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第八話 アヤメさんと総統閣下

 最近、私のエリュさんの様子がおかしい。




 エリュさん率いる新大陸調査隊が出発して、5日。本土より、2200kmほど南の洋上。


 ここは総統専用艦『富嶽』の総統執務室、エリュさん用に設けられた部屋ですね。艦尾に設けられた、ビクトリア調のシックでおしゃれな部屋です。


 そこで、私――アヤメはエリュさんと一緒にのんびりと船旅を楽しんでいるわけなんですが……。


「どうかしましたか、アヤメさん? ボクの方をじっと見て。なにか変でしょうか?」


 じっと見つめる私の視線に気が付いたのか、ソファーにちょこんと座り、楽しげに何かの本を読んでいたエリュさんが首をかしげます。


 あざとい仕草……可愛いですね。


 そうなんですよ、最近エリュさんが可愛いんです。


 


 ここ数日……いえ、異世界転移後のエリュさんはずっとこんな感じです。


 移転直後、朝起しに行った時からですよ、こんな風になってしまったのは。


 ナイトウェアを無理やり脱がして全裸にしても無抵抗でしたし、太ももを撫でても真っ赤になって慌てるだけで、そんなに嫌がりはしませんでした。


 そして、横須賀でも。


 思い出すだけでは鼻血が出そうになります。


 エリュさんのすべすべの太ももの感触、顔を赤く染めながら必死に声を我慢するエリュさんの姿、内ももに私が指を伸ばした瞬間、我慢できず漏れ出した「ひゃんっ」という嬌声。

 背徳感が私を支配しました。


 本当に今のエリュさんは、小動物みたいで本当に可愛いです。弄りがいがあります。


 昔のエリュさんはこんな風では……って、あれ? 昔のエリュさんってどんな人物でしたっけ?


 んー?


 おかしいですね、思い出せません。あの異世界転移以前のエリュさんの人物像が。


 データとしてはよく覚えているんです。エリュさんがどういう人物であったかとか、私がどういう風に関わってきたのかとか。


 まるで、歴史書に書かれている事実を読み返すように思いかえることはできるんです。


 けど、もっと、こう……具体的な気持ちの動きとか、触れ合い方とか、そういう“記憶”が無くなってしまっていると言いますか。


 いえ、エリュさんに限った話ではないですね。


 思い返してみれば、あの日以前の“記録”は残っていても“記憶”がないんです。


 変ですね。まるで、あの日、あの瞬間まで私が存在していなくて急に何者かによって記録を与えられて作られたみたいなそんな違和感が……。


 まあ、そんなわけないですよね。




 とにかく、エリュさんが可愛すぎるんですよ。


 今の私にとっての最優先事項は、この可愛すぎる私のエリュさんを愛でることです。


 一週間の予定の船旅は後半に差し掛かり、私たちがいる場所は本土より、2000km南方の海域、だいぶ赤道に近づいてきています。


 これが、どういうことを意味するか……。

  

 そう、答えは一つ。

 

「して、エリュさん、暑くないですか?」


「えっ、急にどうしたんですか? 確かに暑いですけど」


 気温の上昇。


 そして、その解決策は……。


「この船ですね、プールがあるんですけど……寄ってかない?」


「プールですか? いいですねぇ」


 私の提案に乗り気なエリュさん。

 

 そう、豪華客船と言えばプール。総統専用艦『富嶽』は高速客船の設計を流用、改造したものなので、当たり前のように甲板上にプールが付いてきているんです。

 

 イエス! エリュさんに水着を着せるチャンスと言うわけです!


 おまけに、この『富嶽』の乗員はエリュさんに危害を与えないように全員女性。気兼ねなく、エリュさんを水着姿にすることができるわけです。


 いやー、いつ切り出そうかと迷いに迷いましたよ! 新大陸が南にあると聞いた時からこの『エリュさん水着化計画』を立てていたんです。


 まだ本土付近は春ですから、出港早々にプールの話を切り出すのはおかしい。だから、気温が上がる赤道付近に到着するまでずっと我慢してきたんです。


 やっと、ちょうどいい気温になってきたので水着を着せることができるんです。


「けど、アヤメさん。水着、用意してるんですか? ボクは持ってきていませんよ?」


「ええ、もちろん、プロですから。用意してますよ、ほら、こんなのどうですか?」


 じゃーんっ、と、ポケットから破廉恥極まりない紐ビキニを取り出してみます。もう、着たら隠さないといけないものがもろに出てしまうような水着です。


 げっ、と嫌そうな顔をするエリュさん。ふふん、まあ、それは予想通りです。からかっただけです。


 仮にも大和帝国の総統であるエリュさんに、こんな変態じみた水着なんて着せられませんよ。


「……冗談です。ほら、好きなのを選んでください」


 今度は真面目に用意していた水着を机の上に並べます。


 白ビキニ、黒ビキニ、フリル付きの可愛いやつとか、これまた冗談で用意したスクール水着とか、とか、とか。


 これで、エリュさんの水着の好みを調べようというわけですね。


 さあ、どうですか……? 


 って、あれ、エリュさん、選ばないんですか? 


 なんでそんな不審そうな顔でこっちを見てるんですか?


「なぜ、ポケットの中にそんなものが入っているんですか? 普通ポケットに水着なんで入れませんよね?」


「えっ、そうでしょうか……生憎常識というモノとは無縁でして」


「ふーん」


 じーっ、と私のポケットを見つめるエリュさん。そんなに見つめても、変なものは入っていませんよ? 


 それよりほら、どれがいいんですか? 私のお勧めは白ビキニですよー。選んでもらえないかなー、とチラチラ視線でアピールしてみます。


「……そうですね、じゃあ、これで」


 暫し悩み、エリュさんが選んだのは――冗談で入れておいたスクール水着?


 いや、えっと、なんということでしょう。まさか、エリュさんには、そう言う性癖が? これは、私もスク水を着たほうが?


「アヤメさん、なんか変な妄想してません? 単に一番露出が少ないのがこれだから選んだだけです」


「ああ、そう言うことですか」


 ちょっと混乱しちゃった私に、呆れたようにエリュさんは言いました。


 なーんだ。スク水好きの変態ではなかったわけですか……なら、ふむ。


「じゃあ、この白ビキニにしましょうね」


「なにが“じゃあ”なのか分かりませんけど」


「スク水を選んだ理由が面白くないので。私の好みで選ばせてもらいます」


 私が言いきると、はぁ、とため息をついて「結局、ボクに選択権はないんですね」と諦めるエリュさん。

 察しが早くて助かります。さあ、お着替えしましょうね?






 ……と、言うわけで「ここで着替えるんですか? 更衣室とかは!?」と抵抗するエリュさんをサクッとビキニ姿に変身させたわけですが。


 ふむ。


 確かに可愛らしいですよ? 


 エリュさんの清楚で天使のような雰囲気と、真っ白な水着は私の予想通りよくマッチして、神秘的ともいえる領域にまで達しています。


けど、物足りないですね。特に太ももあたりが。


「あのー、そんなにじろじろ見られると……」


 もじもじといじらしく恥ずかしがるエリュさん。


 ……そうだ。


 革新的なことを思いつきました。エリュさんに、ニーハイソックスを手渡します。


「これを履けと?」


「ええ、何か問題がありますか?」


「水着ですよ?」


「わかっています。けど、やはり時代はニーソを求めているんです」


 ねっ、お願いします! と頭を下げれば、しぶしぶと言った様子でニーソを履いてくれるエリュさん。

 ちょろいですね。


 そして、完成しました。


 なんという背徳感。絶対領域!


 エリュさんの白くて細い太ももが、ニーソとビキニに挟まれ破壊的な絶対領域を生み出しています。

 ビキニとニーソ、こんなバカげた組み合わせなのに……なんと、美しい!


 これは新たなる太もも革命ですね。


 流石国民から『太ももの総統閣下』と呼ばれるだけのことはあります。わが国民の性癖を歪ませた太ももは伊達ではないのです。






 そう言うわけで、準備もできたことですし。


 エリュさんを連れて、甲板上に出て、楽しみにしていたプールにやって来たわけなんですが……。


「やあ、総統閣下、私もお邪魔していいかな?」


 とんだ邪魔者がやって来たんですよ。


 富嶽の甲板中央部、そこに設けられた小さなプール。


 私たちが到着したほんの数分後。プールサイドにて、エリュさんと日焼け止めの塗り合いっこをしようと画策していたその時、黒ビキニ姿で堂々とやって来たんですよ。


「えっと、あなたは艦長さんですね」


「海上親衛隊大佐、夜桜よざくら 麗華れいかです。お見知りおきを、閣下」


 あの爆乳女が。


 夜桜 麗華。海軍の家系出身の能力だけを見れば優秀な親衛隊員です。その能力ゆえに、この総統専用艦『富嶽』の艦長を任せていますが……個人的な感情からすれば気に入らない女です。


 ほら、私のエリュさんに気安く話しかけて……。しかも、あの水着、私と同じデザインなんですよ。黒ビキニ。

 合わせてきましたね……私と戦うために!


 私の視線に気が付いたのか、胸を張ってそのはしたない胸を見せつけてきます。


 私のエリュさんを奪うつもりですね。きっと、総統であるエリュさんの寵愛が欲しいんですよ。権力欲に満ち溢れた爆乳女め!


 せっかくのエリュさんと私の二人っきりのプールなんです、何とかして追い返せませんかね?


「おやおや、これは艦長殿。こんなところにいてもいいんですか?」


「おお、これは親衛隊長官のアヤメ殿。いやなに、閣下が我が艦に乗艦されるとあっては艦長自らおもてなししなければ無礼かと思いましてね」


 嫌味っぽく挑発してみれば、さも当然のように言い切る巨乳。ええい、エリュさんの目が、あの女のおっぱいに釘付けじゃないですか!


 くっ、私にあの女と戦えるだけの胸があれば……。エリュさんほどではないですけど、私のそれも平たいですからね。


 しかし! まだ私の敗北が決まったわけではありません!


 胸の大きさが戦闘力の決定的な差ではないということを教えてやる。


 私はエリュさんの副官として300年くらい一緒に過ごしてきたんです! 設定ではそうです! 記憶の方はあいまいですけど!


 ぎゅーっと、エリュさんを後ろから抱きしめます。ただ抱きしめるだけじゃないんです、胸を押し付けるんです。


 さあ、勝負です。爆乳女ッ!


「ちょ、痛いですよ、アヤメさん! どうしたんですか、急に抱き着いてきて」


 えっ、痛い? 柔らかいじゃなくて? あのー、押し付けているんですけど、胸。


 あっ、だめっぽいですね。


 やっぱり私も太ももとかで勝負しましょうか?

 実は筆者はミリタリー初心者でして……。

 こんな兵器を使ったら面白い、こういう描写はおかしいなど、ミリタリー好きのご意見、ご指摘があればぜひ感想の方で教えてくれると嬉しいです。

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