで色々思い出したのだけど。


「それで、その髪は何故短く?」

「母上……私、強くなりたいのです!」

「強く、とは?」

「武術を習いたいです!」


 父上のように槍を、兄上達のように弓や剣、攻撃魔法を扱えるようになりたい。そう具体的に告げると整列している父上たちがそわそわしだしたのを母上がひと睨みで黙らせる。


「わかったわ、それならまずはもう少し安静になさい。

 身体を動かすのはお医者様の許可が出てからよ」

「はい!」


 リーゼに私のことを託すと、こちらをちらちら見る父上たちを引っ張って部屋から出ていった。

 リーゼがざんばらな髪を整えてくれ、簡単な朝食をベッドの上で終えると一人にしてもらう。

 さて、これからのことを考えよう。

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