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キャンディ


 ミランダのキャンディを恨みがましく見ていると、パーシヴァル様が笑いながら、スーツの内ポケットから、小さなキャンディの袋を取り出した。


「キャンディなんて子供っぽいかなって思ったんだけど。可愛かったから…。溶けてたらごめんね。」


 なんと、胸ポケットよりさらに内側にある内ポケットで温められたキャンディ。ご馳走様です。

 これ、ミランダ。喜びにうち震える私を、そんなに蔑んだ目で見るのはやめたまえ。まあ、今の私は最強なので、そんなもの痛くも痒くもないがね。


 キャンディの袋を開ける。ちいさなちいさな白い花の形をしたキャンディだ。袋を傾けるとさらさらと手のひらに二粒転がり出た。


「小さくてかわいいだろう。レディ・エスメラルダみたいだなと思って。」

 パーシヴァル様の指が私の手のひらのキャンディを一粒摘まんだ。私の唇にそっとキャンディが差し込まれた。

 唇にパーシヴァル様の指がかすかに触れた。以前のように電気が走ったような感覚ではないけれど。胸の高鳴りと共に切ないような、それでいて妙にしっくりと落ち着きを覚える不思議な感覚が走った。


「美味しい?」


 ちいさなキャンディはあっという間に口の中で溶けた。柑橘系の爽やかな香りがした。

 私は導かれるように手のひらのもう一粒をそっと指で摘まんだ。

 伸ばした手がパーシヴァル様の口元へ向かう。

少し身を屈めて下さったパーシヴァル様の口元にキャンディが届いた。

 パーシヴァル様の形の良い唇に私の指が触れた。顔が熱い。


 パーシヴァル様の舌が私が触れた唇を舐めた。

私を見つめる視線が甘い。

「甘いね。」


 こくんと頷く。

はい。パーシヴァル様、甘すぎます。

 前世、喪女たるエスメラルダには、少々刺激が強かったようです。

 鏡を見なくとも全身真っ赤なのがわかります。

ただ、惚けたように、パーシヴァル様を眺めているのが精一杯です。


「まあ、エスメラルダったら、パーシヴァルととても仲が良いのね。」ユリア王太后が後ろにいた。


 曾祖母様、いつからそこにおられました?

ユリア王太后の隣には国王陛下がいらっしゃった。もしや私、とんでもないお二人にとんでもないシーンを目撃されました?


 パーシヴァル様は、お二人の前で寸分の隙もない騎士の礼をなさった。


「いつも、冷静沈着で思慮深いエスメラルダが珍しい事だね。」


 国王陛下いやお祖父様、パーシヴァル様を鋭い目付きで睥睨するのは止めてあげて。怖いから。


「エスメラルダとパーシヴァルは血筋的にもなんら問題はないし、こうして並ぶとお似合いだと思わない?」

 曾祖母様、そう思います?私も同感ですわ。


「お母様、エスメラルダは、まだ幼い。これからいくらでも出会いはあるでしょう。」

 お祖父様、残念ながら私はパーシヴァル様以外は目に入りそうにありませんわ。


「わかったわ。でも、この先二人が望むなら叶えてあげてね。私はエスメラルダがお嫁に行くまで生きていられるか。」


 曾祖母様、ナイスアシスト!


 外堀ガンガン埋めていこう。


 あ、パーシヴァル様が嫌がるなら無理強いしないと、私約束するから。

 今のユリア王太后の言質、悪用しないと誓います。


 たぶん…。

お読みいただありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] ご返答ありがとうございます。 エスメラルダも推しからの愛が、こぼれるくらい出てきそうでワクワクです。キャハッ♡ パーシヴァルは、シリアス度高めなのですね。ドキドキ。 どの様な表現でも、お…
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