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第29話

リタの家は地方の貴族である。

田舎の貴族とは言えど由緒正しい騎士の家で、子供は男女問わず剣を持つこととなっていた。

彼女の上には兄が2人おり、下にはヨハナがいる。

兄二人は幼いころから剣に関して天賦の才があった。

両名とも騎士であった父や母は大層喜んだ。

対してリタは才能が無かった。

だがリタは諦めることなく、剣を振り続けた。

しかし振れども降れども剣は上達しない。

年下の女の子にも、負けるようになってきた。

両親は肩を落とした。


自分には剣の才能がない。

ならばと、次にリタが興味を示したのが魔術だった。

家ではだれも魔術をやっていない。

魔術は忌むべきものだと考える親だったからだ。

だが、比べる者が居なければ、失望されることはない。

魔導士として大成し、両親を喜ばせようと決意した。

そう思って、リタは両親の反対を押し切り魔術を勉強したが、その努力は直ぐに裏切られることになる。

4つ年下の妹が、魔術の天才だったのだ。

あれだけ勉強した習得した魔術を、妹は何と5歳で成し遂げてしまった。

両親は、リタに憐みの目を向けた。

リタは絶望した。

自分は何をやっても、家族の中で落ちこぼれなのだと考えた。


次第に彼女は魔導士養成機関の試験科目ですらない召喚術に傾倒し始めた。

召喚術など、マイナー中のマイナーの魔術。

いくら博学になっても、評価する人が居ない。

だが、リタは考えていた。

召喚術こそ、本当に競争相手が居ない分野なのだから、これを突き詰め、いつか評価してくれる人が現れれば、家族も認めてくれるだろう。

そして、アズマの召喚に成功した。

アズマは強かった。

彼ならば、戦争でも戦える。

それに家族が戦うのに、騎士を志す自分が逃げるのは忍びない。

彼の力を借り、家族を守る。

しかも戦果を挙げれば、家族に認めてもらえるだろう……。


まとめるとそんな話だ。


「……以上だ」

「そうか」


そうだったのか。


やはり家族が戦うのに、逃げられないと言っていたのは、限りなく嘘に近いグレーだった。

本心は、家族と共に戦って、力を認めてもらい、自分は落ちこぼれではないと証明したかったのだ。

確かに、リタの戦争参加の理由は他人本位すぎた。

だが、他人のために、身を粉にする精神は美しいと俺は思った。

リタは立派な少女だ、と。

そういう人間なんだ、と納得したつもりでいた。

だからどこか憧憬の念を抱いた。

協力しようと思えた。

だがよく考えれば違和感があった。

人間は、利己的な生き物だ。

しかも、未来あるたった14歳の少女が、家族のためだけに命を懸けるのは、不自然だった。


「どう、思った?」

「そうだな……確かにそんな理由で戦おうとしてたんなら残念だな」

「……すまない」

「でも、……なんか、腑に落ちたわ」

「?」


騎士の訓練所でも、家でも落ちこぼれと言われていたリタ。

言われ過ぎて、慣れてしまったリタ。

そんな状況で、鬱憤がたまらないはずがないのだ。

自分は落ちこぼれじゃない。

剣も魔法も天才じゃないが、召喚術にちゃんと才能がある。

そう認められることを渇望するのは、当然だ。

人間らしいじゃないか。

遥かに納得できる理由だ。

情けないが、親しみが持てる。

良い理由だ。俺は嫌いじゃない。


「わたしのことを、嫌いになったか?」

「……いや、寧ろ。リタを応援したくなった」

「応援?」

「そうだ」


リタの心情を聞き、俺ははるか昔の事を思い出していた。

かつての仲間たち。

強く、賢く、美しかった彼らにいつも引け目を感じていた俺も、

常に認められることを目的に動いていた。

結局はどんな行動も彼、彼女のお眼鏡には適わず、目をひそめられるばかりだったが。

遠い遠い昔の話ではあるが……。


「リタ、なんで最初からそう言ってくれなかったんだ?」

「自分勝手な理由で、協力してくれるとは思わなかったんだ

 ……もちろん家族のために戦いたいのも、本心だ」

「そうか、でも俺はこの理由の方が好きだ」

「そうなのか……?」


意外そうな不思議そうな。

そんな感じだった。

彼女の中では今の話は人が聞けばなじられるような内容なのだろう。

確かに自己中心的だしな。


「俺とお前は似てる」

「アズマとわたしが?」

「見栄を張りたい落ちこぼれ同士な」

「そうなのか?」

「そうなんだ」


俺の場合は過去形だが。

過去の事だからこそ、今のリタと自分を重ね合わせる余裕がある。


「ま、約束もしてたし、納得もしたし。

 この先の戦いももちろん協力する。こっからはリタが少しでも活躍できるようにな」


俺は右手を差し出した。

これまではリタの考えを理解できないでいた。

家族のために戦ったり、自分の利益を優先しなかったり。

優しい奴だな、凄いなとは思っていたが、思考は分からなかった。

だがこれからは違う。

彼女は俺に似ていた。

俺に似て愚かだ。

だから考えも理解できるし、親近感もわき、やる気も出てきた。

やってやろうじゃないか。

改めて、愚か者の力を合わせようじゃないか。


「……アズマ」

「なんだ」

「アズマは、優しすぎるぞ」

「そうか?」

「……絶対に邪な神じゃないな」


それは違うんだが。


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