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第四十七話 総統閣下とお出迎え

 大和歴305年2月14日。


 今日はバレンタインデー。帝国にバレンタインなんてものはありませんけど……一応、アヤメさんにチョコを作ってプレゼントしました。


 お祭りごとは楽しんだほうが、いいかなぁなんて。


 実際、チョコを作っている間はなんだか楽しくて、ついつい張り切ってハート形にしてみたり……。

 何をやっているんだって話です。


 冷静になって考えてみれば、ボクは貰う立場なんですけどね。

 

 中身は男の子ですし。


 ねえ、アヤメさん。その辺分かっていますか? 


 ホワイトデー、楽しみにしてますからね?






 ……っと。


 そんなバレンタインなんてものはどうでもいいんですよ。


 ここは帝国最大の貿易港――帝都港……の洋上ですね。


 総統専用艦『富嶽』に乗って、ド級戦艦『富士』率いる第一艦隊をお供に、各国の首脳をお出迎えです。


 そう、今日から帝都で『人間国家議会』と呼ばれる会議が始まるんですよ。


 まあ、大和帝国が、最近できたお友達を集めてお話し合いをするだけです。うん。


 で。


「えっと、あれがロンデリア王国からの船ですね。一等戦列艦『クイーン・エリザベート』以下4隻」


 ボクの乗る富嶽の横を挨拶のために通り過ぎていく艦艇。


 一等戦列艦ですね。大砲が100門くらい載せてある2000トンから3000トンくらいの大型艦です。


 甲板では上品そうなお婆さんが、ボクに手を振ってくれています。手を振り返しておきましょう。


 ロンデリアと言うことは……。


「アルバトロス連合王国加盟国ですね。あっちは?」


「あれは、38門級フリゲート『ムスケル』以下2隻ですから、バルカ王国の船ですね」


 ……ああ、あのマッチョの国ですか。

 

 確かに、甲板上で入港作業をしている人たちはみんなマッチョですね。あんな筋肉だらけで、暑苦しくないんでしょうか?




 って、いろいろ船を見ていて思ったんですけど。


「いろいろ来ていますけど全部似ていますね、見た目」


「建造したのは全部大和帝国ですからね。基本設計は似たり寄ったりです」


 ペラペラと資料をめくるアヤメさんに解説してもらいながら、参加国の艦艇を眺めると、なんだか似ているなー。なんて。


 装飾とか、そう言うので差別化を図っているみたいですけど船体構造は全部似たり寄ったり。


 まあ、全部メイドイン大和なら仕方ないですね。


 しかし、帆船とはいえこれだけ揃うと立派な観艦式ですね。戦列艦やらフリゲートやらが次々に入港してきて、その姿を堂々と見せびらかしています。


 一国あたり2隻から4隻。合計で20隻くらいでしょうか?


「……まだ転移してきてからそれほど立っていないのに、よくこれだけたくさんの船を作れましたね」


「簡単ですよ。船体構造は安価な商船構造ですし、複雑な機関もない帆走船ですし。武装も、陸軍の工廠が暇だったのでちゃちゃっと……」


 ふーん。


 あっ、あっちの船のやたら豪華な服を着たお姉さんが手を振って来ていますね。手を振り返してあげましょう。


「キャーッ! 見てくださいまし、あの子可愛いらしいわっ! ペットにしたいですわ!」


 ぺっ、ペットにしたい? 変な言葉が聞こえてきたんですけど……。


 ちょっと距離があるから、聞き間違えたのかも? なんでしょう。あの、ロココなくるくるヘアーの女の人は危ない系なのかも?


「……あれはフレート王国のシャール女王ですね」


 へ、へえ。


 って、アヤメさん目が怖いですよ。小さい声で「私のエリュさんをペットに? 始末するべきでしょうか」とか、呟かないでください。


 ……もう、嫉妬深いんだから。仕方のない子です。


「あらっ、あのメイドも可愛いわ! わたくし、メイドも好みなの! 食べちゃいたいわ!」


 あのメイド……?


 もしかしてそれは……ボクのアヤメさんのことですか? ボクのアヤメさんを狙っている? これは始末するべきでしょうか?


「エリュさん、怖い顔してますけど……大丈夫ですか?」


「うん、大丈夫だよ。アヤメさん」


 顔、覚えましたよ。そこの人。シャールでしたっけ? 名前もばっちりです。


 アヤメさんに手を出したら――生かしては帰しません。




 こほんっ。


 ……と、その次は。


 また戦列艦ですね。一等戦列艦よりかはちょっと小さい二等戦列艦と言ったところでしょうか?

数は4隻。


 先頭を進む旗艦には、背の高いゴリラみたいな女の人が乗っています。


 何かつぶやいていますが……ここからでは遠くてよく聞こえません。


「何かいい男はいないものかねぇ、と言っていますよ?」


「聞こえるんですか?」


「読唇術です。メイドのたしなみです」


 メイドのたしなみ……たぶん違うような。


「それで、えっと……」


「黒エルフ皇国と国境を接する軍事国家ルシーヤ王国のディアナ女王です。クーデターで成り上がったバリバリの武闘派だとか」


「顔を見れば分かります」


 怖いですもん。どこからどうみても。


 そして……。


「エリュさん、あれが最後の船です。ルーナ王国の一等戦列艦『ルーナ』以下4隻。国王はユリエスという名前だとか」


「……あの冴えないおっさんですか?」


「そうです、あの無口そうな冴えないおっさんです」


 取りを飾るのはルーナ王国の船ですね。


 立派な一等戦列艦を4隻。編成としては、ロンデリア王国の編成と同等ですね。今回やって来た艦隊の中では最も立派な部類に入るのではないでしょうか?


 甲板上に特設されたっぽい金の玉座に座って神経質そうにおっさんがこっちを見ています。


「ルーナ王国は、我が国から数々の兵器を輸入しているお得意様です。アルバトロス連合王国の中ではロンデリア王国に続く第二位の経済力を持つとか。噂によれば……」


「噂によれば?」


「アルバトロス連合王国の覇権を狙っているとか。皇帝を目指しているなんて話もちらほら」


 ……皇帝。


 まあ、ボクの大和帝国に害をなさないのであれば勝手にやってくださいって感じですけど。

 勝手に争って兵器を購入してくれるのならば、それほど損はないですし。


 現に、アルバトロス内で最大の海軍を持つロンデリア王国と競って建艦競争してくれていますし、ボクたちからは美味しい貿易相手なのでは?




「ん、これで全員揃いましたか」


「はい、これで全員揃いましたね。……とはいえ、議会は明日から。今日は『百合の間』で舞踏会を開く予定です。私たちも向かいましょう」


 大和帝国、バルカ王国、アルバトロス連合王国加盟各国、セレスティアル王国。


 さらに、モルロ帝国に国を滅ぼされた人々も、生き残っている人々を集め臨時政府を作り参加。


 ……悪くないですね。


 まさに人間の団結を象徴するような議会です。少し気に入らない点があるとすれば、大和帝国の傀儡半獣人国家『エリュサレム半獣人国』を参加させられなかったことですね。


 今回の議会はあくまで、人間国家間の議会。人間という同族意識を利用した会議になるのです。


 そのためには『半獣人』という異物は邪魔。スムーズな進行を阻害する恐れがあります。


 ……大和傘下の国なので、数稼ぎに参加させたかったので残念です。




「それで、エリュさん」


「はい、どうかしましたか、アヤメさん?」


「夜に開かれる舞踏会の服装はどうします? 一応、軍服で参加となっていますが……今ならドレスもありですよ?」


 んー。


 それってアヤメさんがただドレスを着せてみたいだけですよね? 個人的には軍服の方が着慣れているので……。


「軍服でお願いします」


「はい、わかりました。では、ドレスの手配をしておきますね」


 にっこり答えるアヤメさん。まるでボクの話を聞いていませんね。


 まあ……。


「……どうせ、そうなると思っていましたよ」


「安心してください。ちゃんと、ミニスカ絶対領域仕様にしています」


 ……わかりました。


 その代わり、アヤメさんも一緒にドレスを着て舞踏会に参加してくださいね? 一人だと恥ずかしいので。

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