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第七十七話 ルーナ攻略戦

 つい数か月前まで、我が世の春を謳歌していた男――ルーナ帝国皇帝ユリエス・ガリウスは、彼の人生で最大の危機に瀕していた。


 つい少し前まで何もかもうまくいっていた。


 ダークエルフと手を組み、アルバトロス連合を裏切り、栄光あるルーナ帝国を建設する。


 作戦は上手くいき『ガハラ門の戦い』にて、アルバトロス連合軍を消滅させる大戦果。それから、軍を率いて隣国フレートに攻め込み、その多くを占領。


 まさに、人生の絶頂……そう思えるほどだった。




 だが、そんな彼の人生は一転。急降下からの地獄への一直線。


 彼の計画は、あくまで大和帝国がアグレッシブに動かないことが前提だった。


 周辺国に侵攻してもそれはアルバトロス連合内の内政問題、自国に害が無ければ基本的に不干渉の大和帝国は怒るまい。


 そう思って計画を立て、実行に移したのだ。


 だが、現実は彼の想定通りにはいかず、ぷんぷんとお怒りになる総統閣下。


 彼女の率いる軍により、頼みの綱のエルフはやられ……。


 「フレート攻略軍が丸々降伏か……我が軍ながら酷い」


 そのエルフを消し去った総統閣下に怯えたルーナ帝国フレート攻略軍10万があっさり降伏。


 いや、それどころか……。


「いやー、ユリエスっていう悪い独裁者の命令で無理やり戦わされていただけなんすよ。大和のエリュテイア総統が立ち向かうなら俺たちも独裁者に天誅を食らわせますよ!」


 みたいな感じでノリノリで裏切り。


 裏切りはルーナのお家芸で、ユリエスでも完璧に使いこなしている自信があった。


 だが、これは全く予測できなかった。何と言う変わり身の速さだろうか。流石のユリエスでも、ここまで躊躇なく完璧に素早く味方が裏切ってくるとは考えなかったのだ。


 これで、ルーナ戦線は一気にユリエス側が不利に陥った。


 まあ、軍の大半が寝返って敵対したのだから当たり前である。




 10万の軍が寝返り、ユリエスに残ったのは本土防衛のために残しておいた5万だけ。


その5万も「あれ、俺たち今のうちに裏切った方がよくね?」とか「そんなことよりパスタ食べたい」みたいな感じで、いつ裏切るかわからない。


 もう戦う前から勝負がついて。


「あー、今から謝ったら命だけでも助けてもらえないかな? まあ、だめか。つーか、エリュテイア総統が許しても自国民が許してくれないわ」


 と、ユリエスが皇帝とか地位とか投げ捨てて自暴自棄になるくらい酷い状況だった。


 ちなみにルーナでは、へまをした独裁者を逆さ吊りにして、石を投げて処刑する風習がある。


 ルーナで最も有名な王、ドスケベ王の異名を持つ「ムッツリーニ」は、ドルチェリと共に周辺国と戦争し敗戦。


 戦勝国は、ムッツリーニの命だけは許したそうだが、国民はそれを許さず処刑されたという。


 このままルーナに残っていては、きっと、ユリエスも同じ目にあうだろう。


「……なんとか逃げられないものか。そうだな、カルシカ島なんかどうだろうか? あの田舎なら大和も追ってくるまい」


 命が助かるなら皇帝の椅子なんてものは安い。権力なんて、投げ捨ててでも生き残る。


 絶体絶命の中、ユリエスはなんとか、生き残る道を探そうとしていた。




☆☆☆☆☆




 大和歴306年1月20日。


 ついに報復兵器の準備が整い、対ルーナ作戦――『アヴァランシュ作戦』が発動しました。


 この作戦は、いたって単純。空爆と砲撃により敵首都『ルーナ』を撃滅。


 敵の指揮系統を粉々に粉砕した後で、北のフレートからアルバトロス解放軍の主力軍を南下、一気にルーナを制圧する作戦ですね。


 ボクの軍は空爆だけすればオッケー。


 お金のかかる地上戦は同盟国に任せてしまおうというお財布に優しい計画です。……まあ、地上戦向けの報復兵器二号『チーハー戦車』も一応用意してますけどね。




 ちなみに、半獣人軍は祖国に帰しました。


 エルフも撃退できましたし、ルーナ軍もなぜか大勢寝返ってきましたし。


 戦局が改善されたので、彼らの力が必要なくなりましたからね。それに、ただでさえ人口の少ない半獣人に、戦場でバタバタ倒れられても困りますし……。


 先の『プディング高地の戦い』での被害の半数くらいは、半獣人軍なんですよね。5000人くらいでしょうか?


 次も同じような損害を受ければ、人口が100万人くらいしかいないエリュサレム半獣人国の国力では立て直せないかもしれません。


 そうなると、せっかくの肉壁……じゃなかった、同盟国が無くなってしまうので困ってしまいます。なので、彼らには国力回復に勤しんでもらいましょう。


 ただ、アルバトロス救援に兵を送ったもう一つの国、バルカの方は国王バアル・バルカの強い意向で戦場に残るそうです。


 まだお嫁さんを助けられてないですからね。

 

 ……まあ、ディアナ女王を始めとしたアルバトロスの王族の皆様の生存ははっきりしていないので『救出』ではなくて『かたき討ち』になるかもしれませんが。




 ……して。


 アヴァランシュ作戦において重要になるのは爆撃のための拠点を確保することです。


 ルーナ半島は細長く、さらに敵首都ルーナはその中心あたりにあるので国境からそれなりに距離があるんですよね。

 直線距離だと、500kmくらいでしょうか? 


 現在、ボクの国が保有する爆撃機『新山』の航続距離は800km、行動半径にすれば400kmもないわけですから、届かないわけです。


 ルーナに攻め込めば、飛行場の設置によさそうな場所も見つけられるかもしれませんが……これ以上の大規模地上戦はしたくないので却下です。


 てか、できればアルバトロスに上陸したくないです。インフラが酷いので。






 そう言うわけで、目を付けたのが『カルシカ島』。


 敵首都ルーナから、西に300kmくらい進んだ洋上にある直径10kmくらいの小さな島で、飛行場を作れるだけの平地が存在するワインと漁業が盛んな島ですね。


 所属している国は『カルシカ大公国』。


 このカルシカ島一つを国土に持つ、小さな田舎の国です。


 すでに、この国の統治者カルシカ大公とはお話が終わっていて、基地を作る許可が下りています。


 ここに基地を作って爆撃。

 

 ボクは安全で、お風呂とふかふかのベッドがある船の上から指揮を執るわけです。


 ふふん、我ながら良い計画です。




 そう言うわけで、上陸戦が行われるわけもなく……。


 基地建設用の資材を積み込んだ輸送船と、その護衛部隊のみでカルシカ島に向かっているわけです。


 ちなみに、その護衛部隊は、ボクの乗る新型総統専用艦『秋津洲』と、阿賀野型防空巡洋艦『阿賀野』、『能代』、駆逐艦4隻です。


 数は多くないですが、秋津洲は帝国で最強の戦艦ですから対艦戦闘では不安なし。


 対空戦闘に関しても、阿賀野型巡洋艦はアメリカ軍のアトランタ級防空巡洋艦を基に新開発された大型の軽巡洋艦で、まさにハリネズミみたいな船です。


 万が一、野生のワイバーンとかが襲ってきても自慢の12,7センチ両用砲で叩き落としてくれる……と思います。




 して。


 途中、ダークエルフの海賊を38,1センチ砲で吹っ飛ばしたりしながらの順調な航海。そうして、カルシカ島の近くまでやってきたボクたち。


 なにも邪魔されることなく、そのままカルシカ島に上陸。


 基地の設置に移ります。


 大量のブルドーザーをもってきているので、基地の建設にはそれほど時間はかからないかと……。


 これが終われば、航空隊を輸送してきて、V3砲をもってきて砲撃開始すれば完璧です。


 ……えっ、チーハー戦車隊?


  うん、あれですか。 


  はて、どうしましょうか? 一応、敵首都近郊に強襲上陸させときましょうか?

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― 新着の感想 ―
[一言] >えっ、チーハー戦車隊? >はて、どうしましょうか? 一応、敵首都近郊に強襲上陸させときましょうか?  チハたんの出番がぁΣ(・ω・ノ)ノ
[一言] 周辺国への侵攻は連合内の内紛だからオッケー、って、エルフ軍に加担して領土を譲り渡しているし、兵器を鹵獲させて技術流出させているし、逆鱗に触れないわけがないんだよなあ…。
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