第26話
「じゃあ、妹との待ち合わせ場所に行こう」
「遠い?」
「いや……ここからだと近いな」
「そいじゃ歩くか」
「待って……間違えた。もはやここだ。ここが待ち合わせ場所だ。
どっかに魔導士っぽい格好をした、黒髪の子が居れば妹なんだが……」
リタはキョロキョロあたりを見回した。
周りに人はほとんどいないので、すぐ見つかりそうだ。
しかし、魔導士っぽいローブに帽子の格好の奴らばかり。
手掛かりは黒髪の女の子くらいか。
俺も探す。
「……いないな」
「ああ、いねーな」
男、男、獣人、老人、リタ、イケメン。
大通りだというのに、人影はたった六人分だ。
……おや。
よく見ると、建物と建物の間に人が、幼女が居るではないか。
幼女は確かに黒髪だが、様子がおかしい。
体半分を建物に隠し、警戒するようにじっとこちらを見ている。
「あれじゃないか?」
俺が指さすと、リタが頷く。
「あれだ……。おおーい! ヨハナ!」
名前を呼ばれ、幼女ヨハナはおずおずとこちらにやってきた。
目は、明らかに俺を警戒している。
「お、お姉ちゃん?」
「どうした。そんなに不審な動きをして」
「いや、お姉ちゃんが男を連れてくるなんて思わなくて」
「なんだ、そういうことか」
なるほど、リタが男を連れてきたのが珍しいのか。
これは心配させてしまったな。
では挨拶でもするかな。
「はじめまして。アズマです」
「……お姉ちゃん。これなに?」
「何だと思うよ?」
俺は意地悪な笑みを浮かべてヨハナに問う。
彼氏とか勘違いすることを期待して、だ。
少し考えるそぶりを見せ、ヨハナははっとした。
「奴隷?」
奴隷。
幼女からそんな残酷な言葉が出るのは意外だ。
いやいや、どういう勘違い?
俺とリタって奴隷と主人に見えるの?
召喚獣だから間違っては無いんだけど、違うと言いたい。
「奴隷ではない」
リタが否定する。
「じゃあなに?
……もしかして男娼でも買ったの?」
談笑?
ダンショウ?
男娼?
幼女からそんな言葉が出るのは意外を通り越して教育を疑う。
この子の親は一体何をしているのか。
ヨハナがなぜ男娼を覚えるに至ったのか問いただしたい。
「だ、ダンショウ?」
ほら、リタもそんな単語知らないのに。
「……違うの? なら、まさか、彼氏?」
「か、彼氏ではない!」
いや、勿論違うんだけどさ。
なんで最初からその答えが出てこないの?
男の性奴隷に男娼なんて思春期っ子でも中々思いつかないよ?
顔を真っ赤にして否定するリタよりも、ヨハナの方が大人知識を持っているのは違和感がすごい。
「俺は奴隷でも男娼でも彼氏でもない。ただの邪神だ」
「邪神?」
異常者を見るような目。
「……だれも信じないし、友達って事にしといてくれてもいい」
ヨハナはじろじろ俺を見ると、頷いた。
「邪神さんだね。分かった。お姉ちゃんのイタい仲間ってことで覚えとく」
イタいは余計では?
まあ、初対面で邪神です。と言い出す男とか、イタさの権化でしかないか。
ヨハナは姉の厨二フレンドだと俺を認識したらしかった。
まあいいんだけどね。
俺もみんながみんなに邪神だと信じてもらう必要は無いと思ってる。
まあ、まだ信じてくれてるやつゼロなんだけど。
「邪神さんはあそこ行くの初めて?」
「ん?」
あそこ、と言って彼女が北の方向を指さした。
その先にはホグワー○魔法学校っぽい建物、ビブリア本研究所がある。
「初めてだ」
「そう。じゃあ心くすぐられる物一杯見れるかもね!」
ついて来て! とヨハナは丘の中央へと歩き出した。
俺達もそれに従った。




