1.プロローグ
むかし、むかし、ある所におじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんは山へしば刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。
おばあさんが川で洗濯をしていると大きな桃が、どんぶらこどんぶらこと流れてきました。
おばあさんが桃に手を伸ばすと眩しい光に包まれて、桃は消えてしまいました。
「勇者よ、世界を救うのです」
「………」
荘厳な空間で光輝く女神が優しく言葉をかけたが、返事がない。
不信に思い、女神は目を開ける。
そこには、大きなとても大きな桃があったのだ。
「えぇ~!?どうしよう?召喚失敗しちゃった!うぅ~…また他の女神にバカにされちゃうよぅ」
悩んだ女神はある結論に至りました。
「そうだ!失敗したのはそこらにぽいっしちゃって、良いのだけ送っちゃえ!」
女神は召喚した桃を世界の何処かに転移させ、新たに召喚を始めました。
「勇者よ、世界を救うの…えぇ!?貴方、なんで急に老けたの!?直ぐ死にそうな勇者とか駄目!」
「勇者よ…って、なんで赤い頭巾を被った少女が来るの!?これから戦いとか無理だよね!」
「ゆ…。???。にん、ぎょ?なんで、人魚が?」
「……、猿?」
何度も何度も何度も。
召喚と転移を繰り返した女神は漸く、求めていた普通に出会いました。
「勇者よ、ぐすっ。世界を、救って。(T^T)」
「え!?ゆ、勇者!?」
召喚されたのは日本のごく普通の男子高校生。
この普通の人を喚ぶのに三桁はガチャをした女神は疲れていて、安心した。
もう、召喚をしなくて済むと。
この後、勇者は世界を救うため仲間たちと旅に出るだろう。
だが、この物語は勇者の話ではない。
幾百の童話の住人たちの異世界生活の物語である。
「はぁはぁ…間に合わなかった、のか」
男は雨の中、馬を走らせ故郷の村に帰ってきた。
だが、村は魔物の襲撃により破壊尽くされていた。
クエストを受けるために町に行っていたせいだ。
男は自身の罪だと嘆き泥だらけになりながら地面を何度も何度も傷だらけの拳で打ち付ける。
そんな男は僅かな鼓動に気付く。
「………?まさか、生きているのか?何処だ!」
駆ける。
弱い鼓動が消えてしまう前に。
暗く冷たい世界から救うために。
男は遂に見付ける。
「よがっだ。まだ、ぃぎでる゛」
尖った木や石で血だらけになりながらも探し続けて、独りの赤子を救う。
「誰の子だろうか。何か、手掛かりは。…これは」
赤子の側には潰れた大きな桃の欠片と壊れた蝋板に……。
「桃……赤子?」
蝋板には元々、『大きな桃 中に赤子』そう書かれていたが、壊れて読める部分がそこしかなかった。
「そうか、お前。桃が好きなんだな。見たところ、男の子…。お前の名前はモモズキだ!」
残念なネーミングセンスだった。
思い付いたが吉日。
異世界に転移転生してしまったお伽噺の登場人物たち。
彼らは、これからどうなるのか。
作者にもわからん。
桃太郎とか浦島とか赤ずきんとか人魚姫とか出るけど
名前は変えるし、そもそもパブリックドメインだから大丈夫だよね?